仕事の連絡、決済アプリ、会計アプリ、SNSでの発信――個人事業主やひとり会社の社長にとって、スマホは欠かせない仕事道具です。仕事に使うスマホ本体は経費になります。
迷いやすいのは、分割払いで買ったときの処理、「実質0円」のキャンペーン、毎月の請求に混ざっている端末代と通信料の分け方、私用と兼ねているときの按分です。この記事では、国税庁のタックスアンサーなどに沿って整理します。
- 処理は本体の購入代金で決まる。10万円未満なら使い始めた年に全額を経費にできる
- 分割払いでも、判定は分割の月額ではなく購入代金の総額。払い終わっていない分は未払金にする
- 毎月の請求は、端末代の分割分(未払金の返済)と通信料(通信費)に分ける
- 私用と兼ねるなら、本体代も通信料も仕事に使う割合だけを経費に。判定は按分前の金額で行う
- 消費税の仕入税額控除は、分割払いでも端末を受け取ったときに購入代金の全額で行うのが原則
スマホ本体の処理は「購入代金」で決まる
スマホは何年か使う資産なので、原則として減価償却をします。ただし、取得価額が小さいものには、早く経費にできる取扱いがあります(国税庁タックスアンサー No.2100)。
| 本体の購入代金 | 処理 | 使える人 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 使い始めた年に全額を経費(消耗品費など) | 誰でも |
| 10万円以上20万円未満 | 3年間で3分の1ずつ経費(一括償却資産) | 誰でも |
| 10万円以上40万円未満(2026年3月31日までの取得は30万円未満) | 使い始めた年に全額を経費(年300万円まで) | 青色申告の個人事業主・中小法人など |
| 上記以外 | 耐用年数に応じて減価償却 | ― |
判定は、1台ごとの購入代金で行います。税込か税抜かは経理の方式によって決まり、免税事業者は税込の金額で判定します。最近は10万円を超える機種も多いので、どの区分に当たるかを最初に確認しましょう。
高価な機種で減価償却をする場合、スマホが耐用年数表のどの区分に当たるかは判断が分かれることがあります。少額の特例の詳しい要件は少額減価償却資産の特例は40万円未満に?、パソコンの例はパソコンの購入:10万円・20万円・40万円の分かれ目をご覧ください。
使い始めた年が基準
経費にするのは、買った年ではなく、仕事に使い始めた年です。12月に注文して、届いて使い始めたのが1月なら、翌年の経費になります。
分割払い・実質0円の処理
分割払いは「購入代金の総額」で判定する
スマホは、通信会社の分割払い(割賦)で買うことが多いと思います。分割払いでも、端末を受け取ったときに、購入代金の総額で資産を取得したことになります。
たとえば、12万円のスマホを24回払いで買った場合、月5,000円だからといって毎月の消耗品費にはしません。12万円の一括償却資産(または少額減価償却資産)として計上し、払い終わっていない残りを未払金にします。
| タイミング | 仕訳の例(仕事専用・税込経理) |
|---|---|
| 端末を受け取ったとき | 一括償却資産 12万円 / 未払金 12万円 |
| 毎月の支払い | 未払金 5,000円 / 普通預金 5,000円 |
| 年末 | 減価償却費 4万円 / 一括償却資産 4万円(3年で均等) |
青色申告で少額減価償却資産の特例を使う場合は、受け取って使い始めた年に12万円を全額経費にします。
毎月の請求は端末代と通信料に分ける
通信会社の請求書や利用明細には、端末代の分割分と通信料(基本料・データ通信料・通話料)が一緒に載っています。口座から引き落とされた金額をまとめて通信費にしてしまうと、端末代を二重に経費にすることになります。
| 請求の内訳 | 処理 |
|---|---|
| 端末代金の分割払い分 | 未払金の返済(経費ではない) |
| 基本料・データ通信料・通話料 | 通信費 |
| オプション(保証サービスなど) | 内容に応じて通信費・支払手数料など |
| 端末代の割引(月々の割引) | 契約の内容に応じて、取得価額や通信費から差し引く |
口座連携で記帳している場合は、この分け方を間違えやすいところです。口座連携・カード連携の記帳でよくある間違いもあわせてご覧ください。
「実質0円」「返却プログラム」は契約内容を確認する
