「会社の社長は出張のたびに日当をもらえると聞いた。個人事業主の自分も、自分に日当を払って経費にできるのでは?」。開業して数年たった個人事業主の方から、よくいただくご質問です。
結論からいうと、個人事業主が自分自身に払う日当は経費になりません。旅費規程を作っても同じです。一方で、出張のために実際に支払った交通費や宿泊費は、事業に必要なものなら経費にできます。
この記事では、個人事業主の出張費で経費にできるもの・できないものと、法人との違いを整理します。
- 個人事業主が自分に払う日当は経費にならない。事業のお金を自分に移すだけだから
- 経費にできるのは、出張で実際に支払った交通費・宿泊費など
- 従業員や青色事業専従者には、旅費規程に基づいて通常必要な範囲の日当を払える
- 社長に日当を払えるのは、会社と社長が別の人格だから。ここが法人との違い
自分への日当が経費にならない理由
所得税では、事業所得の金額は「収入金額から必要経費を差し引いた金額」です。必要経費は、売上原価や販売費・一般管理費など、その事業の業務について生じた費用です(所得税法第37条)。
個人事業主の事業と、事業主本人は同じ人です。事業用の口座から自分の財布にお金を移しても、外部に支払ったわけではないので、費用は生じていません。帳簿の上では「事業主貸」(事業のお金を事業主が私的に使ったもの)として処理します。
| 支払い | 帳簿の処理 | 経費になるか |
|---|---|---|
| 自分への日当 | 事業主貸 | ならない |
| 自分への給料 | 事業主貸 | ならない |
| 新幹線・飛行機の代金(出張) | 旅費交通費 | なる(事業に必要なもの) |
| 出張先のホテル代 | 旅費交通費 | なる(事業に必要なもの) |
| 従業員への日当(規程に基づく通常必要な範囲) | 旅費交通費 | なる |
自分に給料を払っても経費にならないのと同じ理屈です。事業主貸・事業主借の考え方は事業主貸・事業主借とはで詳しく解説しています。
出張で経費にできるもの・できないもの
個人事業主の出張費は、実際にかかった費用を、事業との関係を説明できる範囲で経費にします。
| 費用 | 扱いの考え方 |
|---|---|
| 交通費(電車・新幹線・飛行機・高速代など) | 出張の目的が事業なら経費。領収書や利用明細を保存 |
| 宿泊費 | 出張に必要な宿泊なら経費。観光のための延泊分は除く |
| 出張先での取引先との食事 | 事業との関係を説明できれば、交際費や会議費になり得る |
| 出張中の自分だけの食事 | 生活費の性格が強く、原則として経費になりにくい |
| 観光・私的な買い物 | 経費にならない |
観光を兼ねた出張は按分が必要
出張の前後に観光を加えた場合、観光の部分は経費になりません。交通費のように分けにくいものは、事業の日数と観光の日数などで合理的に按分します。家族を同行した場合、家族の分の旅費は原則として経費になりません。
記録を残す
経費にするためには、「いつ、どこへ、何のために行ったか」が分かる記録が大切です。カレンダーの予定、訪問先とのメール、打ち合わせのメモなどを、領収書と一緒に保存しておきましょう。記録の残し方は食事の記録はGoogleカレンダーに残せばいい?も参考になります。
AIを活用した記帳で、日々の経理から決算・確定申告までをまとめてお引き受けします。訪問なしのオンライン完結で、困ったときはチャットでいつでも質問できます。
オンライン記帳・申告サポートを見る従業員や専従者には日当を払える
個人事業主でも、従業員や青色事業専従者(事業を手伝う家族で、要件を満たして届け出た人)には、日当を払うことができます。事業主とは別の人に支払うので、事業の費用になります。
このとき、支給額がその旅行に通常必要と認められる範囲であれば、受け取る側では給与として課税されません(所得税法第9条第1項第4号)。範囲かどうかは、役職などの間で釣り合いのとれた基準か、同業種・同規模の他の事業者の水準と比べて相当か、といった点から判断されます(所得税基本通達9-3)。
そのため、従業員に日当を払うなら、旅費規程を作って基準を決めておくのが基本です。作り方は旅費規程の作り方をご覧ください。
家族への日当は特に慎重に
専従者である家族への日当は、税務調査で確認されやすいところです。出張に同行して業務を行った事実を、日程表や業務の記録で示せることが前提になります。家族旅行に同行しただけ、という実態であれば認められません。家族への給与の考え方は家族に給与を払える?青色事業専従者給与の要件もご覧ください。
法人なら社長に日当を払える理由
法人の場合は、会社と社長が別の人格です。会社が旅費規程に基づいて社長に日当を払うと、会社から社長個人への支払いになり、通常必要な範囲であれば会社の費用になり、社長個人にも課税されません。
| 個人事業主 | 法人(ひとり会社) | |
|---|---|---|
| 事業主・社長への日当 | 経費にならない(事業主貸) | 旅費規程に基づく通常必要な範囲なら費用になる |
| 受け取る人の課税 | ― | 通常必要な範囲なら非課税 |
| 従業員への日当 | 規程に基づく通常必要な範囲なら費用 | 同じ |
| 旅費規程 | 従業員・専従者に払う場合に必要 | 社長に払う場合も必要 |
ただし、日当のためだけに法人化するのは本末転倒です。法人化には、社会保険や維持費などの負担もあります。法人の日当の考え方は日当(出張手当)を払えるのは?法人と旅費規程、法人化の判断は小さな事業の法人化のメリット・デメリットをご覧ください。
まとめ
- 個人事業主が自分に払う日当は、旅費規程があっても経費にならない(事業主貸として処理)
- 出張で経費にできるのは、実際に支払った交通費・宿泊費など。観光や私的な部分は除く
- 従業員や青色事業専従者には、旅費規程に基づいて通常必要な範囲の日当を払える
- 法人で社長に日当を払えるのは、会社と社長が別の人格だから
出張費は、「実際にかかった費用」と「事業との関係が分かる記録」をそろえておくことが大切です。クレフティの「オンライン記帳・申告サポート」では、月額5,000円程度から(取引量や申告の内容で変わります)、記帳から決算・申告までをオンラインでお引き受けしています。出張費の処理に迷ったときも、チャットでいつでもご質問いただけます。
