査察・税務調査

税務調査で銀行口座はどこまで見られる?個人の口座・家族の口座は?

「税務調査の連絡が来た。事業用の口座の通帳は用意したけれど、個人の口座や家族の口座まで見られるの?」。税務調査を控えた個人事業主やひとり会社の社長から、よくいただくご質問です。

結論からいうと、事業と関係がありそうなら、個人名義や家族名義の口座も確認の対象になります。また、税務署は金融機関に直接照会することもできます。「見せなければ分からない」という前提で考えるのは危険です。

この記事では、国税通則法と国税庁の「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」をもとに、税務調査で銀行口座がどこまで見られるのかと、調査前に整えておきたいことを整理します。

この記事の結論
  • 税務調査では、事業用の口座はもちろん、事業と関係がありそうなら個人名義の口座の通帳も提示を求められる
  • 税務署は、調査に必要があれば金融機関に直接照会できる。口座はマイナンバーで検索できる形で管理されている
  • 正当な理由なく提示・提出を拒むと、罰則の対象になり得る
  • 見られる期間は、原則5年、偽りその他不正の行為があれば7年
  • 日ごろから事業用と個人用の口座を分け、入金の中身を説明できるようにしておくのがいちばんの備え

税務調査で口座を確認できる根拠

税務調査は、税務署の職員が質問検査権にもとづいて行います。所得税・法人税・消費税の調査では、調査について必要があるときに、納税者に質問し、帳簿書類その他の物件を検査し、その提示や提出を求めることができます(国税通則法第74条の2)。

質問検査の相手は、納税者本人だけではありません。所得税の調査では、納税者に金銭などを支払う義務があったと認められる者なども対象になります(同条第1項第1号ハ)。法人税の調査でも、法人に金銭の支払いをする義務があると認められる者などが対象です(同項第2号ロ)。取引先などへのこうした調査は、いわゆる反面調査と呼ばれます。

確認の方法相手内容
本人への質問検査納税者本人通帳、入出金明細、ネットバンキングの記録などの提示・提出
反面調査取引先など本人以外取引の内容や支払いの記録の確認
金融機関等への照会銀行など預貯金等の情報の照会(国税庁はオンライン化を推進)
法定調書など支払者・金融機関など支払調書、国外送金等調書などで税務署に届く情報

個人の口座・家族の口座も見られるのか

個人名義の口座

「会社の調査なのだから、社長個人の通帳は関係ない」と思われがちですが、そうとは限りません。国税庁のFAQは、法人税の調査で、代表者名義の個人預金について事業との関連が疑われる場合に、その通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるとしています(問7)。

個人事業主の場合は、事業と生活の財布がもともと同じ人のものなので、生活用の口座に売上が入っていないか、生活用の口座から事業の経費を払っていないか、といった点が確認されます。

家族名義の口座

家族名義の口座も、事業の売上が入金されている、事業の資金が移されているなど、事業との関連がうかがえる場合には、確認の対象になり得ます。取引先への支払いを家族の口座で受け取っていた、というようなケースは、調査で特に詳しく見られるところです。

断ることはできるのか

帳簿書類などの提示・提出の求めに、正当な理由なく応じない場合や、偽りの記載をした帳簿書類を提示・提出した場合には、罰則があります(国税通則法第128条)。国税庁のFAQは、正当な理由の例として、災害で帳簿書類が滅失・毀損したため直ちに提示・提出できない場合を挙げています(問6)。

もちろん、調査担当者は必要な理由を説明し、理解を得るよう努めることとされています(FAQ問7)。なぜその口座を見る必要があるのか分からないときは、遠慮なく理由を尋ねてかまいません。調査での受け答えの基本は、税務調査で言ってよいこと・言ってはいけないことをご覧ください。

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税務署は銀行に直接照会できる

「通帳を出さなければ分からない」とは考えないでください。税務署は、調査に必要があるとき、金融機関に対して預貯金の情報を照会することができます。

国税庁は「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-」で、税務調査や滞納整理に際して金融機関等に行う預貯金等情報の照会について、オンライン照会の対象となる金融機関等を拡大すべく利用勧奨に取り組む、としています。照会の手間は以前より小さくなっていると考えたほうがよいでしょう。

口座はマイナンバーで検索できる

銀行などの金融機関は、預貯金者の氏名、住所、預貯金の内容などの情報を、その預貯金者のマイナンバー(法人は法人番号)で検索できる状態で管理しなければならないとされています(国税通則法第74条の13の2)。どの銀行に口座があるかを、名寄せしやすい仕組みが整えられているということです。

