「会計ソフトはどれを選べばいいですか?」。開業したばかりの個人事業主や、会社を作ったばかりのひとり会社の経営者から、最初にいただくことが多いご質問です。
結論からお伝えすると、会計ソフト選びは、価格や知名度よりも「自分の取引の形に合っているか」で決めるのが失敗しない方法です。この記事では、特定の製品をすすめるのではなく、個人事業主とひとり会社が会計ソフトを選ぶときに確認すべき点を、国税庁の資料をもとに整理します。
- まず決めるのは「クラウド型かインストール型か」。口座・カード連携やスマホでの入力、税理士との共有を重視するならクラウド型が使いやすい
- 確認すべきは、①使っている口座・カードと連携できるか、②電子帳簿保存法・インボイスへの対応、③申告書まで作れるか、④税理士とデータを共有できるか
- 個人事業主は青色申告決算書とe-Tax、ひとり会社は法人税等の申告と決算書類に対応しているかを見る
- JIIMA認証のソフトでも、設定と届出がなければ「優良な電子帳簿」にはならない
- 乗り換えは、個人なら1月1日、法人なら期首が現実的
まず決めること:クラウド型かインストール型か
会計ソフトは、大きく分けて次の2種類があります。
| 項目 | クラウド型 | インストール型 |
|---|---|---|
| 使い方 | ブラウザやアプリからインターネット経由で使う | パソコンにソフトを入れて使う |
| 料金の形 | 月額・年額の利用料が多い | 購入時の料金+保守・更新の料金が多い |
| 口座・カードの明細の取込み | 自動で取り込める製品が多い | 製品やオプションによる |
| スマホでの入力・レシート撮影 | 対応している製品が多い | 限られることが多い |
| 税理士とのデータ共有 | 同じデータを同時に見られる | データの受け渡しが必要なことが多い |
| 法令改正への対応 | 自動で更新される | 更新版の導入が必要なことがある |
| 注意点 | ネット環境が必要。利用をやめるとデータを見られなくなる場合がある | パソコンの故障に備えたバックアップが必要 |
取引の多くが銀行振込やカード払いで、スマホでも入力したい方、税理士にチェックしてもらう予定の方は、クラウド型のほうが手間が少ないことが多いでしょう。一方、パソコン1台で完結させたい方や、すでに使い慣れたソフトがある方は、インストール型でも問題ありません。
自動化がどこまでできるかは、AIとクラウド会計で記帳はどこまで自動化できる?で詳しく解説しています。
選ぶときに確認する4つのポイント
1. 使っている口座・カードと連携できるか
記帳の手間を一番左右するのが、明細の自動取込みです。メインで使う銀行口座、事業用のクレジットカード、決済サービスなどが連携の対象になっているかを、申し込む前に確認しましょう。連携できない口座が多いと、結局は手入力になります。
あわせて、事業用の口座とカードを分けておくと、取り込まれた明細のほとんどが事業の取引になり、確認が楽になります(個人事業主は事業用の口座とカードを分けるべき?)。ただし、連携した明細の記帳にもよくある間違いがあります。こちらは口座連携・カード連携の記帳でよくある間違いでまとめています。
2. 電子帳簿保存法・インボイスに対応しているか
メールやWebで受け取った請求書・領収書のデータは、データのまま保存する義務があります(電子帳簿保存法の基本)。会計ソフトに証憑を保存する機能があるか、その機能が電子取引データの保存のルールに沿っているかを確認します。
消費税の課税事業者になっている方は、インボイスの登録番号の有無や、経過措置の対象になる仕入れを区分して記帳できるかも大切です。
3. 申告書まで作れるか
個人事業主と法人では、会計ソフトに求めるものが違います。
- 個人事業主:青色申告決算書(または収支内訳書)と確定申告書を作り、e-Taxで送信できるか。青色申告特別控除65万円は、e-Taxでの申告か優良な電子帳簿の保存が要件のひとつで、2027年分(令和9年分)以後はe-Taxでの申告が65万円・75万円の前提になります(青色申告特別控除65万円の要件)
- ひとり会社:貸借対照表・損益計算書に加えて、株主資本等変動計算書などの決算書類を作れるか。法人税・地方税の申告書の作成まで対応しているかは製品によって異なるため、自分で申告するのか、税理士に頼むのかとあわせて考える
4. 税理士とデータを共有できるか
決算や申告を税理士に頼む予定がある場合は、その税理士が対応しているソフトかどうかを先に確認するのが近道です。同じクラウドのデータを共有できれば、データの受け渡しや入力のやり直しがなくなり、質問もすぐにできます。
AIを活用した記帳で、日々の経理から決算・確定申告までをまとめてお引き受けします。訪問なしのオンライン完結で、困ったときはチャットでいつでも質問できます。
オンライン記帳・申告サポートを見る個人事業主とひとり会社で見るべき点の違い
| 確認する点 | 個人事業主 | ひとり会社(法人) |
|---|---|---|
