「QRコード決済で払ったけれど、領収書をもらわなかった」「アプリに履歴が残っているから大丈夫?」。スマホ決済を仕事の支払いに使う個人事業主やひとり会社の方から、よく聞かれる質問です。
結論からいうと、QRコード決済で払っても、事業に必要な支出なら経費になります。支払い方法で経費になるかどうかが変わるわけではありません。ただし、履歴だけでは「何を買ったのか」「事業のためなのか」が分からないことが多く、レシートや用途の記録とあわせて残すことが大切です。この記事では、QRコード決済を使うときの記録の残し方を、国税庁の資料をもとに整理します。
- 経費になるかどうかは、支払い方法ではなく事業に必要な支出かどうかで決まる
- アプリの履歴で分かるのは主に日時・支払先・金額。何を買ったかはレシートやメモで補う
- アプリから受け取る利用明細は電子取引にあたり、データでの保存が必要
- 消費税の本則課税では、原則として売り手のインボイスが必要。履歴だけでは足りない
- チャージは前払い。経費にするのは使ったとき
経費として説明するために必要なこと
個人事業主の必要経費は、収入を得るために直接かかった費用や、業務上の費用です。家事と業務の両方に関係する支出は、業務に直接必要だった部分を明らかに区分できる場合に、その部分だけが必要経費になります(タックスアンサーNo.2210)。
法人も、社長の私的な支出は会社の経費になりません。つまり、どの支払い方法でも、説明が必要なのは次の2つです。
- 支払いの事実:いつ、誰に、いくら払ったか
- 事業との関係:何のための支出か
QRコード決済の履歴は1に役立ちますが、2はほとんど示せません。
履歴で分かること、分からないこと
国税庁は、スマホアプリの利用明細には、通常、支払日時、支払先、支払金額などが記載されていると説明しています(電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】 令和8年7月版 問8。以下「一問一答」)。
| 項目 | アプリの履歴 | お店のレシート | 自分のメモ |
|---|---|---|---|
| 日時 | ○ | ○ | - |
| 支払先 | ○(表示が運営会社名などのこともある) | ○ | - |
| 金額 | ○ | ○ | - |
| 何を買ったか | ×(通常は表示されない) | ○ | - |
| 誰と、何のためか | × | × | ○ |
| インボイスの登録番号 | ×(通常は表示されない) | ○(登録事業者の場合) | - |
たとえば、履歴に「〇〇ドラッグ 3,300円」とあっても、仕事の備品か、家庭の日用品かは分かりません。飲食店の支払いなら、取引先との打合せなのか、家族との食事なのかも分かりません。スーパー、コンビニ、飲食店のように私用でも使うお店ほど、履歴だけでは説明しにくくなります。
考え方はクレジットカードと同じです。クレジットカードの明細だけで経費にできる?も参考にしてください。食事の記録は食事の記録はGoogleカレンダーに残せばいい?で扱っています。
履歴はデータで保存する
アプリの利用明細は電子取引
アプリ提供事業者から電子的に利用明細などを受け取ることは電子取引にあたり、取引データの保存が必要です(一問一答 問8)。保存は税法で定められた保存期間が終わるまで続けます(問5)。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 履歴をダウンロードする | 明細のPDFやCSVを取得できるサービスなら、月ごとに保存する |
| 画面を保存する | 取得機能がなければスクリーンショットで残す(下の注意を参照) |
| 会計ソフトに連携する | 取り込みと保存の範囲はソフトごとに違うので確認する |
国税庁は、Web上に表示される領収書のスクリーンショットによる保存や、従業員がアプリで立て替えたときの領収書データのスクリーンショットを認めています(問5、問36)。お店や金額が読み取れる状態で残しましょう。
ダウンロードしたデータは書き換えられるので、メールで受け取ったPDFと同じように、事務処理規程などの改ざん防止の措置が必要です(問5)。具体的な保存の手順はメールやPDFで受け取った請求書の保存で説明しています。基準期間の売上高が5,000万円以下で、税務調査でダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索機能の確保は不要です(問51)。
アプリの履歴をいつまで見られるかは、サービスによって違います。機種変更やアカウントの解約で見られなくなることも考えられるので、アプリの中に残っていることだけに頼らないのが安全です。
