決算期・個人と法人

小さな事業の法人化のメリット・デメリットは?信用・融資・手間で比べる

「売上が伸びてきたので法人化を考えている。でも、本当にメリットがあるのか」。個人事業主の方から、よくいただくご相談です。

法人化には、税金の面だけでなく、信用・融資・手間の面でも、メリットとデメリットがあります。税金だけを見て決めると、「思ったより手取りが増えない」「事務の手間が想像以上だった」ということにもなりかねません。

この記事では、小さな事業の法人化のメリット・デメリットを項目ごとに比べ、どんな人に向いているかを整理します。

この記事の結論
  • メリットは、利益が大きいときの税負担の軽減、信用・取引の幅、赤字の繰越期間(10年)など
  • デメリットは、社会保険の加入義務、赤字でもかかる均等割、決算・申告の手間と費用、お金の自由度が下がること
  • 銀行の評価は、法人という形よりも決算書の中身で決まる
  • 「今の利益」だけでなく、数年先の事業の見通しで判断する

個人事業と法人の主な違い

項目個人事業法人(ひとり会社)
所得にかかる税金所得税(5〜45%の累進)+住民税10%+個人事業税法人税(中小法人は年800万円以下15%、超える部分23.2%)+地方税
自分への給料経費にならない役員報酬として会社の費用になる(給与所得控除あり)
社会保険国民健康保険・国民年金健康保険・厚生年金(社長1人でも加入義務)
赤字の繰越青色申告で3年青色申告で10年
赤字の年の税金所得がなければ原則かからない均等割(標準で年7万円)がかかる
交際費事業に必要なら上限なし中小法人は年800万円の定額控除など
決算・申告確定申告(3月15日まで)決算書・法人税申告書(決算日から原則2か月以内)
設立・廃業開業届・廃業届設立登記・解散清算の登記が必要

出典:国税庁タックスアンサーNo.5759(法人税の税率)、No.5762(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除)、日本年金機構「適用事業所と被保険者」

法人化のメリット

1. 利益が大きいときに税負担が軽くなる

個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税です。法人税は、中小法人なら年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%です。利益が大きくなると、法人のほうが税率が低くなりやすくなります。

さらに、社長に払う役員報酬は会社の費用になり、受け取る社長には給与所得控除が使えます。ただし、社会保険料が増えるため、税金だけでなく社会保険料を含めて比べることが大切です。所得別の試算は個人と法人、どっちが税金はお得?で詳しく行っています。

2. 信用と取引の幅

取引先の中には、法人であることを取引や口座開設の条件にしているところがあります。法人化によって、大きな会社との取引や、業務委託の受注につながることがあります。

3. 融資で事業の実態を評価してもらいやすい

銀行の融資では、個人事業主の場合は確定申告書、法人の場合は決算書をもとに審査されます。法人の決算書は、会社のお金と社長個人のお金が分かれているため、事業の収益力や財務の状態を評価しやすくなります。

ただし、銀行が見るのは「法人かどうか」より決算書の中身です。赤字が続いていたり、社長への貸付金(役員貸付金)が膨らんでいたりすると、法人でも評価は下がります。社長と会社のお金の貸し借りは役員借入金・役員貸付金をご覧ください。

4. 赤字の繰越期間が長い

青色申告の個人事業主は、赤字(純損失)を翌年以後3年間繰り越せます。法人は、青色申告書を提出した事業年度の欠損金を10年間繰り越せます(2018年4月1日以後に開始した事業年度に生じたもの)。設備投資などで大きな赤字が出る事業では、この差が効いてきます。

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法人化のデメリット

1. 社会保険の加入義務

法人の事業所は、社長1人でも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。役員報酬を受け取る社長は加入が必要で、保険料は会社と本人でほぼ折半します。手取りへの影響が大きいので、事前に試算しておきましょう(ひとり会社でも社会保険に入らないといけない?)。

2. 赤字でもかかる均等割と、維持費

法人住民税の均等割は、利益がなくてもかかります。標準税率では、資本金1,000万円以下・従業者50人以下の法人で年7万円です。このほか、役員の任期ごとの変更登記(資本金1億円以下の会社は登録免許税1万円)、決算・申告を依頼する税理士費用などがかかります。詳しくはひとり会社の維持費をご覧ください。

3. 決算・申告と事務の手間

法人では、決算書と法人税・地方税・消費税の申告書を作り、決算日から原則2か月以内に申告します。役員報酬の決議、議事録、源泉徴収、年末調整、社会保険の手続きなど、個人事業より事務が増えます。

4. お金の自由度が下がる

会社のお金は、社長個人のお金ではありません。役員報酬は原則として期首から3か月以内に決めて毎月同額で払い、それ以外に会社のお金を使えば、役員貸付金や役員給与の問題になります。個人事業のように「必要なときに事業の口座から生活費を引き出す」ことはできません。

法人化が向いている人・まだ早い人

向いているまだ早い
利益が安定して大きく、今後も伸びる見通しがある利益の変動が大きく、赤字の年もある
法人でないと取引できない取引先がある取引先が法人化を求めていない
融資を受けて事業を広げたい当面、借入の予定がない
記帳と決算を任せられる体制がある記帳が追いついていない

法人化の時期の目安は法人成りの目安はいくらから?、設立費用は会社設立の費用と流れ、株式会社と合同会社の違いは株式会社と合同会社の違いもご覧ください。

まとめ

  • 法人化のメリットは、利益が大きいときの税負担の軽減、信用・取引の幅、融資での評価のしやすさ、赤字の繰越期間の長さ
  • デメリットは、社会保険の加入義務、赤字でもかかる均等割などの維持費、決算・申告の手間、お金の自由度が下がること
  • 銀行の評価は、法人という形よりも決算書の中身で決まる
  • 今の利益だけでなく、数年先の事業の見通しで判断する

法人化は、税金・社会保険・手間・資金調達を並べて比べるのが基本です。法人化の前後の記帳と申告は、クレフティの「オンライン記帳・申告サポート」で、月額5,000円程度から(取引量や申告の内容で変わります)オンラインでお引き受けしています。法人化を迷っている段階から、チャットでご相談いただけます。

よくある質問

法人化すると取引先や銀行からの信用は上がりますか?
取引先によっては、法人であることを取引の条件にしているところもあり、法人化で取引の幅が広がることがあります。銀行も、事業と個人のお金が分かれた法人の決算書は事業の実態を評価しやすくなります。ただし、信用のもとになるのは法人という形よりも、決算書の中身と返済の実績です。
赤字の年でも法人には税金がかかりますか?
法人住民税の均等割は、利益が出ていなくてもかかります。標準税率では、資本金1,000万円以下・従業者50人以下の法人で道府県民税2万円と市町村民税5万円の合計7万円です(東京23区は都民税として同額)。自治体によっては標準税率より高い場合があります。
法人化したら、もう個人事業には戻れませんか?
会社を解散・清算して個人事業に戻ることはできます。ただし、解散・清算の登記や申告の手続きと費用がかかり、取引先や銀行への説明も必要です。法人化は戻すのにも手間がかかるため、数年先の事業の見通しを立ててから判断するのが安全です。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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