個人事業主の税務調査では、何が見られるのでしょうか。国税庁の「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、所得税の実地調査は4万7千件行われました。決して珍しいことではありませんが、見られるポイントはある程度決まっています。
結論から言うと、個人事業主の税務調査でよく確認されるのは「売上が漏れていないか」「私的な支出が経費に混ざっていないか」の2つです。具体的には、現金売上や個人口座への入金、年末の売上、家事按分の根拠、家族への給与の実態などです。この記事では、ポイントごとに何を見られ、どう準備すればよいかを解説します。法人の場合はひとり会社の税務調査をご覧ください。
- いちばん確認されるのは売上の計上漏れ:現金売上、個人口座への入金、プラットフォームの売上、年末の売上の計上時期
- 経費では、家事按分の根拠、私的な飲食・旅行・車の混入、家族への給与の実態
- 事業とプライベートでお金が混ざっている人ほど、通帳の入出金を一つずつ確認される
- 消費税の課税事業者は、帳簿と請求書等(インボイス)の保存も確認される
- 準備の基本は、事業用の口座・カードを分ける、根拠の記録を残す、帳簿を毎月つける
よく見られるポイントの一覧
| 分野 | よく確認されること | 準備しておくもの |
|---|---|---|
| 売上 | 現金売上、個人口座への入金、プラットフォームの売上、年末の売上 | 請求書、売上の入金口座の通帳、プラットフォームの売上明細 |
| 家事按分 | 自宅家賃・光熱費・通信費・車の按分の割合と根拠 | 間取り図、使用時間のメモ、走行の記録 |
| 私的な支出 | 飲食費、旅費、衣服、家族の支出の混入 | 相手・目的のメモ、カレンダー、出張の記録 |
| 家族への給与 | 実際に働いているか、金額が仕事に見合うか | 届出書、勤務の記録、業務の内容、振込の記録 |
| 固定資産 | 車・パソコンなどの減価償却、取得価額 | 購入時の契約書、請求書 |
| 消費税 | 帳簿と請求書等の保存、税率の区分 | 帳簿、インボイス、課税区分の分かる記録 |
売上:いちばん確認されるところ
入金の経路をすべて洗い出す
税務調査では、申告した売上が、実際の入金と合っているかが確認されます。入金の経路が複数ある人ほど、漏れが生まれやすくなります。
- 現金売上:レジの記録、日々の売上のメモと、帳簿の売上が合っているか
- 個人口座への入金:事業用と別の口座に入った売上がないか
- プラットフォーム:ネット販売、スキルシェア、配信の売上が、手数料を引く前の金額で計上されているか
- キャッシュレス決済:決済サービスの売上明細と、入金額との差(手数料)
通帳の入金は一つずつ確認されることがあります。家族からの送金、借入れ、自分の別口座からの移動など、売上でない入金を説明できるようにしておくことが大切です。通帳の見られ方は通帳の動きと税務調査で詳しく解説しています。
年末の売上の計上時期
12月に仕事が終わり、1月に入金された売上を、入金した年の売上にしていないか。これは典型的な誤りです。個人事業主の売上は、原則として、入金の日ではなく、仕事を終えた(商品を引き渡した)日の年に計上します。12月分の請求書と、翌年1月の入金を照らし合わせて確認されることがあります。
経費:私的な支出が混ざっていないか
家事按分
自宅を仕事場にしている場合の家賃・光熱費・通信費、仕事とプライベートの両方で使う車などは、事業に使っている割合だけが経費になります。調査では、割合の根拠が聞かれます。仕事部屋の広さ、仕事をしている時間、走行距離など、数字で説明できる根拠を残しておきましょう。按分の考え方は自宅の電気代・水道代・ネット代・スマホ代の按分の仕方や個人事業主が車を買ったらで解説しています。
飲食・旅行・衣服
飲食費や旅費は、事業との関係を説明できるかが問われます。誰と、何のために使ったのかを記録しておかないと、私的な支出とみられるおそれがあります。家族との食事、観光が中心の旅行、ふだん着の購入などは、事業との関係を説明しにくい典型です。個人事業主の交際費の考え方は個人事業主の交際費に上限はある?をご覧ください。
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オンライン記帳・申告サポートを見る家族への給与:実態があるか
生計を一にする家族に払う給与は、原則として経費になりません。経費にできるのは、青色申告者が青色事業専従者給与に関する届出書を出し、その家族が年間6か月を超えて、もっぱらその事業に従事しているなどの要件を満たす場合です(所得税法第57条、所得税法施行令第165条)。金額も、届出書に書いた範囲内で、仕事の内容に照らして相当なものに限られます。白色申告の場合は、給与を経費にする代わりに、一定額の事業専従者控除を受ける仕組みです。
調査では、実際にどんな仕事を、どれくらいしているかが確認されます。ほかの仕事にフルタイムで勤めている、学生である、といった事情があれば、もっぱら従事しているとは言いにくくなります。勤務の記録や、担当している業務の内容を残しておきましょう。要件の詳細は家族に給与を払える?青色事業専従者給与の要件で解説しています。
消費税の課税事業者なら
消費税の課税事業者は、仕入税額控除を受けるために、帳簿と請求書等(インボイス)を保存しておく必要があります(消費税法第30条)。保存がないと、その分の仕入税額控除が認められず、消費税が増えます。所得税の調査と同時に、消費税も確認されることがほとんどです。
調査の前に整えておきたいこと
| チェック項目 | できているか |
|---|---|
| 事業用の口座とカードを、プライベートと分けている | □ |
| すべての売上の入金経路を把握し、帳簿と合わせている | □ |
| 12月の売上を、その年の売上に計上している | □ |
| 家事按分の割合に、数字で説明できる根拠がある | □ |
| 飲食費・旅費に、相手と目的の記録がある | □ |
| 家族への給与に、届出と勤務の記録がある | □ |
| 帳簿と領収書・請求書を、すぐ出せる状態で保存している | □ |
帳簿をつけていない場合、税務署は同業者の利益率などから所得を推計して課税することがあり、青色申告の承認を取り消されることもあります(所得税法第150条・第156条)。詳しくは帳簿がないとどうなる?をご覧ください。
調査の過程で、ある年の誤りと同じ誤りが前の年にもあると疑われると、対象の期間が広がることがあります(FAQ問32)。誤りは「その年だけ」で終わらないことがあるので、毎年同じ処理をしている項目ほど、早めに見直しておきましょう。誤りに気づいたら、調査の前の修正申告で加算税を抑えられることがあります(実地調査の前に修正申告したら?)。
まとめ
- 個人事業主の調査で一番確認されるのは売上の計上漏れ。現金、個人口座、プラットフォーム、年末の売上に注意
- 経費は、家事按分の根拠、私的な支出の混入、家族への給与の実態がポイント
- 消費税の課税事業者は、帳簿と請求書等の保存も確認される
- 口座・カードを分け、根拠の記録を残し、帳簿を毎月つけることが最大の備え
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