個人事業から会社に切り替える法人成りは、会社を作って終わりではありません。会社側では税務署・都道府県・市区町村・年金事務所への届出、個人側では廃業の届出と最後の確定申告があり、期限も提出先もばらばらです。
この記事では、国税庁・日本年金機構・東京都主税局の公表資料をもとに、法人成りの手続きを時系列のチェックリストにまとめます。法人成りするかどうかの判断は法人成りの目安は所得いくらから?、小さな事業の法人化のメリット・デメリットをご覧ください。
- 会社側は、法人設立届出書(設立登記の日以後2か月以内)、青色申告の承認申請書(3か月経過日と第1期末のいずれか早い日の前日まで)が柱
- 役員報酬を払うなら、給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内)と社会保険の新規適用届(5日以内)
- 都道府県・市区町村にも法人設立届が必要。期限は自治体ごと(東京都は事業開始から15日以内)
- 個人側は、廃業届(廃業した年分の確定申告期限まで)と、課税事業者なら消費税の事業廃止届出書(速やかに)
- インボイスは会社で登録し直す。個人の登録番号は引き継げない
法人成りの全体の流れ
手続きは、大きく4つの段階に分かれます。
| 段階 | やること | 目安の時期 |
|---|---|---|
| ① 準備 | 会社の形(株式会社・合同会社)、決算月、資本金、役員報酬の額を決める | 設立の1〜2か月前 |
| ② 設立 | 定款の作成、資本金の払込み、法務局で設立登記 | 登記の日が「設立の日」 |
| ③ 会社の届出 | 税務署・都道府県・市区町村・年金事務所への届出、法人口座の開設 | 設立後すぐ〜2か月 |
| ④ 個人の整理 | 取引先・契約の切り替え、資産の引き継ぎ、廃業届、最後の確定申告 | 設立後〜翌年3月 |
決算月は、個人事業の最後の確定申告(翌年3月)と会社の最初の決算が重ならないように決めると、負担が分散します。設立費用の目安は会社設立にかかる費用をご覧ください。
会社側:税務署に出す書類
国税庁のタックスアンサー「No.5100 新設法人の届出書類」などをもとにまとめると、次のとおりです。
| 書類 | 提出期限 | 出さないと |
|---|---|---|
| 法人設立届出書(定款の写しを添付) | 設立の日(設立登記の日)以後2か月以内 | 必須の届出 |
| 青色申告の承認申請書 | 設立の日以後3か月を経過した日と、第1期の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで | 第1期が白色申告になる |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設の日から1か月以内 | 役員報酬・給与を払う場合に必要 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 期限なし(原則、提出した月の翌月末に承認があったものとされる) | 毎月納付になる |
| 棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書 | 第1期の確定申告書の提出期限まで | 法定の方法になる |
| 消費税関係の届出書(課税事業者の選択、簡易課税の選択など) | 届出ごとに異なる | 選択できない場合がある |
青色申告の承認申請は、とくに注意が必要です。たとえば、決算月を設立から2か月後にすると、「第1期の終了の日」のほうが早く来るので、期限も早まります。設立登記が済んだら、法人設立届出書と同じ日に出してしまうのが確実です。
源泉所得税の納期の特例は、給与の支給人員が常時10人未満の会社が使えます。年2回の納付にまとめられるので、ひとり会社では出しておくと事務が楽になります(源泉所得税の納期の特例)。
役員報酬の額は、早めに決める
役員報酬は、原則として毎月同じ額(定期同額給与)でないと損金になりません。設立時は、事業年度の開始から3か月以内に額を決めるのが基本です。決め方はひとり会社の役員報酬はどう決める?で解説しています。
会社側:都道府県・市区町村・年金事務所
地方税の法人設立届
法人住民税・法人事業税のため、都道府県と市区町村にも法人設立届を出します。期限は自治体ごとに条例で決まっていて、たとえば東京都は「事業を開始した日から15日以内」に都税事務所へ提出します(東京都主税局)。