| プラン | 個人事業主向け | 法人向け(個人向けプランでは法人の決算に対応できないことが多い) |
| 作る決算書類 | 青色申告決算書(白色は収支内訳書) | 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書など |
| 申告 | 所得税・消費税の確定申告(e-Tax) | 法人税・地方税・消費税の申告 |
| よく使う科目・機能 | 事業主貸・事業主借、家事按分 | 役員報酬、役員貸付金・借入金、源泉所得税の管理 |
| 給与の機能 | 専従者給与や従業員がいれば必要 | 役員報酬の源泉徴収・年末調整に必要(給与ソフトとの連携も確認) |
| 帳簿の保存期間 | 帳簿・決算関係書類は7年(青色申告) | 原則7年。青色欠損金が生じた年度は10年 |
保存期間は国税庁の資料によるもので、青色申告の個人事業主は、帳簿と決算関係書類が7年、請求書・見積書・契約書などは5年(現金預金取引等関係書類は原則7年で、前々年分の事業所得と不動産所得の合計が300万円以下なら5年)とされています。法人は、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間で、青色繰越欠損金が生じた事業年度は10年間です。クラウド型のソフトをやめた後もデータを確認できるか(書き出しができるか)は、この保存期間との関係でも大切です。
電子帳簿保存法との関係:JIIMA認証だけでは足りない
会計ソフトを比べていると「JIIMA認証」「電子帳簿保存法対応」という表示をよく見かけます。国税庁は、市販のソフトが電子帳簿保存法の機能の要件を満たしているかを確認する方法として、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証を紹介しています。
ただし、次の点に注意してください。
- 設定の確認が必要:国税庁の一問一答では、JIIMA認証を受けたソフトでも、初期設定が要件を満たす設定になっていない場合や、設定変更で要件を満たさなくなる場合があるとして、マニュアルなどで確認することが望ましいとしている
- 機能以外の要件もある:優良な電子帳簿には、システム関係書類の備付けなど、ソフトの機能以外の要件もある
- 届出が必要:優良な電子帳簿として過少申告加算税の5%軽減を受けるには、あらかじめ届出書を出す必要がある(個人の場合、その年分の所得税の法定申告期限まで)。しかも、その年の初めから要件を満たして保存していることが前提
つまり、「認証マークのあるソフトを使っている」だけでは、優良な電子帳簿の優遇は受けられません。優遇を受けたい場合は、設定・書類・届出までセットで準備します。
乗り換えのタイミングと、よくある失敗
乗り換えは区切りのいい時期に
会計ソフトはいつでも乗り換えられますが、年の途中や期の途中で切り替えると、帳簿が2つのソフトに分かれ、決算のときに合算や残高の確認が必要になります。個人事業主は1月1日、法人は期首から新しいソフトを使い始め、前年(前期)末の残高を開始残高として入力するのが、最も間違いが少ない方法です。
よくある失敗
| 失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 料金だけで選んだ | 使っている銀行と連携できず、手入力が続く | 申込み前に連携できる金融機関を確認する |
| 個人向けプランのまま法人を設立した | 法人の決算書類・申告に対応できない | 法人設立時に法人向けのプラン・データを別に用意する |
| 税理士が使っていないソフトを選んだ | データの変換や入力のやり直しが発生する | 依頼予定の税理士に対応ソフトを先に聞く |
| 解約後にデータを残していない | 税務調査で過去の帳簿を見せられない | 解約前に帳簿・証憑のデータを書き出して保存する |
| 自動登録のルールを見直さない | 誤った科目が毎月繰り返される | 月1回は取り込まれた仕訳と残高を確認する |
法人成りをすると、個人の帳簿と法人の帳簿は別のものになります。個人事業のデータに法人の取引を続けて入力するのは誤りです。法人成りの判断は法人成りのメリット・デメリットもご覧ください。
まとめ
- 会計ソフトは、価格や知名度より自分の取引の形に合っているかで選ぶ
- 確認するのは、口座・カード連携、電子帳簿保存法・インボイス対応、申告書まで作れるか、税理士との共有の4つ
- 個人事業主は青色申告決算書とe-Tax、ひとり会社は法人の決算書類と申告への対応を確認する
- JIIMA認証のソフトでも、設定・書類・届出がなければ優良な電子帳簿にはならない
- 乗り換えは、個人なら1月1日、法人なら期首から。解約前にデータを書き出して保存する
記帳を自分で続けるか、任せるかで迷っている方は、記帳は自分でやるか、税理士に頼むかも参考にしてください。
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