査察・税務調査

査察(マルサ)と税務調査の違いは?目的・権限・結果を比べる

「マルサ」という言葉は聞いたことがあっても、ふつうの税務調査との違いをはっきり説明できる人は多くないと思います。結論から言うと、査察と税務調査は、目的も、権限も、結果も別ものです。

税務調査は、申告が正しいかを確かめ、正しい税額にするための調査です。原則として事前に連絡があり、誤りが見つかれば修正申告をして、加算税や延滞税を納めて終わります。査察は、脱税という犯罪を調べて検察庁に告発するための調査で、裁判官の許可状にもとづく捜索・差押えができます。この記事では、両者の違いを表で比べ、普通の事業者がどちらを意識すべきかを解説します。

この記事の結論
  • 税務調査:正しい税額を確かめる任意の調査。原則として事前通知がある。結果は修正申告・更正と加算税
  • 査察:悪質な脱税の刑事責任を追及する調査。裁判官の許可状で臨検・捜索・差押えができ、事前の連絡はない。結果は告発・刑事裁判
  • 件数の差は大きい。査察の着手は年131件(令和7年度)、所得税と法人税の実地調査はそれぞれ年4万件・5万件超
  • 普通の事業者が向き合うのは、ほぼ税務調査。正しい対応を知っておけば、過度に恐れる必要はない

税務調査と査察を比べる

項目税務調査(任意調査)査察(強制調査)
目的申告内容を確認し、正しい税額にする脱税の刑事責任を追及する(一罰百戒)
担当税務署・国税局の調査担当者国税局の査察部(国税査察官)
根拠国税通則法第74条の2などの質問検査権国税通則法第11章(犯則事件の調査)
事前の連絡実地の調査は原則として事前通知ありなし
強制力納税者の協力が前提。ただし正当な理由のない拒否や虚偽答弁には罰則裁判官の許可状により臨検・捜索・差押えができる
結果是認、または修正申告・更正と加算税・延滞税検察庁への告発、起訴されれば刑事裁判
年間の件数所得税の実地調査4万7千件、法人税等5万4千件(令和6事務年度)着手131件、告発82件(令和7年度)

(件数の出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」「令和7年度 査察の概要」)

税務調査:正しい税額にするための調査

税務調査は、税務署や国税局の職員が、国税通則法の質問検査権にもとづいて、帳簿や書類を確認し、質問をする調査です。事業所や自宅に来る「実地の調査」では、原則として、調査を始める日時・場所、目的、税目、対象期間などが事前に通知されます(国税通則法第74条の9)。

国税庁は、税務調査は納税者の理解と協力を得て行うものとしています。帳簿の提示や提出を求められたときも、罰則があることをもって強権的に権限を使うことは考えていない、とFAQで説明しています。一方で、正当な理由なく質問に答えない、うその答弁をする、検査を拒む、偽りの帳簿を出すといった行為には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の罰則があります(同法第128条)。

調査の結果、誤りがなければ「更正決定等をすべきと認められない」旨の書面が届きます。誤りがあれば、内容の説明を受けたうえで修正申告をするか、税務署から更正を受けます。いずれの場合も、追加の本税に加えて加算税・延滞税がかかります。加算税の割合は税務調査で最悪どうなる?で解説しています。

査察:脱税に刑事責任を問う調査

査察は、もともと国税犯則取締法にもとづく手続きでしたが、平成29年度の税制改正で国税通則法に編入され、現在は同法の第11章「犯則事件の調査及び処分」に定められています。

国税査察官は、犯則事件を調べるために必要なときは、裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、身体・物件・住居などの捜索、証拠物の差押えができます(国税通則法第132条)。納税者の同意は必要なく、事前の連絡もありません。いわゆる「ガサ入れ」がこれにあたります。

調べた結果、犯則があると思われるときは、査察官は検察官に告発しなければならないとされています(同法第155条)。告発を受けた検察庁が起訴すれば刑事裁判です。所得税の場合、偽りその他不正の行為で税を免れた者には、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます(所得税法第238条)。

国税庁の「令和7年度 査察の概要」によると、令和7年度の一審判決80件はすべて有罪で、6人が実刑判決でした。手口や不正資金の使い道は国税庁の「査察の概要」から分かることで詳しく紹介しています。

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査察の対象になるのは、どんな事案か

査察の対象は、多額で悪質な脱税の疑いがある事案です。公表されている告発事案は、架空の外注費・仕入れの計上、売上の除外、不正加担者を使った工作、海外口座への資金の隠匿、消費税の不正還付などです。

「帳簿のつけ方を間違えた」「経費の判断を誤った」といった誤りは、査察ではなく、税務調査で修正される性質のものです。普通に記帳して申告している事業者が、査察を心配する必要はありません。

ただし、意図的に売上を隠したり、ありもしない経費を作ったりすれば話は別です。税務調査でも、事実を隠したり偽ったりした部分には重加算税(35%または40%)がかかり、さかのぼって更正できる期間も通常の5年から7年に延びます(国税通則法第68条・第70条)。

普通の事業者が知っておくべきこと

私たちが実際に向き合うのは、ほぼ税務調査です。税務調査は、正しい手順で対応すれば、怖いものではありません。

  1. 連絡が来たら、まず落ち着いて内容を確認する:電話で来ることが多い連絡への対応は税務署から電話があったら、事前通知を受けたあとの準備は税務調査と言われたら、まず何をすればいい?をご覧ください
  2. うそはつかない、書類は隠さない・捨てない:誤りがあっても、正直に説明すれば修正申告で終わります。隠したり偽ったりすると、重加算税の対象になります
  3. 日頃から記録を残す:売上と経費の根拠が説明できれば、調査は短く済みます

まとめ

  • 税務調査は正しい税額を確かめる任意の調査、査察は脱税の刑事責任を問う強制調査
  • 税務調査は原則として事前通知があり、結果は修正申告・更正と加算税。査察は許可状による捜索・差押えがあり、結果は告発・刑事裁判
  • 査察は年131件の着手(令和7年度)で、多額で悪質な脱税に限られる
  • 普通の事業者は、税務調査への正しい対応と、日頃の記録の整備を意識すれば十分

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よくある質問

税務調査の途中で、査察に切り替わることはありますか?
査察は国税局の査察部が、多額で悪質な脱税の疑いがある事案を選んで行うものです。手続きも根拠となる規定も税務調査とは別で、裁判官の許可状を得て着手します。ふつうの税務調査が、その場で査察に変わるわけではありません。ただし、調査で多額の不正が疑われる場合に、別途、査察の対象となる可能性は否定できません。
税務調査は断ることができますか?
税務調査は相手の同意を前提にした任意の調査ですが、正当な理由なく質問に答えない、うその答弁をする、帳簿の検査を拒むといった行為には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の罰則があります(国税通則法第128条)。日程の都合が悪い場合は、変更を協議してもらうことができます。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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