「HDを作れば、子会社からの配当に税金がかからない」。ホールディングス(HD)化のメリットとしてよく挙げられる点です。これは受取配当等の益金不算入という制度によるもので、HDが子会社の株式を100%持っていれば、受け取った配当は原則として全額が法人税の課税対象から外れます。
ただし、「100%持っていれば何でも全額」ではありません。株式の区分ごとの判定期間、HD化した年の配当、子会社株式の簿価の特例など、確認すべき点があります。この記事では、法人税法23条と施行令の条文に沿って整理します。
- 受取配当等の益金不算入は、株式を4つの区分に分けて割合が決まる。100%子会社は完全子法人株式等として全額、負債利子の控除もない(法人税法23条1項・5項)
- 完全子法人株式等の要件は、配当の計算期間を通じて完全支配関係があること(施行令22条の2)
- HD化した年でも、オーナーなどが計算期間の初日から子会社を完全支配していれば、完全子法人株式等として扱われる(同条1項かっこ書き)
- 令和5年10月1日以後の完全子法人株式等の配当は、源泉徴収が不要(所得税法177条・212条3項)
- 子会社の株式を取得した直後に多額の配当を受けると、子会社株式の簿価が減額される特例がある(施行令119条の3第10項)
- 子会社では配当は損金にならない。銀行は、配当で子会社の純資産と現預金が減ることを見る
受取配当等の益金不算入の仕組み
法人が他の法人から配当を受けたとき、配当を出した法人の段階ですでに法人税が課されているため、受け取った法人でもう一度課税すると二重課税になります。そこで、受け取った配当の全部または一部を益金に算入しない、というのが受取配当等の益金不算入です(法人税法23条)。
ここで注意したいのは、HDで課税されないのはグループ内にお金があるうちだということです。HDからオーナー個人に配当すれば、そこで個人の配当所得として課税されます。HDの益金不算入は「税金がなくなる」制度ではなく、グループ内で資金を動かすときに課税されない制度と理解しておきます。
株式等の4つの区分
益金不算入の割合は、配当を出す会社の株式をどれだけ、どの期間持っているかで決まります。
| 区分 | 保有割合 | 判定の期間・時点 | 益金不算入の額 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 完全子法人株式等 | 100%(完全支配関係) | 配当の計算期間を通じて | 全額(負債利子の控除なし) | 法23条5項、令22条の2 |
| 関連法人株式等 | 3分の1超 | 原則、基準日以前6か月以前から引き続き | 配当の額から利子相当額を引いた額 | 法23条4項、令22条・19条 |
| その他の株式等 | 5%超3分の1以下など | ― | 50% | 法23条1項 |
| 非支配目的株式等 | 5%以下 | 配当の基準日 | 20% | 法23条6項、令22条の3 |
関連法人株式等の利子相当額は、原則として配当の額の4%です。ただし、その事業年度の支払利子の合計額の10%のほうが小さければ、その額を上限として配分します(施行令19条1項・2項)。完全子法人株式等には、この控除がありません。
「計算期間」とは、前回の配当の基準日の翌日から今回の配当の基準日までの期間です。前回の基準日から1年を超えていれば、今回の基準日の1年前の日の翌日からになります(施行令22条の2第2項)。
完全子法人株式等の要件と、HD化した年の配当
原則:計算期間を通じて完全支配関係
完全子法人株式等は、配当の計算期間の初日から末日まで、継続してHDと子会社の間に完全支配関係がある場合の株式です(施行令22条の2第1項)。HDが子会社の発行済株式を100%持っていれば、完全支配関係があります。
HD化した年でも全額になる場合
株式移転でHDを作った年は、計算期間の途中からしかHDが株式を持っていません。このため「HD化した年の配当は全額益金不算入にならない」と言われることがあります。
しかし、施行令22条の2第1項のかっこ書きは、計算期間の途中で完全支配関係ができた場合でも、次の2つを満たせば完全子法人株式等に含めるとしています。
- 計算期間の初日から完全支配関係ができた日まで、子会社が他の者による完全支配関係の下にあった
- その日から計算期間の末日まで、HDと子会社の両方が同じ他の者に完全支配されていた
オーナー(とその親族)が株式移転の前から事業会社の株式を100%持ち、株式移転でHDの株式を100%受け取るケースは、この形に当たると考えられます。国税庁の別表八(一)の記載要領でも、この場合を完全子法人株式等に含めることが説明されています。
一方、次のような場合は当たらないことがあります。
| ケース | 扱いの見通し |
|---|---|
| 外部の株主が残っていて、HDが期中にその株式を買い取って100%にした | 計算期間の初日から「他の者による完全支配関係」がないため、完全子法人株式等に当たらない |
| 第三者の会社をHDが買収した直後に配当を受けた | 同上。関連法人株式等の6か月の要件も満たさず、その他の株式等(50%)になりうる |