「実質0円」「一定期間後に端末を返却すれば残りの支払いが不要」といったプログラムは、契約によって仕組みが異なります。値引きなのか、通信料からの割引なのか、返却すれば残りの支払いが免除されるのかで、処理の考え方が変わります。契約書や重要事項説明書で、端末の購入代金・割引・返却の条件を確認してから処理しましょう。判断が難しい場合は、個別の事情によって扱いが分かれるので、税理士に相談してください。
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オンライン記帳・申告サポートを見る私用と兼ねているなら按分する
個人事業主が1台のスマホを仕事と私用の両方に使っている場合は、本体代も通信料も、仕事に使う割合だけを経費にします(家事関連費、所得税法45条・同法施行令96条)。
| 使い方 | 経費にできる範囲 |
|---|---|
| 仕事専用の端末・回線 | 全額 |
| 仕事と私用の兼用 | 仕事に使う割合(通話の相手、利用時間、利用日数などで決める) |
| ほとんど私用 | 仕事で使った分だけ(経費にしないことも検討) |
注意したいのは、10万円・20万円・40万円の判定は、按分する前の購入代金で行うことです。15万円のスマホを仕事で6割使う場合、「経費になるのは9万円だから10万円未満」とはなりません。インターネット回線や光熱費の按分の考え方は自宅の電気代・ネット代の按分が参考になります。
契約事務手数料
携帯電話の契約時に払う事務手数料は、原則として電気通信施設利用権(耐用年数20年)の取得価額に含めるとされています。ただし10万円未満であれば、使い始めた年に全額を経費にできます(国税庁タックスアンサー No.5383)。通常の事務手数料であれば、その年の経費として処理できます。
消費税とインボイス
消費税の課税事業者が一般課税で申告している場合、分割払いで買ったスマホの仕入税額控除は、分割で払うたびにではなく、端末を受け取ったときに購入代金の全額で行うのが原則です(消費税法基本通達11-3-2)。
仕入税額控除を受けるには、端末代と通信料のそれぞれについて、インボイスの保存が必要です。通信会社の請求書や利用明細、Webで発行される領収書に登録番号や税率ごとの消費税額が載っているかを確認しましょう。インボイスの受け取り方はインボイスを受け取る側の注意点で解説しています。
ひとり会社でスマホを買う場合
| 項目 | 個人事業主 | ひとり会社 |
|---|---|---|
| 契約・購入の名義 | 本人名義 | 会社名義で契約・購入するのが基本 |
| 金額の判定 | 10万・20万・40万円(同じ基準) | 同左 |
| 私用の分 | 家事按分で経費から除く | 社長の私用が多いと、社長への給与(役員給与)とみられることがある |
| 社長個人名義のスマホ | ― | 業務で使った分の通信料を会社が精算する方法がある |
ひとり会社では、会社名義で契約して、会社の業務に使うのが分かりやすい方法です。社長個人の名義のスマホを仕事にも使っている場合は、業務で使った分の通信料を会社が精算する方法もありますが、精算の根拠(業務での利用割合や、利用明細)を残しておく必要があります。根拠のない支払いは、社長への給与とみられるおそれがあります。会社と社長のお金の線引きはひとり会社の役員貸付金・役員借入金もご覧ください。
アプリやクラウドサービスの月額料金の処理は、ソフトのサブスク・クラウドサービスの経費処理で解説しています。
まとめ
- 仕事に使うスマホ本体は経費になる。処理は本体の購入代金で決まる
- 10万円未満は一括、20万円未満は3年の一括償却。青色申告なら40万円未満(2026年3月31日までの取得は30万円未満)を一括で経費にする特例もある
- 分割払いでも判定は購入代金の総額。残りは未払金、毎月の請求は端末代と通信料に分ける
- 「実質0円」「返却プログラム」は、契約書で購入代金と割引・返却の条件を確認する
- 私用と兼ねるなら、本体代も通信料も仕事の割合だけを経費に。判定は按分前の金額で
- ひとり会社は会社名義での契約が基本。社長の私用が多いと役員給与とみられることがある
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