決算期・個人と法人

法人成りの目安は所得いくらから?税金だけで決めない5つの判断ポイント

「所得がいくらになったら法人成りしたほうがいいのか」。売上が伸びてきた個人事業主の方から、最もよくいただくご質問の一つです。

結論からいうと、税金と社会保険料を合わせた試算では、事業の利益が800万円前後から法人が有利になり始めるのが一つの水準です。ただし、これは単身・40歳未満などの前提を置いた試算で、利益の安定性、会社に残すお金の使い道、消費税、維持費、取引や融資の事情によって答えは変わります。

この記事では、法人成りの目安の考え方と、税金だけで決めないための5つの判断ポイントを整理します。

この記事の結論
  • 税金だけなら事業の利益500万円前後から法人が軽くなるが、社会保険料を含めると800万円前後からが一つの水準
  • 試算の数字は、家族構成、年齢、役員報酬の決め方、地域で変わる
  • 判断のポイントは、①利益の安定性 ②会社に残すお金の使い道 ③消費税 ④維持費と手間 ⑤取引・融資の5つ
  • 「今年の利益」ではなく、今後2〜3年の見通しで判断する

所得別に見た法人化の目安

2026年の税率・給与所得控除と社会保険料率で、個人と法人の負担を比べた結果の要点です(単身・40歳未満・東京都、役員報酬は利益の6割前後。詳しい前提と内訳は個人と法人、どっちが税金はお得?)。

事業の利益税金だけで比べると社会保険料も含めると
500万円ほぼ同じ水準個人のほうが約15万円軽い
800万円法人のほうが約65万円軽い法人のほうが約25万円軽い
1,000万円法人のほうが約103万円軽い法人のほうが約47万円軽い
1,500万円法人のほうが約219万円軽い法人のほうが約100万円軽い
2,000万円法人のほうが約328万円軽い法人のほうが約181万円軽い

税金だけで見ると早めの法人化が有利に見えますが、社会保険料を含めると、有利になる水準が上がることが分かります。また、法人の試算には、会社に残る利益(法人税等を払った後も会社のお金)が含まれています。

判断のポイント1:利益は安定しているか

法人化の効果は、利益が毎年安定して出ることが前提です。1年だけ利益が大きかった、という状態で法人化すると、翌年以降に利益が減ったときに、均等割や社会保険料、決算の費用といった固定の負担だけが残ります。

役員報酬は原則として期首から3か月以内に決め、その期は毎月同額です。利益が読めない事業では、報酬を決めにくい点も考えておきましょう。

判断のポイント2:会社に残すお金を何に使うか

法人化で負担が軽くなる大きな理由は、利益の一部を役員報酬にせず、会社に残すことにあります。会社に残したお金は、法人税等を払った後も会社のお金です。

会社に残すお金の使い道法人化との相性
設備投資、借入の返済、運転資金よい。会社のお金のまま使える
将来の役員退職金の原資よい。退職所得は税負担が軽くなる仕組みがある
生活費として全部使いたい悪い。個人に移すときに税金や社会保険料がかかる

利益のほとんどを生活費として使う場合は、役員報酬を高くするしかなく、法人化の効果は小さくなります。

判断のポイント3:消費税

資本金1,000万円未満で設立した法人は、1期目と2期目に基準期間がないため、原則として消費税の免税事業者になれます。ただし、2期目は1期目の前半6か月(特定期間)の売上と給与がともに1,000万円を超えると課税事業者になります。また、インボイス登録をしていれば、免税の効果はありません。消費税の考え方は法人成りと消費税:免税期間をどう考えるかをご覧ください。

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判断のポイント4:維持費と手間

法人には、利益が出なくてもかかる均等割(標準で年7万円)、社会保険料、決算・申告の費用があります。役員報酬の決議や議事録、源泉徴収、社会保険の手続きなど、事務も増えます。

試算で法人のほうが数十万円軽くなっても、税理士費用などの増加分を差し引くと差が小さくなることがあります。維持費の内訳はひとり会社の維持費で確認してください。

判断のポイント5:取引と融資

税金以外の理由で法人化を急いだほうがよいケースもあります。

  • 取引先が法人との取引を条件にしている
  • 事業を広げるために融資を受けたい。法人の決算書は事業と個人のお金が分かれ、評価しやすい
  • 従業員を雇い、社会保険を整えて採用につなげたい

逆に、借入の予定がなく、取引先も法人化を求めていないなら、税金と社会保険料の試算を優先して判断してよいでしょう。法人化のメリット・デメリットの全体像は小さな事業の法人化のメリット・デメリット、融資の視点も含めた解説は個人事業主の法人化のタイミングと目安をご覧ください。

判断のチェックリスト

チェック項目はいいいえ
事業の利益が2〜3年続けて800万円前後以上出る見通しがある法人化を検討もう少し様子を見る
利益の一部を会社に残して使う予定がある法人化の効果が出やすい効果は小さい
社会保険料の増加を試算した―先に試算する
記帳と決算を任せられる体制がある法人化しやすい体制づくりから
取引先や融資の事情で法人が必要早めに検討税金と保険料の試算で判断

まとめ

  • 社会保険料を含めた試算では、事業の利益800万円前後からが法人化の一つの水準
  • 税金だけで比べると、法人化の効果を大きく見積もりやすい
  • 利益の安定性、会社に残すお金の使い道、消費税、維持費と手間、取引・融資の5つで判断する
  • 今年の利益ではなく、今後2〜3年の見通しで決める

法人成りの判断には、自分の数字での試算が欠かせません。クレフティの「オンライン記帳・申告サポート」では、月額5,000円程度から(取引量や申告の内容で変わります)、記帳から決算・申告までをオンラインでお引き受けしており、法人化の前の試算もチャットでご相談いただけます。

よくある質問

「所得800万円を超えたら法人化」と聞きますが本当ですか?
個人の所得税率が上がる水準と法人税の軽減税率の枠から、目安として語られることがあります。この記事の試算(単身・40歳未満・東京都)でも、社会保険料を含めて法人のほうが負担が小さくなるのは事業の利益800万円前後からでした。ただし、家族構成、役員報酬の決め方、会社に残すお金の使い道で結果は変わるため、あくまで出発点として考えてください。
年の途中で法人成りしてもいいですか?
できます。その場合、その年の1月1日から法人成りの前日までの個人事業の分は確定申告を、法人設立後の分は法人の決算・申告を行います。個人事業の廃業届や、青色申告をやめる届出、法人の設立届など、手続きが重なる時期になるため、余裕をもって準備しましょう。
法人成りすると消費税が2年間免除されるのですか?
資本金1,000万円未満の法人は、設立1期目と2期目に基準期間がないため、原則として免税事業者になれます。ただし、2期目は特定期間(1期目の前半6か月)の売上と給与がともに1,000万円を超えると課税事業者になり、インボイス登録をしていれば免税の効果はありません。個別の状況で判断が分かれます。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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