「法人化すると、毎年どれくらいお金がかかるのか」。法人化を考える個人事業主の方が、税金の比較と並んで気にされるのがひとり会社の維持費です。
ひとり会社の維持費の中心は、赤字でもかかる均等割、役員報酬に応じた社会保険料、決算・申告の費用の3つです。このほか、数年に一度の登記費用や、決算公告などもあります。
この記事では、ひとり会社の維持費の内訳と、個人事業と比べて増えるもの・減るものを整理します。
- 均等割は利益がなくてもかかる。標準税率で年7万円(資本金1,000万円以下・従業者50人以下)
- 社会保険料は役員報酬で決まり、会社と本人でほぼ折半。月10万円の報酬でも合計で月約2.8万円(東京都・40歳未満)
- 決算・申告の費用は、依頼する範囲と取引量で変わる
- 一方、個人事業税や国民健康保険・国民年金はかからなくなる。増えるものと減るものを並べて比べる
ひとり会社の維持費の内訳
| 費目 | 金額・頻度 | 赤字でもかかるか |
|---|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 標準税率で年7万円(道府県民税2万円+市町村民税5万円) | かかる |
| 社会保険料(健康保険・厚生年金) | 役員報酬に応じて毎月。会社と本人でほぼ折半 | 報酬を払う限りかかる |
| 決算・申告の費用 | 税理士への報酬、会計ソフトなど | かかる |
| 役員の変更登記 | 役員の任期ごと。登録免許税は資本金1億円以下で1件1万円 | かかる |
| 決算公告 | 株式会社は毎年の決算公告が会社法で求められる | かかる |
| 法人口座・本店の費用 | 金融機関の手数料、事務所の賃料など | 状況による |
出典:総務省「法人住民税」、国税庁タックスアンサーNo.7191(登録免許税の税額表)
均等割は赤字でもかかる
法人住民税は、法人税額に応じてかかる法人税割と、定額でかかる均等割に分かれます。均等割は、資本金等の額と従業者数で決まり、利益が出ていなくても課税されます。資本金1,000万円以下・従業者50人以下の法人なら、標準税率で道府県民税2万円・市町村民税5万円の合計年7万円です。東京23区では都民税として同じ額です。
自治体によっては、標準税率より高い税率を定めているところもあります。本店の所在地の自治体の案内を確認してください。
役員の変更登記
株式会社の取締役の任期は原則2年ですが、株式の譲渡制限がある会社(多くのひとり会社)は定款で最長10年まで延ばせます。任期が来たら、同じ人が再任する場合でも変更登記が必要で、資本金1億円以下の会社なら登録免許税は1件1万円です。登記を忘れると過料の対象になることがあるので、任期の管理をしておきましょう。
社会保険料はいくらかかるか
ひとり会社でも、社長が役員報酬を受け取っていれば、健康保険・厚生年金保険への加入が義務です。保険料は、役員報酬から決まる標準報酬月額に保険料率をかけ、会社と本人でほぼ半分ずつ負担します。
2026年度の東京都(協会けんぽ)、40歳未満の場合の月額の目安です。
| 役員報酬(月額) | 会社と本人の合計(月) | 年間の合計 |
|---|---|---|
| 10万円 | 約2.8万円 | 約34万円 |
| 30万円 | 約8.6万円 | 約103万円 |
| 50万円 | 約14.4万円 | 約172万円 |
協会けんぽ東京支部の保険料額表(健康保険9.85%、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%、会社のみ負担の子ども・子育て拠出金0.36%)をもとにした概算です。40〜64歳の方は介護保険料(1.62%)が加わります。
標準報酬月額には下限(厚生年金8.8万円、健康保険5.8万円)があるため、報酬を低くしても保険料はゼロになりません。詳しくは役員報酬と社会保険料の関係、加入義務についてはひとり会社でも社会保険に入らないといけない?をご覧ください。
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オンライン記帳・申告サポートを見る決算・申告の費用
法人は、事業年度ごとに決算書を作り、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税、課税事業者なら消費税の申告をします。申告期限は原則として決算日の翌日から2か月以内です。個人の確定申告より書類が多く、税務の判断も増えるため、多くのひとり会社が税理士に依頼しています。
税理士費用は、記帳から任せるか、決算と申告だけか、取引量や相談の頻度で大きく変わります。料金だけでなく、対応の範囲と相談のしやすさで比べるのがおすすめです。記帳を自分でやるか任せるかの比較は記帳は自分でやるか、税理士に任せるか、選び方はオンライン税理士の選び方をご覧ください。
個人事業と比べて増えるもの・減るもの
維持費は「法人で増えるもの」だけを見ると重く感じますが、個人事業のときにかかっていたものも一部なくなります。
| 個人事業でかかっていたもの | 法人化後 |
|---|---|
| 所得税・住民税(事業所得) | 役員報酬にかかる所得税・住民税に変わる |
| 個人事業税 | 事業を法人に移せば、かからなくなる(法人事業税は所得に応じてかかる) |
| 国民健康保険・国民年金 | 健康保険・厚生年金に変わる(本人の国民健康保険・国民年金はなくなる) |
| 確定申告の手間 | 社長個人の申告は簡単になることが多いが、法人の決算・申告が増える |
法人化してよいかどうかは、維持費を含めた手取りの比較で判断します。税金と社会保険料を合わせた試算は個人と法人、どっちが税金はお得?、法人化のメリット・デメリットは小さな事業の法人化のメリット・デメリットで解説しています。会社設立のときの費用は会社設立の費用と流れもご覧ください。
まとめ
- ひとり会社の維持費の中心は、均等割(標準で年7万円)、社会保険料、決算・申告の費用
- 均等割は赤字でもかかる。役員の変更登記や決算公告も忘れずに
- 社会保険料は役員報酬で決まり、報酬が低くても下限がある
- 個人事業税や国民健康保険・国民年金は、法人化後はかからなくなる(または置き換わる)。増えるものと減るものを並べて比べる
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