記帳・帳簿

電子帳簿保存法の基本:個人事業主とひとり会社が最低限やるべきこと

「電子帳簿保存法に対応しないといけないと聞いたけれど、何をすればいいのか分からない」。個人事業主やひとり会社の経営者の方から、今もよくいただく相談です。

電子帳簿保存法には3つの制度がありますが、全員に義務があるのは1つだけです。それが、メールやWebで受け取った(または送った)請求書・領収書などのデータを、データのまま保存することです。この記事では、小さな事業者が最低限やるべきことと、任意で選べる制度の違いを整理します。

この記事の結論
  • 電子帳簿保存法は3つの制度。義務は「電子取引データの保存」だけで、帳簿の電子保存とスキャナ保存は任意
  • 電子取引データは、改ざん防止の措置と、ディスプレイ等の備付け・検索できる状態で保存する
  • 基準期間の売上高が5,000万円以下の方などは、調査でのダウンロードの求めに応じられれば検索要件は不要
  • ルールに対応できない相当の理由があれば、データの保存+ダウンロードと印刷書面の提示に応じられることで猶予措置がある
  • 優良な電子帳簿は任意だが、過少申告加算税の5%軽減や青色申告特別控除の優遇につながる

電子帳簿保存法の3つの制度

国税庁の説明によると、電子帳簿等保存制度は次の3つに分かれます。

制度内容義務か任意か
電子取引データの保存メール・Web・クラウドなどでやりとりした請求書・領収書・契約書・見積書などのデータを、データのまま保存する義務(所得税・法人税の帳簿書類の保存義務がある全員)
電子帳簿等保存会計ソフトなどで最初から一貫して作成した帳簿・書類を、データのまま保存する任意
スキャナ保存紙で受け取った領収書などを、スキャナやスマホで読み取ったデータで保存する任意

個人事業主も法人も、規模にかかわらず電子取引データの保存は必要です。令和5年12月31日までの電子取引は、印刷して保存しておけば差し支えないとされていましたが、令和6年1月以降の電子取引は、データのままの保存が求められています。

電子取引にあたるもの

書面でやりとりしていれば保存が必要な書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)に相当するデータを、電子で受け取ったり送ったりした場合が対象です。たとえば次のようなものです。

  • メールに添付されたPDFの請求書・領収書
  • ネット通販やWebサービスのサイトからダウンロードした領収書
  • クラウドの請求書サービスで受け取った請求書
  • 電子契約サービスで締結した契約書
  • キャッシュレス決済の利用明細データ(取引の内容が分かるもの)

電子取引データの保存ルール

国税庁のリーフレット(令和6年11月)では、原則的な保存ルールを3つにまとめています。

1. 改ざん防止の措置

次のいずれかを行います。

  • タイムスタンプが付与されたデータを受け取る
  • 受け取ったデータにタイムスタンプを付ける
  • 訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムでやりとり・保存する
  • 改ざん防止のための事務処理規程を作って運用し、備え付ける

専用のシステムを入れなくても、事務処理規程で対応できます。国税庁のホームページに規程のサンプルが掲載されています。

2. ディスプレイやプリンタの備付け

保存したデータを画面や紙で確認できるようにしておきます。

3. 「日付・金額・取引先」で検索できること

検索といっても、専用のソフトは必須ではありません。国税庁は、次のような簡易な方法も示しています。

  • 表計算ソフトで索引簿(連番・日付・金額・取引先の一覧)を作り、そこから探せるようにする
  • ファイル名を規則的にする(例:「20261015_55000_株式会社〇〇」)、特定のフォルダにまとめる

小規模な事業者は検索要件が不要

基準期間(個人は2年前、法人は2期前)の売上高が5,000万円以下の方などは、税務調査の際に電子取引データのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、3の検索要件を満たす必要はありません。多くの個人事業主・ひとり会社はこれに当てはまります。ただし、1の改ざん防止と2の備付けは必要です。

対応が間に合わない場合の猶予措置

原則的なルールへの対応が間に合わない場合でも、次の両方を満たせば、電子取引データを保存しておくだけで差し支えないとされています。

  • 原則的なルールに従って保存できなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合
  • 税務調査の際に、データのダウンロードの求めと、データを印刷した書面の提示・提出の求めに、それぞれ応じられるようにしている場合

