ホールディングス(HD)化を検討するとき、設立の費用は気にしても、毎年かかる維持コストは見落とされがちです。会社が1つ増えれば、均等割、会計・申告、登記などの費用が毎年発生します。複数の子会社を持つグループなら、その分だけ増えます。
この記事では、HDの維持コストの内訳、均等割が思ったより高くなる仕組み、費用をまかなう収入の設計、銀行からの見え方を整理します。設立の費用と期間はHD化にかかる費用と期間で取り上げています。
- HDの維持コストは、均等割・会計と申告・登記・決算公告・社会保険など。赤字でも均等割はかかる
- 均等割は、資本金等の額と資本金+資本準備金の大きいほうと、従業者数で決まる
- 株式移転のHDは、株主の株式の取得価額によって資本金等の額が大きくなり、均等割が上がることがある(法人税法施行令119条1項12号)
- 費用は配当・経営指導料・賃料でまかなう。配当だけでは税務上の赤字が続く
- 経営指導料を受け取るHDは消費税の課税事業者になりうる。子会社の仕入税額控除のためインボイスの登録も検討する
HDの維持コストの内訳
| 費用 | 内容 | 目安・根拠 |
|---|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 所得に関係なく毎年かかる | 東京23区内のみ・資本金等1,000万円以下・従業者50人以下で年7万円 |
| 会計・申告の費用 | 決算書と法人税・地方税・消費税の申告 | 顧問の税理士の報酬。会社の規模と取引の量で変わる |
| 役員変更の登記 | 役員の任期ごとの変更登記 | 登録免許税は資本金1億円以下なら1件1万円+司法書士報酬 |
| 決算公告 | 貸借対照表(またはその要旨)の公告 | 会社法440条。官報や電子公告の費用 |
| 社会保険 | HDから役員報酬を払う場合 | 健康保険・厚生年金保険の会社負担分 |
| 事務・管理 | 株主総会の議事録、銀行口座、契約管理 | 社内の担当者の手間 |
税理士報酬・登記の手間・均等割を合わせると、1社あたり年数十万円程度になることが多く、事業の実態のない会社を増やすほど負担は重くなります。
均等割が高くなる仕組み
均等割の決まり方
法人住民税の均等割は、事務所のある都道府県と市町村ごとに、資本金等の額と従業者数で区分が決まります。資本金等の額は、税務上の資本金等の額と、資本金と資本準備金の合計額のうち、大きいほうで判定します。東京23区内だけに事務所がある場合は、都民税と市町村民税相当分を合わせて都税事務所に納めます(東京都主税局)。
株式移転のHDは、資本金等の額が大きくなりやすい
株式移転でHDを作ると、HDは子会社の株式を受け入れ、その分だけ資本金等の額が増えます。登記上の資本金は小さく設定できても、税務上の資本金等の額は、受け入れた子会社株式の取得価額で決まります。
| 株式移転の直前の子会社の株主数 | HDが受け入れる子会社株式の取得価額 |
|---|---|
| 50人未満 | 株主が持っていた子会社株式の取得価額(個人なら取得価額)の合計 |
| 50人以上 | 子会社の前事業年度末の簿価純資産に相当する額 |
(法人税法施行令119条1項12号、適格株式移転の場合)
オーナーが設立時に出資しただけなら、取得価額は小さく、均等割への影響もわずかです。一方、過去に他の株主から高い価格で株式を買い集めている場合は、その取得価額がHDの資本金等の額に反映され、均等割の区分が上がることがあります。HDの資本金の決め方はHDの社名・資本金・役員構成の決め方で取り上げています。
費用をまかなう収入の設計
HDの費用をどの収入でまかなうかは、税務と資金繰りの両方に関わります。
| 収入 | HDでの税務 | 子会社での税務 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 配当 | 全額益金不算入(完全子法人株式等) | 損金不算入 | 分配可能額の範囲内 |
| 経営指導料・業務委託料 | 益金。消費税の課税売上 | 損金。仕入税額控除の対象 | 業務の実態と金額の根拠 |
| 不動産の賃料 | 益金。住宅以外は消費税の課税売上 | 損金 | 相場に見合った家賃 |
配当は税務上の所得にならないため、配当だけを収入にしてHDの費用を払うと、HDは税務上毎年赤字になり、欠損金が積み上がるだけになります。HDが実際に管理業務を担っているなら、その対価を経営指導料として受け取り、HDの費用をまかなう形が自然です。金額の決め方と注意点はHDが子会社から受け取る経営指導料で解説しています。
消費税とインボイス
HDが経営指導料や賃料を受け取ると、HDの課税売上になります。課税売上高が1,000万円を超えれば、2年後から消費税の課税事業者になります。また、子会社がHDに払う経営指導料について仕入税額控除を受けるには、HDが適格請求書発行事業者として登録し、インボイスを発行する必要があります。課税売上が1,000万円以下でも、グループ全体で見ると登録したほうが有利なことが多くなります。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見る維持コストを抑える工夫
- 会社の数を必要最小限にする:事業の実態のない会社や、役目を終えた会社は、合併や清算で整理する(複数の法人を合併で整理する)
- 決算期をそろえる:グループで決算期が同じなら、決算・申告の作業をまとめられる
- 管理部門をHDに集める:経理・総務をHDで一括して処理する
- 本店の所在地を工夫する:同じ市区町村内に事務所をまとめれば、均等割の対象となる地域を増やさずにすむ
- 電子申告・電子公告を使う:申告と公告の事務を軽くする
銀行からの見え方
HDの決算書では、子会社からの配当や経営指導料を営業収益として表示するのが一般的です。配当は会計上の収益なので、HDの決算書の上では利益が出ますが、税務上は所得になりません。銀行はHDの決算書を単体で見るだけでなく、グループ内の配当や経営指導料を相殺して、グループ全体で見ます。
代表の相亰の著書のモデルでは、債務償還年数((借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等))を10年以内に保つのが健全の目安です。HDの維持コストは一社ごとには小さくても、会社の数が増えるほどグループの経常利益を削ります。維持コストを上回る効果があるかを、HD化の前に確認しておきます。会社の規模からみてHD化が見合うかは年商数億円の中小企業でもHD化は意味がある?をご覧ください。
まとめ
- HDには均等割・会計と申告・登記・決算公告・社会保険などの維持コストが毎年かかる
- 均等割は赤字でもかかる。資本金等の額と従業者数で区分が決まる
- 株式移転のHDは、株主の取得価額によって資本金等の額が大きくなることがある
- 費用は配当・経営指導料・賃料でまかなう。配当だけでは税務上の赤字が続く
- 経営指導料を受け取るなら、消費税とインボイスの扱いを決めておく
HDの維持コストは、HD化の効果と比べて判断するものです。クレフティの事業承継・M&A支援では、HD化の前に維持コストと効果を試算し、グループの収入と費用の設計までご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士やコンサルタントが対応します。