本人に知らせずに照会されることも

取引先などへの反面調査について、国税庁のFAQは、事前通知に関する法令上の規定はなく、運用上、原則としてその対象者(取引先など)へあらかじめ連絡するとしています(問23)。調査を受ける本人に知らせる仕組みではないため、自分の知らないところで取引先や金融機関に確認が行われていることもあり得ます。

海外との送金や海外の口座

国外への送金や国外からの送金で100万円を超えるものは、送金を扱った金融機関が、送金者・受取人の氏名や金額などを記載した国外送金等調書を税務署に提出します。また、外国の税務当局との情報交換により、日本の居住者が持つ海外口座の情報も国税当局に提供されています。海外の口座だから分からない、ということはありません。

何年前まで見られるのか

税務署が税額を直せる期間(更正・決定の期間制限)は、次のとおりです。

場合期間根拠
原則法定申告期限から5年国税通則法第70条第1項
偽りその他不正の行為で税額を免れた場合など法定申告期限から7年同条第5項

ただし、調査の対象になった年分の内容を確かめるのに必要なら、それより前の帳簿書類の提示を求められることもあります。FAQは、たとえば減価償却費が正しいかを確かめるために、資産を取得した年の帳簿を確認する例を挙げ、これはあくまで対象年分の調査だとしています(問9)。調査当日の流れは、税務調査は初日から何をする?で解説しています。

口座で見られやすいポイントと、調査前に整えておくこと

税務調査で口座の動きを確認するときは、主に次のような点が見られます。

見られやすい動き確認される理由
帳簿に載っていない入金売上の計上漏れがないか
現金での大きな引き出し・預け入れ現金売上の除外や、私的な支出がないか
事業用口座から個人口座・家族口座への振替生活費や家族への支払いが経費になっていないか
個人口座から事業の経費の支払い経費の二重計上や、私的な支出の混入がないか
年末・期末前後の大きな動き売上や経費の期ずれがないか
ひとり会社の社長への資金移動役員貸付金・役員報酬の扱いが正しいか

調査前に整えておくこと

ひとり会社で特に見られる点はひとり会社の税務調査、個人事業主の場合は個人事業主の税務調査:よく見られるポイントをご覧ください。ネット販売やフリマアプリの売上が個人の口座に入っている方は、ネット販売・フリマの売上と税務調査も参考にしてください。

なお、調査で誤りが見つかった場合の加算税などは税務調査で最悪どうなる?にまとめています。脱税が疑われる場合に国税局査察部が行う強制調査(査察)は、通常の税務調査とは別の手続です。違いは査察(マルサ)と税務調査の違いをご覧ください。

まとめ

  • 税務調査では、事業と関係がありそうなら個人名義・家族名義の口座も確認の対象になる
  • 税務署は、調査に必要があれば金融機関や取引先に直接確認できる。口座はマイナンバーで検索できる形で管理されている
  • 正当な理由なく提示・提出を拒むと罰則の対象になり得る。必要な理由が分からなければ、担当者に尋ねてよい
  • 見られる期間は原則5年、偽りその他不正の行為があれば7年
  • 日ごろから口座を分け、帳簿と通帳を突き合わせておくことが、いちばんの備えになる

口座の動きと帳簿が合っていれば、税務調査で口座を見られても慌てる必要はありません。クレフティの「オンライン記帳・申告サポート」では、月額5,000円程度から(取引量や申告の内容で変わります)、AIを活用した記帳から決算・申告までをオンラインでお引き受けしています。通帳と帳簿の突き合わせに不安がある方も、チャットでいつでもご質問いただけます。

よくある質問

事業用の口座しか見せなくてもいいですか?
事業に関係する取引が個人の口座に混ざっている可能性があれば、個人口座の通帳の提示を求められることがあります。国税庁のFAQも、法人の調査で代表者個人の預金に事業との関連が疑われる場合、その通帳の提示・提出を求めることは質問検査の範囲に含まれるとしています。正当な理由なく拒むと罰則の対象になり得ます。
税務署は、自分の知らないうちに銀行に問い合わせることがありますか?
あります。税務署は、調査に必要があるときは、取引先や金融機関など本人以外の相手にも質問や資料の提出を求めることができます。国税庁は、税務調査や滞納整理に際して金融機関等に行う預貯金等の照会のオンライン化を進めていると公表しています。
何年前までの口座の動きを見られますか?
税務署が税額を直せる期間は、原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。ただし、対象年分の内容を確かめるために必要なら、それより前の帳簿や記録の提示を求められることもあります。

※本記事は2026年11月7日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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