経費のレシートをなくしてしまった、そもそも領収書をもらえなかった。個人事業主やひとり会社では、よくあることです。「レシートがないなら経費にできない」とあきらめる方もいますが、レシートは支払いを証明する手段のひとつにすぎません。
この記事では、レシートをなくしたとき・もらえなかったときに、まず何をすればよいか、所得税・法人税と消費税でどう違うかを整理します。
- 所得税・法人税では、支払いの事実と事業との関係を説明できれば、レシートがなくても経費になり得る
- まず再発行の依頼、次にカード明細・振込記録・購入履歴など第三者の記録を集め、出金伝票で補う
- 消費税の本則課税では原則インボイスが必要。ただし税込1万円未満の少額特例(令和11年9月30日まで)や、帳簿のみで控除できる取引がある
- 「何に使ったか言えない支出」は経費にしない
まずやること:3つのステップ
ステップ1 再発行・写しを頼む
請求書や領収書を発行してくれる取引先なら、再発行や写しの送付を頼むのが一番早い方法です。ネットショップやサブスクリプションのサービスなら、マイページから領収書を出し直せることも多くあります。
ただし、お店のレシートは事情が違います。国税庁のインボイスQ&A(問24-5)では、販売時に適格簡易請求書(レシート)を交付していれば、その時点で交付義務を果たしているため、後日の再交付を求められても、改めて交付する義務はないとされています。お店が応じてくれればありがたい、という位置づけです。
ステップ2 第三者の記録を集める
再発行してもらえないときは、自分以外の人や会社が作った記録で、支払いを裏付けます。
| 記録 | わかること | 補足 |
|---|---|---|
| クレジットカードの利用明細 | 日付・店名・金額 | 何を買ったかは書かれないことが多い |
| 銀行の振込記録・通帳 | 日付・相手・金額 | 振込先の名義で相手が特定できる |
| ネット通販の購入履歴・注文確認メール | 日付・商品・金額 | 商品ページの画面ではなく「購入履歴」を残す |
| 電子マネー・QR決済の履歴 | 日付・店名・金額 | アプリの利用履歴をダウンロードしておく |
| 交通系ICの利用履歴 | 日付・区間・金額 | 駅の券売機などで印字できる |
国税不服審判所の公表裁決(平成26年5月22日裁決)では、ネットショッピングサイトの購入履歴を出力した書類に購入日と購入金額が記載されていたものは、購入した事実を客観的に裏付けるとして、必要経費への算入が認められました。一方で、商品ページを印刷しただけで購入履歴の表示がないもの、金額を手書きしただけのものは、購入の事実を示すものとは認められていません。「自分が買った記録」かどうかが分かれ目です。
ステップ3 出金伝票やメモで補う
それでも足りない部分は、出金伝票(支払いの内容を自分で書いた記録)で補います。
- 支払った日付
- 支払先(店名・会社名・個人名)
- 金額
- 何のための支払いか(「〇〇社との打合せ 飲食」「撮影用の小道具」など)
- 関連する資料(カード明細、写真、やり取りのメッセージ、案内状など)
出金伝票は自分で作る書類なので、それだけでは証拠として弱いのが実情です。支払いの都度、具体的に書き、ステップ2の記録と組み合わせることで説明力が上がります。月末にまとめて「雑費 3万円」と書いただけでは、ほとんど意味がありません。
所得税・法人税と消費税の違い
レシートがない場合の扱いは、税金の種類によって違います。
| 税金 | 問われること | レシートがない場合 |
|---|---|---|
| 所得税(個人事業主) | 支払いの事実と、業務との直接の関係・必要性 | 他の資料で説明できれば必要経費になり得る。私用との区別は厳しく見られる |
| 法人税(会社) | 支払いの事実と、事業との関係 | 他の資料で説明できれば損金になり得る。使途を説明できない支出は損金にならない |
| 消費税(本則課税) | 帳簿と請求書等(インボイス)の保存 | 原則として仕入税額控除ができない。ただし下記の例外あり |
| 消費税(簡易課税・2割特例) | 売上の消費税をもとに計算 | 仕入れのインボイスの有無で納税額は変わらない |
消費税で「レシートなし」でも控除できる場合
国税庁タックスアンサーNo.6496によると、本則課税の事業者でも、次のような場合は一定の事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められます。
- 税込3万円未満の公共交通機関(電車・バスなど)の運賃
- 税込3万円未満の自動販売機・自動サービス機での購入
- 郵便ポストに差し出した郵便の切手代
- 従業員に支給する通常必要と認められる出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当
さらに、基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までに行う税込1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で控除できます(少額特例)。1万円未満かどうかは、商品1つごとではなく1回の取引の金額で判定します(インボイスQ&A問112)。
税込1万円以上の仕入れでインボイスをなくした場合は、原則として、再発行を受けられない限り仕入税額控除はできません。消費税の計算方法ごとの違いは、クレジットカードの明細と消費税で詳しく比べています。
領収書をもらえない支払いはどうするか
香典・ご祝儀、個人への謝礼、現地での手渡しの支払いなど、そもそも領収書が出ない支払いもあります。
- 香典・ご祝儀:会葬礼状や招待状を出金伝票と一緒に残す。金銭の贈与なので消費税の課税対象外
- 個人への謝礼・外注費:振込で払い、依頼内容がわかるメッセージや請求書を残す。報酬の種類によっては源泉徴収が必要なこともある
- 少額の現金払い:できるだけキャッシュレスにして、記録が自動で残るようにする
領収書をもらえる取引は、必ずもらうのが原則です。もらえるのにもらわなかった支出を出金伝票で処理すると、それだけで説明の負担が増えます。
やってはいけないこと
- レシートの金額を書き換える、白紙の領収書に自分で書き込む:事実と異なる書類を作ることは、税務調査で重加算税の対象になり得る
- 家族の買い物のレシートで穴埋めする:事業と関係のない支出は経費にならない
- 「なくしたから」と推測の金額で計上する:根拠のない数字は説明できない
なくしたレシートが多い年は、税務調査で記帳全体の信頼性を疑われるきっかけにもなります。帳簿が不十分な場合のリスクは帳簿がないとどうなる?推計課税と青色申告の取消し、レシートの保存ルールはレシートは必ず残さないといけない?をご覧ください。
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オンライン記帳・申告サポートを見るまとめ
- レシートをなくしても、所得税・法人税では支払いの事実と事業との関係を説明できれば経費になり得る
- 再発行の依頼、カード明細・購入履歴など第三者の記録、出金伝票の順で補う
- 消費税の本則課税は原則インボイスが必要。1万円未満の少額特例や帳簿のみで控除できる取引を確認する
- 事実と違う書類を作ることは絶対にしない
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