「従業員がいないから、社会保険には入らなくていいと思っていた」。法人化したばかりのひとり会社の社長から、ときどき聞くお話です。
結論からいうと、ひとり会社でも、社長が役員報酬を受け取っていれば社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務です。個人事業主のときとはルールが違うので、法人化したら最初に確認しておきたいところです。
この記事では、ひとり会社の社会保険の加入義務、手続き、保険料の目安を整理します。
- 株式会社などの法人の事業所は、社長1人でも強制適用事業所になる
- 役員報酬を受け取っている社長は被保険者になる。報酬がゼロなら被保険者にならない
- 手続きは事実発生から5日以内に年金事務所へ新規適用届
- 保険料は役員報酬で決まり、会社と本人でほぼ折半。報酬が低くても下限がある
ひとり会社にも加入義務がある理由
法人は社長1人でも強制適用
日本年金機構は、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)を、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所としています。個人事業所は、常時5人以上の従業員がいるなどの条件を満たす場合に限られるのと対照的です。
| 事業の形 | 社会保険の適用 |
|---|---|
| 法人(株式会社・合同会社など) | 社長1人でも強制適用 |
| 個人事業所(法定の業種で常時5人以上) | 強制適用 |
| 個人事業所(上記以外) | 任意適用(従業員の半数以上の同意と認可が必要) |
| 個人事業主本人 | 被保険者にならない(国民健康保険・国民年金) |
出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
報酬を受けている社長は被保険者
社長は会社に雇われているわけではありませんが、昭和24年の通知(昭和24年7月28日保発第74号)で、法人の代表者や業務執行者でも、法人から労務の対償として報酬を受けている人は被保険者とすることとされています。
逆に、報酬を受けていない役員は被保険者になりません。社長が無報酬で、ほかに被保険者となる人もいない法人は、社会保険に加入する人がいないため、社長は国民健康保険と国民年金に加入するのが一般的な扱いです。個別の取扱いは、管轄の年金事務所で確認してください。
なお、厚生年金保険の被保険者は70歳未満の人です。
加入の手続き
| 手続き | 期限・提出先 | 主な添付書類 |
|---|---|---|
| 新規適用届 | 事実発生から5日以内/年金事務所(事務センター) | 法人の登記簿謄本(発行から90日以内、コピー不可)など |
| 被保険者資格取得届 | 同上 | ― |
| 被扶養者(異動)届 | 家族を扶養に入れる場合 | 続柄や収入を確認する書類 |
電子申請、郵送、窓口持参のいずれでも提出できます。会社の設立と同時に役員報酬を払い始める場合は、設立後すぐに手続きが必要です。国民健康保険に加入していた場合は、社会保険に加入した後、市区町村で国民健康保険の脱退手続きをします。
保険料の目安
保険料は、役員報酬から決まる標準報酬月額に保険料率をかけて計算し、会社と本人でほぼ半分ずつ負担します。2026年度の東京都(協会けんぽ)、40歳未満の場合は次のとおりです。
| 役員報酬(月額) | 本人負担 | 会社負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 10万円(標準報酬月額 9.8万円) | 約1.4万円 | 約1.4万円 | 約2.8万円 |
| 30万円 | 約4.3万円 | 約4.4万円 | 約8.6万円 |
| 50万円 | 約7.1万円 | 約7.3万円 | 約14.4万円 |
健康保険料率9.85%、子ども・子育て支援金率0.23%、厚生年金保険料率18.3%(いずれも折半)と、会社のみが負担する子ども・子育て拠出金0.36%で計算した概算です(協会けんぽ東京支部の保険料額表による)。40〜64歳の方は介護保険料(1.62%を折半)が加わります。
報酬が低くても下限がある
標準報酬月額には下限があり、厚生年金保険は8.8万円、健康保険は5.8万円が最低の等級です。役員報酬を低くしても、保険料はゼロにはなりません。保険料の詳しい仕組みと、役員報酬との関係は役員報酬と社会保険料の関係で解説しています。
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オンライン記帳・申告サポートを見る加入しないとどうなるか
加入の義務があるのに手続きをしていない場合、年金事務所から加入の案内や指導が届くことがあります。保険料は、さかのぼって納めることを求められる場合があります(保険料を徴収する権利の時効は2年です)。
まとめて請求されると資金繰りの負担が大きくなるので、法人化したら早めに手続きを済ませましょう。また、銀行の融資審査では、社会保険料の滞納がないかを確認されることもあります。
加入のメリットも知っておく
社会保険料は負担に感じやすいものですが、次のような給付があります。
- 厚生年金:国民年金(基礎年金)に上乗せして、報酬に応じた老齢厚生年金を受け取れる
- 傷病手当金・出産手当金:病気やけが、出産で働けないときに、報酬に応じた手当金を受け取れる(国民健康保険では原則として任意給付)
- 家族の扶養:一定の要件を満たす家族を、追加の保険料なしで被扶養者にできる
国民健康保険・国民年金との比較は国民健康保険・国民年金と社会保険はどっちがいい?、法人化を考えている方はひとり会社の維持費:均等割・社会保険・税理士費用もご覧ください。会社設立後の社会保険の手続きは起業したら社会保険はどうなる?でも解説しています。
まとめ
- 法人の事業所は社長1人でも強制適用。役員報酬を受け取っている社長は被保険者になる
- 社長が無報酬でほかに被保険者もいなければ、社長は国民健康保険・国民年金になるのが一般的
- 新規適用届は事実発生から5日以内に年金事務所へ
- 保険料は役員報酬で決まり、会社と本人でほぼ折半。報酬が低くても下限がある
- 手続きが遅れると、さかのぼって保険料を求められることがある
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