| 後継者のHDが、親族のオーナーから株式を買い取った | 親族を含めて「一の者」と判定する規定(施行令4条の2)との関係を個別に確認する |
HD化の直後に配当を予定しているなら、配当の基準日と計算期間を確認し、当てはまらないなら配当の時期をずらすのが安全です。
その他の注意点
源泉徴収は不要に
令和5年10月1日以後に支払う配当のうち、完全子法人株式等に係る配当と、基準日に発行済株式等の3分の1超を直接保有する株式等に係る配当は、一定の内国法人が受けるものであれば所得税が課されず、源泉徴収も不要です(所得税法177条・212条3項)。子会社の経理で、従来どおり源泉徴収をしてしまわないよう注意します。
短期保有と自己株式の取得
配当の基準日以前1か月以内に取得し、基準日後2か月以内に譲渡した株式の配当は、益金不算入の対象になりません(法人税法23条2項)。また、自己株式として取得されることが予定されている株式を取得した場合のみなし配当も対象外です(同条3項)。
子会社株式の簿価減額の特例
子会社の株式を取得した後、取得前に貯まっていた利益を配当で受け取り、そのうえで株式を売って譲渡損を出す。こうした取引を防ぐため、50%超の支配関係(特定支配関係)がある子会社から、株式の帳簿価額の10%を超える配当を受けたときは、益金不算入の額だけ子会社株式の帳簿価額を減らす特例があります(施行令119条の3第10項)。
ただし、次のいずれかに当たれば適用されません。
| 適用除外 | 内容 |
|---|---|
| 内国株主割合 | 子会社の設立から特定支配関係ができた日まで、内国の普通法人や居住者などが発行済株式の90%以上を持っていた |
| 特定支配後の利益 | 配当が、特定支配関係ができた後に増えた利益剰余金の範囲内 |
| 10年超 | 特定支配関係ができた日から10年を超えている |
| 少額 | その事業年度の配当の合計額が2,000万円以下 |
日本の同族会社をHD化した場合は、内国株主割合の除外に当たることが多いですが、外国の株主がいた会社や、M&Aで買った会社では確認が必要です。M&Aと配当の関係は売却前の配当でも取り上げています。
申告書への記載が条件
益金不算入は、確定申告書などに別表八(一)を添付し、金額と計算の明細を記載した場合に限り適用されます(法人税法23条7項)。法人税基本通達の取扱いは国税庁の受取配当等の益金不算入の通達で確認できます。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見る子会社の側で確認すること
配当を出す子会社の側では、配当は損金になりません。子会社の法人税は通常どおりかかったうえで、税引後の利益から配当します。
会社法上は、配当できる金額は分配可能額の範囲内に限られ(会社法461条)、配当のたびに、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで、配当額の10分の1を準備金として積み立てます(445条4項)。
銀行からの見え方
HDが株式の買取資金などを借りて、子会社の配当で返済する形はよく使われます。銀行はこの場合、子会社が毎年、返済に必要な配当を出せるかと、配当を出した後も子会社の財務が保てるかを見ます。
| 銀行が見る点 | 確認すること |
|---|---|
| 返済原資 | 子会社の税引後利益で、毎年の返済額を配当できるか |
| 子会社の財務 | 配当の後も自己資本比率・現預金が保てるか、子会社の借入の返済に響かないか |
| グループ全体 | HDの借入を加えた債務償還年数 |
代表の相亰の著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)」で計算し、10年以内を健全としています。配当を返済原資にする融資の注意点は配当で返済する融資の注意点、HDが株式を買い取る資金の融資はHDが株式を買い取る資金の融資で解説しています。
HDに現預金が貯まると、HDの総資産に占める株式等の割合が下がり、株式等保有特定会社の判定にも影響します(株式保有特定会社に注意)。配当の水準は、返済計画と株価の両方から決めます。
まとめ
- 100%子会社の株式は完全子法人株式等。配当は全額益金不算入で、負債利子の控除もない
- 要件は配当の計算期間を通じた完全支配関係。HD化した年でも、オーナーが通しで完全支配していれば当たりうる
- 外部の株主から買い集めた直後や、M&Aの直後の配当は、区分が下がることがある
- 令和5年10月1日以後は、完全子法人株式等の配当の源泉徴収は不要
- 取得直後の多額の配当は、子会社株式の簿価減額の特例に注意
- 銀行は、配当で子会社の財務が弱くならないかを見る
受取配当等の益金不算入は、HDの資金計画の土台になる制度です。クレフティの事業承継・M&A支援では、HD化の時期と配当の時期の設計、返済計画、金融機関への説明までご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士やコンサルタントが対応します。