事前の届出は不要で、国税庁は「人手不足」「システム整備の資金不足」「システム整備が間に合わない」なども相当の理由として認められるとしています。いずれにしても、データを消さずに残しておくことが出発点です。

なお、電子取引データに関連して隠蔽・仮装行為があった場合、重加算税が10%加重される仕組みがあります。データの改ざんや削除は絶対にしないでください。

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任意の制度:帳簿の電子保存とスキャナ保存

優良な電子帳簿

会計ソフトで作った仕訳帳・総勘定元帳などを、訂正・削除・追加の履歴が残る、帳簿どうしの関連が確認できる、日付・金額・相手方で検索できる、などの要件を満たして保存し、届出書を法定申告期限までに提出すると、次の優遇があります(国税庁の資料による)。

  • その帳簿に記録された事項に関して申告漏れがあった場合の過少申告加算税の5%軽減
  • 個人の青色申告特別控除:2026年分(令和8年分)までは65万円の要件のひとつ。2027年分(令和9年分)以後は、e-Taxでの申告とあわせて75万円の要件のひとつ

多くの市販の会計ソフトは、JIIMAの認証(国税庁が要件適合性の確認方法として紹介しているもの)を受けています。ただし、機能のほかにシステムの説明書やディスプレイの備付けなども要件です。控除の要件は青色申告特別控除65万円の要件にまとめています。

スキャナ保存

紙のレシートを撮影して、紙を捨てたい場合に使う制度です。入力の期限、解像度、タイムスタンプなどの要件があり、要件を満たさないと紙の保存が必要になります。くわしくはレシートは必ず残さないといけない?スマホ撮影・スキャナ保存のルールをご覧ください。

個人事業主・ひとり会社がやることチェックリスト

やること個人事業主ひとり会社
電子で受け取った請求書・領収書をデータのまま保存必須必須
改ざん防止の措置(事務処理規程でも可)必須必須
ファイル名のルールか索引簿で「日付・金額・取引先」を整理売上5,000万円以下なら不要(ダウンロードに応じられることが条件)。整理しておくと便利同左(基準期間は2期前)
帳簿書類の保存期間原則7年(書類により5年)原則7年(欠損金の年度は10年)
優良な電子帳簿任意(加算税軽減・控除の優遇)任意(加算税軽減)

不動産賃貸業での具体例(管理会社のPDF明細や電子契約など)は、電子帳簿保存法と不動産業でも解説しています。

まとめ

  • 電子帳簿保存法で義務があるのは、電子取引データをデータのまま保存することだけ
  • 改ざん防止(事務処理規程でも可)、ディスプレイ等の備付け、検索できる状態が原則のルール
  • 売上高5,000万円以下ならダウンロードに応じられれば検索要件は不要。間に合わない場合の猶予措置もある
  • 優良な電子帳簿は任意だが、過少申告加算税の5%軽減や青色申告特別控除の優遇がある

電子取引データの保存や会計ソフトの設定に不安がある方は、クレフティのオンライン記帳・申告サポートにご相談ください。月額5,000円程度から(取引量や申告の内容で変わります)、記帳から申告まで、電子帳簿保存法に沿った資料の管理方法もあわせてご案内します。

よくある質問

メールで届いたPDFの請求書を印刷して保存していれば大丈夫ですか?
原則として、電子で受け取った請求書などは、電子データのまま保存する必要があります。印刷した紙だけの保存は、原則的なルールに対応できなかったことについて相当の理由があり、税務調査の際にデータのダウンロードと印刷した書面の提示・提出に応じられる場合の猶予措置として認められているものです。まずはデータを消さずに保存しておくことが大切です。
売上の少ない個人事業主でも、検索できるように整理する必要がありますか?
基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の方などは、税務調査の際に電子取引データのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件を満たす必要はありません。ただし、改ざん防止の措置と、データを確認できるディスプレイなどの備付けは必要です。
会計ソフトで作った帳簿は、電子データのまま保存してもいいですか?
最初から一貫してパソコンなどで作成している帳簿は、一定の要件を満たせば電子データのまま保存できます。さらに訂正・削除の履歴が残るなどの「優良な電子帳簿」の要件を満たし、届出書を出すと、過少申告加算税の5%軽減などの優遇があります。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
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