「決算月が一番忙しい時期と重なってしまう」「設立のときに何となく3月決算にしたけれど、変えられるのか」。ひとり会社の社長から、ときどきいただくご相談です。
結論からいうと、法人の決算期は変更できます。株主総会で定款を変え、税務署などに届け出るだけで、登記も不要です。手続き自体はシンプルですが、変更した年は事業年度が1年より短くなるため、税金や社会保険とは別の、いくつかの影響が出ます。
この記事では、決算期を変更する手続きの流れと、変更前に確認しておきたい注意点を整理します。
- 決算期は株主総会の特別決議で定款を変更し、税務署に異動届出書を出せば変更できる。登記は不要
- 変更の年は、変更前の決算日の翌日から新しい決算日までの短い事業年度になる
- 短い事業年度では、800万円の軽減税率枠や交際費の枠が月割りになり、消費税の判定にも影響する
- 役員報酬は新しい期首から3か月以内に決め直す必要がある
決算期を変更する手続きの流れ
株式会社の場合、事業年度は定款に書かれているのが一般的です。そのため、決算期の変更は定款の変更から始まります。
| 手順 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 新しい決算月を決める | 繁忙期、資金繰り、融資のタイミングなどから選ぶ | 変更の年に短い事業年度が生じることを前提に考える |
| 2. 株主総会で定款を変更 | 特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、その3分の2以上の賛成が原則) | ひとり会社なら社長=株主のため、議事録を作成して保存 |
| 3. 税務署に異動届出書を提出 | 変更前と変更後の事業年度を記載 | 法人税法は「遅滞なく」届け出ると定めている |
| 4. 都道府県・市区町村に届出 | 法人住民税・法人事業税の異動届 | 様式や提出先は自治体の案内を確認 |
| 5. 関係先に連絡 | 銀行、社会保険労務士、取引先など | 銀行には変更の理由を説明しておく |
税務署に出す異動届出書には「消費税」の欄があり、ここにチェックを付けて提出すれば、消費税の異動届出書を別に出す必要はありません(国税庁「法人の異動に関する届出書」の手続案内)。
事業年度は登記事項ではないため、法務局での変更登記は不要です。合同会社の場合も、定款に事業年度を定めていれば、定款の変更(原則として総社員の同意)が必要になります。
いつ決めればいいか
定款の変更は、新しい事業年度の区切りより前に決議しておくのが基本です。決算日を過ぎてから「さかのぼって変更した」という扱いは、手続きの順序として説明がつきにくくなります。変更を考え始めたら、早めに税理士に相談してスケジュールを組むと安心です。
変更した年は「短い事業年度」になる
決算期を変更すると、変更前の決算日の翌日から、新しい決算日までが1つの事業年度になります。
| 変更前 | 変更後 | 変更の年の事業年度 | 長さ |
|---|---|---|---|
| 3月決算 | 9月決算 | 4月1日〜9月30日 | 6か月 |
| 3月決算 | 12月決算 | 4月1日〜12月31日 | 9か月 |
| 9月決算 | 6月決算 | 10月1日〜翌年6月30日 | 9か月 |
なお、税法上、事業年度は1年を超えることができません(法人税法第13条)。「今の期を延ばして、15か月の事業年度にする」ということはできず、1年を超える部分は別の事業年度として扱われます。
短い事業年度でも、決算書の作成と法人税・消費税などの申告は1回分必要です。1年のうちに2回決算をすることになるため、その分の手間と費用がかかります。
短い事業年度で変わる税金の計算
事業年度が短くなると、「年◯◯万円」と決まっている枠が月割りになります。
| 項目 | 通常(12か月) | 6か月の事業年度の場合 |
|---|---|---|
| 法人税の軽減税率(15%)が使える所得 | 年800万円以下の部分 | 400万円以下の部分 |
| 交際費の定額控除限度額(中小法人) | 年800万円 | 400万円 |
| 法人住民税の均等割 | 年額 | 月数に応じて按分 |
| 減価償却費 | 1年分 | 月数に応じた分 |
利益が出る時期の途中で区切ると、短い期の中で軽減税率の枠を超えてしまうこともあります。変更の年の利益の見込みを立ててから、時期を決めるのが安全です。
消費税の判定への影響
消費税の納税義務は、原則として前々事業年度(基準期間)の課税売上高で判定します。決算期を変えると、2期先の判定のもとになる期間が短い事業年度になることがあります。基準期間が1年でない場合は、課税売上高を1年分に換算して判定します(消費税法第9条第2項)。
簡易課税制度を選んでいる場合や、インボイスの2割特例を使っている場合も、期の区切りが変わることで適用期間の数え方が変わります。消費税の届出は期限が厳格なので、変更前に必ず確認してください。詳しくは簡易課税は選ぶべき?届出の期限と2年縛りもご覧ください。
中間申告の扱い
法人税の中間申告は、事業年度が6か月を超える法人が対象です。変更の年が6か月以下になれば、その期の中間申告はありません。一方、変更後の通常の期では、前期(短い期)の法人税額をもとに中間申告の要否と金額を計算します。
役員報酬の決め直しを忘れない
ひとり会社で特に注意したいのが役員報酬です。毎月同じ額を払う「定期同額給与」は、原則として事業年度開始の日から3か月以内にしか改定できません(国税庁タックスアンサーNo.5211)。
決算期を変えると、期首の日も変わります。新しい事業年度が始まったら、3か月以内に株主総会で役員報酬を決め直し、議事録を残します。「前の期のまま据え置く」場合でも、新しい期の報酬として決議しておくと説明がしやすくなります。役員報酬の決め方はひとり会社の役員報酬の決め方で詳しく解説しています。
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オンライン記帳・申告サポートを見る銀行には理由を説明しておく
決算期を変更すると、銀行に出す決算書に6か月や9か月の短い期が入ります。売上も利益も通常の期より小さく見えるため、前期との比較がしにくくなります。
融資の審査では、短い期の決算書だけを見て「業績が落ちた」と誤解されないよう、変更の理由(繁忙期を避けるため、親会社や取引先と合わせるため、など)と、12か月に換算した数字を説明できるようにしておくと安心です。決算書の見られ方は銀行に決算書を出す前に確認することも参考にしてください。
変更のメリット・デメリットをもっと詳しく比べたい方は、決算期を変更するメリット・デメリットをご覧ください。
まとめ
- 決算期は、定款の変更と税務署などへの異動届出書で変更できる。登記は不要
- 変更の年は短い事業年度になり、1年に2回の決算と申告が必要になる
- 800万円の軽減税率枠や交際費の枠は月割りになる。消費税の判定や届出の期限も確認する
- 新しい期首から3か月以内に役員報酬を決め直す
- 銀行には変更の理由と、12か月換算の数字を説明できるようにしておく
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