eLTAXやe-Taxを使えば、国税と地方税の設立届をまとめて電子で出すこともできます。
社会保険の新規適用届
会社は、社長ひとりでも役員報酬を払うなら、健康保険・厚生年金保険の適用事業所になります。日本年金機構の「新規適用の手続き」では、新規適用届は事実発生から5日以内に、被保険者資格取得届と一緒に出すとされています。登記事項証明書の原本(提出日から90日以内に交付されたもの)などを添付します。
なお、無報酬の役員しかいない法人は、適用事業所の要件を満たさないため加入できないとされています。保険料の目安はひとり会社でも社会保険に入らないといけない?をご覧ください。会社の健康保険に入ったら、市区町村で国民健康保険をやめる手続きも忘れずに行います。
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スタートアップ・ベンチャー支援を見る個人側:廃業の届出と最後の申告
個人事業をやめるときの届出は、国税庁の「廃業する場合」とタックスアンサー「No.6603 個人事業者が事業を廃止した場合」にまとまっています。
| 書類 | 対象 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | すべての個人事業主 | 廃業した年分の所得税の確定申告期限まで |
| 事業廃止届出書(消費税) | 課税事業者・インボイス登録事業者 | 事由が生じた場合速やかに |
| 給与支払事務所等の廃止届出書 | 個人で人を雇っていた場合 | 廃止の日から1か月以内 |
| 都道府県の個人事業税の廃業届 | 個人事業税の対象だった場合 | 自治体ごとに決まっている |
| 所得税の確定申告(最後の年分) | すべての個人事業主 | 廃業した年の翌年3月15日 |
インボイス登録をしていた個人事業主が廃業するときは、「登録取消届出書」ではなく事業廃止届出書を出します(No.6603)。
青色申告の取りやめ届出書は必要?
年の途中で廃業しても、その年分は青色申告の承認が生きているので、要件を満たせば65万円控除や専従者給与が使えます。取りやめ届出書を出すときの「年分」の書き方には注意が必要です。詳しくは法人成りで個人事業を年の途中で廃業、青色申告は今年も使える?をご覧ください。
個人に残った資産・契約の整理
車・パソコン・在庫・事務所の賃貸契約などを会社に移すかどうかも決めます。消費税の課税事業者が廃業すると、事業用でなくなった資産は、廃業時に家事のために使ったものとみなされ(みなし譲渡)、時価相当額が課税の対象になります(No.6603)。資産の引き継ぎ方は法人成りのとき個人の資産をどう引き継ぐかで詳しく解説しています。
忘れやすい手続き
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| インボイスの登録 | 会社で新たに登録申請。最初の事業年度の末日までに「事業開始日から登録を受ける」旨を書いて申請すれば、設立日にさかのぼって登録を受けたものとみなされる(国税庁 新規開業者向けページ) |
| 取引先への連絡 | 請求先・振込先・登録番号が変わることを伝え、契約書を会社名義で結び直す |
| 法人口座・クレジットカード | 会社名義の口座を作り、個人のお金と分ける(法人口座の作り方) |
| 許認可 | 個人で受けた許認可は、業種によって会社で取り直しが必要 |
| 借入金 | 個人の事業用の借入れは自動的には会社に移らない。金融機関に早めに相談する |
| 会計ソフト | 会社用に新しく帳簿を作る。個人の最後の年の帳簿も締める |
消費税の免税期間をどう考えるかは、法人成りと消費税にまとめています。
まとめ
- 会社側は、法人設立届出書(2か月以内)と青色申告の承認申請書を、設立登記の後すぐに出す
- 役員報酬を払うなら、給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内)、社会保険の新規適用届(5日以内)、納期の特例の申請も
- 都道府県・市区町村の法人設立届は、自治体ごとの期限を確認する
- 個人側は、廃業届と、課税事業者なら消費税の事業廃止届出書。最後の確定申告は翌年3月15日まで
- インボイスは会社で登録し直す。取引先・口座・借入れ・許認可の切り替えも忘れずに
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