紙のレシートは紙のまま残す
QRコード決済でも、お店から紙のレシートをもらったら、それは紙の書類です。スマホで撮影して紙を捨てるには、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。要件を満たさない場合は、撮影データは記帳用の控えとして使い、紙も残します(レシートは必ず残さないといけない?)。
レシートをもらい忘れたときの対応は、レシートをなくした・もらえなかったときはどうする?をご覧ください。
消費税:履歴はインボイスの代わりになるか
消費税の計算方法によって、必要なものが変わります。
| 計算方法 | 必要なもの |
|---|---|
| 免税事業者 | 消費税のためのインボイスは不要 |
| 簡易課税・2割特例・3割特例 | インボイスの有無で納税額は変わらない。帳簿は必要 |
| 本則課税 | 帳簿と、適格請求書などの請求書等 |
本則課税で仕入税額控除を受けるには、電子取引の場合、登録番号や消費税額など適格請求書として必要な事項を満たすデータの保存が必要です(一問一答 問5、問8)。支払日時、支払先、金額が分かるだけの履歴では、原則として足りません。お店のレシート(適格簡易請求書)を残してください。
例外もあります(タックスアンサーNo.6496)。
- 少額特例:基準期間の課税売上高が1億円以下などの事業者は、令和11年9月30日までの税込1万円未満の課税仕入れについて、一定の事項を記載した帳簿の保存で控除できる
- 帳簿のみで控除できる取引:税込3万円未満の公共交通機関の運賃など
計算方法ごとの考え方はクレジットカードの明細と消費税をご覧ください。相手がインボイス登録をしているかの確認は、インボイスを受け取る側の注意点で説明しています。
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オンライン記帳・申告サポートを見るチャージと残高の処理
アプリの残高にチャージする方式では、チャージは前払いにあたります。チャージしただけでは何も買っていないので、原則として使ったときに経費にします。考え方はSuicaなど交通系ICのチャージと同じです。
| タイミング | 処理 |
|---|---|
| 事業用の資金でチャージした | 仮払金などに計上(経費にしない) |
| 備品の購入などに使った | 消耗品費などの経費に振り替える |
| 決算日に残高が残っている | 経費にせず、資産として残す |
チャージと支払いの両方を経費に取り込むと、二重計上になります。連携の間違いは口座連携・カード連携の記帳でよくある間違いにまとめています。
ポイントで支払った場合の扱いは、ポイントの種類や取得の経緯によって判断が分かれることがあります。金額が大きいときは、履歴を残したうえで税理士に確認しましょう。
個人事業主と法人の注意点
個人事業主:私用のアカウントと混ぜない
同じアプリで私用の買い物もしていると、後から事業の支払いを選び出すのが大変です。業務に必要な部分が区分できないと、経費として説明しにくくなります。事業用の支払い手段を分け、私用のお金から事業の支払いをしたときは、事業主借などで処理します(事業主貸・事業主借とは)。
法人:社長個人のアプリで払ったら立替精算
ひとり会社でも、社長個人のアプリで会社の経費を払ったなら、それは立替です。レシートと履歴をそろえて、会社から精算する記録を残します。立替や貸し借りの整理は役員借入金・役員貸付金をご覧ください。
個人同士の送金機能で外注先などに支払ったときは、お店の決済と違ってレシートが出ません。請求書や領収書を相手からもらうか、何の支払いかが分かる記録を残しましょう。
おすすめの残し方
| やること | 具体例 |
|---|---|
| 事業用の支払い手段を決める | 仕事の支払いに使うアカウントやカードを分ける |
| レシートをもらう | 少額でも受け取り、月ごとにまとめる |
| 用途をメモする | 会計ソフトの摘要に「〇〇社打合せ 2名」「撮影用の小物」などと書く |
| 履歴を毎月保存する | ダウンロードかスクリーンショットで、決めたフォルダへ |
| 月に1回、残高を確認する | 帳簿の残高とアプリの残高を照らし合わせる |
まとめ
- QRコード決済でも、事業に必要な支出なら経費になる
- 履歴は支払いの事実を示すが、何のための支出かは示せない
- アプリの利用明細は電子取引。データで保存し、アプリの中だけに頼らない
- 本則課税では、原則としてお店のインボイスが必要
- チャージは前払い。経費にするのは使ったとき
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