税務調査で一番不安なのは、「何を聞かれるのか」「うっかり余計なことを言ってしまわないか」ということかもしれません。
結論から言うと、税務調査での答え方の基本は「知っている事実をありのまま話す」「分からないことは確認してから答える」の2つです。うまく話そうとする必要はありません。この記事では、税務調査で言ってよいこと、避けるべきこと、絶対にしてはいけないことを具体的に解説します。
- 事実をありのまま話す。分からないことは「確認して後日回答します」と保留にしてよい
- 推測や記憶だけで答えない。「たぶん」「いつも」で答えると、あとで資料と食い違う
- うその答弁、帳簿の提示の拒否、偽りの帳簿の提出には罰則がある(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)
- 事実を隠したり偽ったりした部分には重加算税(35%・40%)。正直に誤りを認めることは、重加算税の理由にはならない
- 指摘に納得できなければ、根拠を示して説明を求めてよい。修正申告の勧奨に応じるかは任意
答え方の基本は「事実を、分かる範囲で」
税務調査の質問は、売上の入り方、経費の中身、お金の管理の仕方など、ふだんの仕事についてのものがほとんどです。知っていることを、知っている範囲で答えるのが基本です。
| 場面 | よい答え方 | 避けたい答え方 |
|---|---|---|
| 覚えていない取引を聞かれた | 「記録を確認して、後日お答えします」 | 「たぶん〇〇だったと思います」 |
| 経費の中身を聞かれた | 「〇〇さんとの打合せの食事です。記録はこれです」 | 「全部仕事です」 |
| 自分の担当外のことを聞かれた | 「経理は妻が担当しているので、確認します」 | 想像で答える |
| 誤りに気づいた | 「確認したところ、計上漏れでした」 | ごまかす、話をそらす |
| 意味の分からない質問をされた | 「どういう趣旨のご質問か、もう少し教えてください」 | 分からないまま答える |
特に気をつけたいのは、推測で答えることです。たとえば「この入金は何ですか」と聞かれて、思い出せないまま「たぶん家族からの借入です」と答え、あとで売上だと分かると、説明が食い違います。食い違いが重なると、意図的に隠していたのではないかと疑われる原因になります。
言ってよいこと:事実と、その根拠
次のようなことは、積極的に説明してかまいません。
- 事業の内容と、売上・経費の流れ:どんな仕事を、誰と、どうやってしているか
- 経費の事業との関係:誰と何のために使ったか。記録やメモ、カレンダーがあれば一緒に示す
- 家事按分の考え方:仕事に使っている部屋の広さ、時間、使い方など、割合の根拠
- 記録が足りない取引の事情:「この取引は領収書をもらえなかった。代わりにこの記録がある」
経費について「事業に必要だった」と主張するなら、根拠となる記録を示すことが説得力につながります。記録の残し方は食事の記録はGoogleカレンダーに残せばいい?やレシートをなくした・もらえなかったときはどうする?で解説しています。
避けたいこと:言い切り・推測・余計な弁明
違法ではありませんが、調査を長引かせたり、説明の信用を落としたりしやすい言い方があります。
- 「全部経費です」「私物は一切ありません」と言い切る:一つでも私的な支出が見つかると、ほかの説明まで疑われる
- 「いつもこうしています」と一般化する:個別の取引で違う処理が見つかると矛盾する
- 聞かれていないことを推測で付け加える:不正確な情報が増えるだけ
- 感情的になる、調査担当者を責める:言いたいことがあっても、根拠を示して冷静に伝える
絶対にしてはいけないこと
| してはいけないこと | 何が起きるか |
|---|---|
| うその答弁をする | 罰則の対象(国税通則法第128条) |
| 正当な理由なく帳簿書類の提示・提出を拒む | 罰則の対象。帳簿の不提示は加算税の加重の理由にもなる |
| 偽りの帳簿や書類を出す | 罰則の対象。事実の仮装として重加算税の対象にもなる |
| 書類を隠す、捨てる | 事実の隠ぺいとして重加算税(35%・40%)の対象になりうる |
| 取引先に口裏合わせを頼む | 反面調査で分かる。隠ぺいとみられるおそれ |
国税通則法第128条では、正当な理由なく質問に答えない、うその答弁をする、帳簿書類の検査を拒む、偽りの記載をした帳簿書類を提示・提出するといった行為に、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を定めています。国税庁は、罰則があることをもって強権的に権限を使うことは考えていないとしていますが(FAQ問3)、うそや隠ぺいは、調査をはるかに悪い結果に変えてしまいます。
帳簿の提示を断ってよい「正当な理由」は、たとえば災害で書類がなくなり、すぐに提示することが物理的に難しい場合などです(FAQ問6)。法人の調査で、社長個人の通帳に事業との関係が疑われる場合は、私物でも提示を求められることがあります(FAQ問7)。
また、帳簿を提示しない、または帳簿の売上の記載が大きく不足している場合は、過少申告加算税・無申告加算税が5%または10%加重されます(国税庁タックスアンサーNo.2024・No.2026)。
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オンライン記帳・申告サポートを見る間違いを認めることは、怖いことではない
「誤りを認めたら重加算税になるのでは」と心配する方がいますが、そうではありません。重加算税は、事実を隠したり偽ったりして申告していた場合にかかるものです(国税通則法第68条)。計算の誤り、計上の時期のずれ、経費の判断の誤りであれば、通常は過少申告加算税です。
むしろ、誤りをごまかそうとして話が二転三転するほうが、「隠ぺいだったのでは」と疑われる原因になります。誤りは誤りとして認め、なぜそうなったかを正直に説明することが、結果的に負担を小さくします。
納得できない指摘には、根拠を示して説明を求める
一方で、調査担当者の指摘をすべて受け入れる必要もありません。事業に必要な経費だと考えるなら、その根拠を示して説明しましょう。
調査の結果、誤りがあると判断されると、修正申告を勧められます。勧奨に応じるかどうかは任意で、応じなければ税務署が更正をします。応じなかったからといって、基本的に不利な扱いを受けることはありません。修正申告をすると不服申立てはできませんが、更正の請求はできます(FAQ問25・問26)。更正に納得できなければ、再調査の請求や審査請求で争うことができます。
判断に迷うときは、税理士に同席してもらうのが安心です。調査の場で納税者に代わって主張や説明ができるのは、原則として税理士などの税務代理人です(FAQ問33)。
まとめ
- 答え方の基本は、事実をありのまま、分かる範囲で。分からないことは確認して後日回答
- 言い切り・推測・一般化は、説明の信用を落とすので避ける
- うその答弁、帳簿の提示の拒否、偽りの帳簿、書類の隠ぺいは絶対にしない
- 誤りを正直に認めることは、重加算税の理由にはならない
- 納得できない指摘には、根拠を示して説明を求めてよい
調査当日の流れは税務調査は初日から何をする?、帳簿や領収書がない場合は税務調査の連絡が来たけれど、帳簿も領収書もないでも解説しています。
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