HD化の費用と期間は、どの方法でHDを作るかで大きく変わります。株式移転ならお金はほとんど動きませんが、会社分割で不動産を移せば登録免許税がかかり、株式譲渡ならオーナーの税金とHDの借入が生じます。また、HDを作った後も、会社が1つ増える分の維持コストが毎年かかります。
この記事では、方法別の一時的な費用、毎年の維持コスト、標準的なスケジュールと遅れやすい工程を整理します。方法そのものの比較はHDの作り方の全体像をご覧ください。
- 株式移転の税金は、HD設立の登録免許税(資本金の0.7%、最低15万円)が中心。定款の認証は不要
- 会社分割で不動産を移すと、登録免許税(評価額の2%)が重い。不動産取得税は要件を満たせば非課税
- 株式譲渡は、オーナーの譲渡所得税(20.315%)とHDの借入の金利が実質的なコスト
- 毎年の維持コストは、均等割(標準で年7万円〜)、決算・申告、登記など。会社が増えるほど増える
- 期間は株式移転で2〜3か月、会社分割で3〜6か月。株価試算と金融機関への説明から逆算する
方法別の一時的な費用
| 費用 | 株式移転 | 株式交換 | 株式譲渡(新設HDが買取り) | 会社分割(分社型) |
|---|---|---|---|---|
| 会社の登録免許税 | HD設立:資本金の0.7%(最低15万円) | 親会社の資本金が増えれば増加額の0.7%(最低3万円) | HD設立:資本金の0.7%(最低15万円) | 新設分割による設立:資本金の0.7%(最低3万円) |
| 定款の認証 | 不要 | 不要(新設なし) | 必要(通常の設立) | 不要 |
| 不動産の税金 | なし | なし | なし | 登録免許税2%。不動産取得税は要件を満たせば非課税 |
| 公告 | 株券発行会社のみ株券提出公告 | 同左。金銭を交付するなら債権者保護の公告 | なし | 債権者保護の官報公告と個別催告 |
| 株主の税金 | 要件を満たせばなし | 要件を満たせばなし | オーナーに譲渡所得20.315% | なし |
| その他 | 株価算定、計画書・議事録の作成 | 株価・交換比率の算定、契約書 | 株価算定、融資の手数料・金利 | 分割計画、労働契約承継の手続き、許認可の取り直し |
登録免許税の税率は、登録免許税法別表第一と国税庁タックスアンサー No.7191(登録免許税の税額表)によります。株式移転によるHDの設立は、合併や分割による設立のような特別な税率がなく、通常の株式会社の設立と同じ資本金の1,000分の7(最低15万円)です。HDの資本金を小さく設定すれば、最低額に収まることが多いでしょう。
株式移転・会社分割で設立する会社の定款は、元の会社が作るため公証人の認証は不要です(会社法814条)。一方、後継者などが出資して新しくHDを作る株式譲渡の方法では、通常の設立として定款の認証が必要です。
専門家の報酬
HD化では、次のような専門家の関与が必要になります。報酬は会社の規模、株主の数、方法、不動産の有無などで大きく変わるため、最初に見積りを取り、何が含まれるかを確認します。
- 公認会計士・税理士:株価の算定(相続税評価・所得税法上の時価)、適格要件の確認、HD化前後の株価の試算、申告・届出
- 司法書士:登記申請、議事録・計画書などの作成支援、不動産の移転登記
- 弁護士:少数株主への対応、契約の見直し、労働契約の承継
- 社会保険労務士・行政書士:従業員の移籍の手続き、許認可の確認と申請
毎年の維持コスト
HDは、作って終わりではありません。会社が1つ増える分、次の費用が毎年かかります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 資本金等の額と従業者数で決まる。標準税率では、資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下で年7万円(道府県民税2万円+市町村民税5万円。地方税法52条・312条)、1,000万円超1億円以下・50人以下で年18万円 |
| 決算・税務申告 | HDの決算、法人税・地方税の申告、グループ会社間の取引の整理 |
| 登記 | 役員の任期ごとの変更登記(資本金1億円以下の会社は1件1万円) |
| 会社間の管理 | 経営指導料・賃貸借・貸付などの契約書、取締役会や株主総会の議事録 |
株式移転・株式交換では、HDや親会社の資本金等の額が、旧株主の株式の取得価額や子会社の簿価純資産をもとに決まります。株主が多い会社などでは資本金等の額が大きくなり、均等割の区分が上がることがあるため、事前に試算します。維持コストの全体はHDの維持コストで詳しく取り上げます。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見る標準的なスケジュール
| 方法 | 期間の目安 | 時間がかかる工程 |
|---|---|---|
| 株式移転 | 2〜3か月 | 株価試算、株主への説明、株券提出公告(株券発行会社) |
| 株式交換 | 2〜3か月 | 交換比率の算定、両社の株主総会 |
| 株式譲渡(新設HDが買取り) | 2〜4か月 | 株価算定、融資の審査、HDの設立と口座開設 |
| 会社分割 | 3〜6か月 | 債権者保護手続(1か月以上)、労働契約承継の手続き、許認可の承継・取り直し |
遅れやすい工程
- 株価の試算:HD化の前後で株価がどう変わるか、所得税法上の時価はいくらかを先に固めないと、方法も価格も決まりません
- 金融機関への説明:借入の契約に株主変更の条項がある場合、承諾に時間がかかります。株式譲渡では融資の審査期間も必要です
- 許認可:会社分割で事業を移す場合、許認可の承継や新規取得に数か月以上かかることがあります
- 決算期との関係:効力発生日を決算期末の前後どちらにするかで、申告や配当の時期が変わります。HDが受け取る最初の配当が全額益金不算入になるかも、基準日との関係で確認します
費用と効果を比べる
HD化の費用は、効果と比べて判断します。たとえば、事業会社の評価額が毎年増えていく会社なら、HD化後の値上がり分に38%の控除が効く効果(財産評価基本通達186-2)は、時間とともに大きくなります。一方で、事業会社の利益が少なく株価も低い会社では、維持コストのほうが上回ることもあります。
費用は税金だけでなく、銀行の評価の面からも考えます。代表の相亰の著書のモデルでは、銀行は債務償還年数や純資産を重視します。HD化によって、事業会社の決算書を軽くできる、承継の筋道が見えて融資を受けやすくなるといった効果も、判断材料に入れます。向いている会社・向いていない会社は年商数億円の中小企業でもHD化は意味がある?で整理しています。登記や印紙の費用はM&A全般の観点からM&Aでかかる印紙税・登録免許税でも解説しています。
まとめ
- 株式移転の税金は登録免許税(0.7%、最低15万円)が中心で、定款の認証は不要
- 会社分割で不動産を移すと登録免許税2%が重い。不動産取得税は要件を満たせば非課税
- 株式譲渡は、オーナーの譲渡所得税とHDの借入の金利が実質的なコスト
- 毎年の均等割・決算・登記の費用が会社ごとにかかる
- 期間は2〜6か月。株価試算・金融機関への説明・許認可から逆算する
クレフティの事業承継・M&A支援では、方法ごとの費用と効果の試算から、手続きのスケジュール、金融機関への説明までご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士やコンサルタントが対応します。
