「役員報酬を月50万円にしたら、社会保険料はいくらになるのか」「会社の負担はどれくらいか」。ひとり会社の社長が役員報酬を決めるとき、税金と同じくらい気になるのが社会保険料です。
ひとり会社でも、社長が役員報酬を受け取っていれば、原則として健康保険と厚生年金保険に加入します。保険料は役員報酬の額で決まり、会社と本人がほぼ半分ずつ負担します。会社負担分も結局はひとり会社の財布から出るので、合計でいくらになるかを見ることが大切です。
この記事では、役員報酬と社会保険料の関係を、2026年度の料率で試算しながら整理します。
- 社会保険料は、役員報酬から決まる標準報酬月額 × 保険料率で計算する
- 会社と本人でほぼ折半。ひとり会社では、会社負担分も含めた合計で考える
- 東京都・40歳未満の場合、会社と本人の合計は報酬の約29%(月30万円の場合)。厚生年金には上限があるため、報酬が高いほど割合は下がる
- 保険料を下げるために報酬を下げると、法人税等や将来の年金・手当金にも影響する。税金と給付を合わせて判断する
社会保険料の決まり方
健康保険と厚生年金保険の保険料は、毎月の報酬を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額に、保険料率をかけて計算します。
| 保険 | 保険料率(2026年度) | 負担 | 標準報酬月額の範囲 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ・東京都) | 9.85% | 会社と本人で折半 | 5.8万円〜139万円 |
| 介護保険(40〜64歳のみ) | 1.62% | 会社と本人で折半 | 健康保険と同じ |
| 子ども・子育て支援金(2026年4月分から) | 0.23% | 会社と本人で折半 | 健康保険と同じ |
| 厚生年金保険 | 18.3% | 会社と本人で折半 | 8.8万円〜65万円 |
| 子ども・子育て拠出金 | 0.36% | 会社のみ | 厚生年金と同じ |
出典:協会けんぽ「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」、日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
健康保険料率は都道府県ごとに違います。また、厚生年金の標準報酬月額の上限は、2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円へと段階的に引き上げられる予定です(厚生労働省「厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて」)。
標準報酬月額はいつ決まるか
| タイミング | 内容 |
|---|---|
| 加入したとき(資格取得時決定) | 最初の報酬の見込み額で決める |
| 毎年9月(定時決定) | 4〜6月の報酬の平均で見直す |
| 報酬を変えたとき(随時改定) | 固定的な報酬が変わり、3か月平均で2等級以上変わると、4か月目から改定 |
役員報酬は、法人税のルール上、原則として期首から3か月以内にしか変えられません(定期同額給与)。報酬を改定したら、社会保険料も随時改定で数か月後に変わる、という流れになります。役員報酬の決め方はひとり会社の役員報酬の決め方をご覧ください。
月額別の社会保険料の試算
東京都の協会けんぽ、40歳未満(介護保険なし)で、役員報酬だけを受け取る場合の月額です。円未満の端数は概算です。
| 役員報酬(月額) | 標準報酬月額 | 本人負担 | 会社負担 | 合計 | 報酬に対する合計の割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30万円 | 30万円 | 約4.3万円 | 約4.4万円 | 約8.6万円 | 約29% |
| 50万円 | 50万円 | 約7.1万円 | 約7.3万円 | 約14.4万円 | 約29% |
| 80万円 | 79万円(厚生年金は65万円) | 約9.9万円 | 約10.2万円 | 約20.1万円 | 約25% |
| 100万円 | 98万円(厚生年金は65万円) | 約10.9万円 | 約11.1万円 | 約22.0万円 | 約22% |
40〜64歳の方は、ここに介護保険料(1.62%を折半)が加わります。たとえば月50万円なら、本人・会社それぞれ月4,050円増えます。
月65万円を超えると、厚生年金の保険料は上限で頭打ちになります。一方、健康保険は139万円まで上がり続けるため、報酬が高い人ほど報酬に対する割合は下がります。
手取りはどうなるか
本人の手取りは、役員報酬から本人負担の社会保険料と所得税・住民税を差し引いた額です。社会保険料の本人負担分は、所得税・住民税の計算で全額が社会保険料控除になるため、税金は少し軽くなります。
ひとり会社の場合、会社負担分も会社の費用になります。ただ、会社のお金も社長のお金も、もとは同じ事業の利益です。事業の利益のうち、どれだけが社会保険料として出ていくかは、会社負担と本人負担の合計で見るのが実態に合っています。
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オンライン記帳・申告サポートを見る報酬の決め方:保険料だけで決めない
報酬を下げると、会社に利益が残る
社会保険料を抑えようと役員報酬を低くすると、その分、会社に利益が残り、法人税等がかかります。会社に残ったお金を後で個人に移すには、配当や退職金などの形になり、そこでも税金がかかります。役員報酬・社会保険料・法人税等を合わせた比較は、個人と法人、どっちが税金はお得?で試算しています。
保険料は給付にもつながる
厚生年金の保険料は、将来の老齢厚生年金の額に反映されます。健康保険からは、病気やけがで働けないときの傷病手当金、出産のときの出産手当金が、標準報酬月額をもとに支給されます。報酬を下げれば保険料は下がりますが、これらの給付も小さくなります。国民健康保険・国民年金との違いは国民健康保険・国民年金と社会保険はどっちがいい?をご覧ください。
賞与にも保険料がかかる
賞与(事前確定届出給与など)にも、標準賞与額に応じて保険料がかかります。上限は、健康保険(介護保険・子ども・子育て支援金を含む)が年度の累計で573万円、厚生年金保険が1回150万円です。報酬と賞与の配分を考えるときは、法人税のルール(事前の届出)とあわせて検討が必要で、個別の事情によって判断が分かれます。
ひとり会社の社会保険の加入義務についてはひとり会社でも社会保険に入らないといけない?、役員報酬の設計の考え方は役員報酬の決め方と融資への影響もご覧ください。
まとめ
- 社会保険料は、役員報酬から決まる標準報酬月額に保険料率をかけて計算し、会社と本人でほぼ折半する
- 東京都・40歳未満なら、会社と本人の合計は月30万円の報酬で約8.6万円(約29%)。厚生年金の上限があるため、高い報酬ほど割合は下がる
- 報酬を変えると、2等級以上の変動なら随時改定で保険料が変わる
- 保険料を下げるために報酬を下げると、法人税等や将来の年金・手当金にも影響する。合計で判断する
役員報酬は、税金・社会保険料・会社に残すお金の3つを並べて決めるのが基本です。クレフティの「オンライン記帳・申告サポート」では、月額5,000円程度から(取引量や申告の内容で変わります)、記帳から決算・申告までをオンラインでお引き受けしており、役員報酬の見直しもチャットでご相談いただけます。
