会社分割は、会社の事業の全部または一部を、新しく作る会社や既存の会社に包括的に移す手続きです。今の会社の事業を新会社に切り出し、元の会社が新会社の株式を持てば、元の会社がそのままホールディングス(HD)になります。株式移転・株式交換と違い、事業そのものが動くため、手続きも検討事項も多くなります。
この記事では、分社型分割と分割型分割の違い、会社法の手続き、税金、許認可、株価への影響、銀行への説明を整理します。
- 分社型分割なら、元の会社が新会社の株式を持ち、そのままHDになる。分割型分割は兄弟会社になる
- 会社分割は債権者保護手続(1か月以上)と労働契約承継法の手続きが必要で、株式移転より重い
- 適格分割なら課税は繰り延べられ、要件を満たせば不動産取得税は非課税。不動産の登録免許税は2%
- 建設業・宅建業などは許認可がそのまま移らないことがある。事前に行政庁へ確認する
- 銀行には、移す借入・担保・保証の扱いを分割計画の前に相談する
分社型分割と分割型分割
| 項目 | 分社型分割 | 分割型分割 |
|---|---|---|
| 新会社の株式を受け取る人 | 元の会社(分割会社) | 元の会社の株主 |
| できあがる関係 | 親子会社(縦) | 兄弟会社(横) |
| HD化との関係 | 元の会社がそのままHDになる | HDにするには株式移転などを組み合わせる |
| 株主の課税 | 株主は何も受け取らないため課税なし | 非適格だと株主にみなし配当・譲渡損益が生じうる |
| 主な使いどころ | 本業を切り出して元の会社をHDにする | 事業ごとに後継者を分ける、兄弟で事業を分ける |
分社型分割では、元の会社に何を残すかがHDの性格を決めます。本業を新会社に移し、不動産や総務・経理などの管理部門を元の会社に残せば、元の会社は不動産を持ち、グループを管理するHDになります。HDの種類は純粋持株会社・事業持株会社・資産管理会社の違いをご覧ください。
会社法・労働法の手続き
新設分割では新設分割計画を、既存の会社に移す吸収分割では吸収分割契約を作ります(会社法762条、757条)。主な手続きは次のとおりです。
- 株主総会の特別決議:原則として必要です。移す資産の帳簿価額が総資産の5分の1以下なら省略できます(会社法805条、784条2項)
- 債権者保護手続:分割後に元の会社に請求できなくなる債権者には、官報公告と個別の催告を行い、1か月以上の異議申述期間を設けます(会社法810条、789条)。新会社に移す借入について、元の会社も引き続き債務を負う(重畳的債務引受)形にすれば、手続きの負担を抑えられる場合があります
- 労働契約の承継:会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律により、承継される事業に従事する従業員への通知、労働者との協議などが必要です
- 登記:新会社の設立登記と、元の会社の変更登記を行います
債権者保護の期間があるため、準備から効力発生までは3〜6か月程度を見込みます。費用と期間の比較はHD化にかかる費用と期間で取り上げます。
税金
適格分割
会社分割が適格分割(法人税法2条12号の11)に当たれば、移す資産・負債は帳簿価額で引き継がれ、譲渡損益は生じません。100%グループ内の分社型分割では、分割の対価として新会社の株式以外の資産を交付しないこと、分割後も元の会社が新会社の株式の全部を持ち続ける見込みであることが中心になります。非適格になると、移す資産の含み益に法人税がかかります。
不動産の移転コスト
| 税金 | 扱い |
|---|---|
| 不動産取得税 | 金銭等の不交付、主要な資産・負債の移転、従業者のおおむね80%以上の引継ぎ、事業の継続などの要件を満たせば非課税(地方税法73条の7第2号) |
| 登録免許税(不動産) | 所有権移転は売買以外の原因として固定資産税評価額の1,000分の20(国税庁タックスアンサー No.7191)。合併の1,000分の4より重い |
| 登録免許税(会社) | 新設分割による設立:資本金の1,000分の7(最低3万円) |
| 消費税 | 会社分割による資産の移転は課税の対象外。新会社の納税義務の判定は別途必要 |
不動産取得税の非課税は、移す不動産が分割する事業とともに使われ続けることが前提です。本業から切り離した不動産を賃貸用に回すような移転では、要件を満たさないことがあります。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見る許認可:そのまま移らないものがある
会社法上、会社分割は権利義務を包括的に移しますが、許認可は行政法の世界で、自動的には移らないものが多くあります。
| 業種 | 会社分割での扱い(概要) |
|---|---|
| 建設業 | 事前に認可を受ければ、分割の日に許可を承継できる(建設業法17条の2。2020年10月施行) |
| 宅地建物取引業 | 免許は法人ごと。新会社は新たに免許を取得するのが基本 |
| 一般貨物自動車運送事業 | 合併・分割には国土交通大臣(地方運輸局長)の認可が必要(貨物自動車運送事業法30条2項) |
| 労働者派遣事業 | 新設分割で新会社が事業を行う場合は、新たな許可が必要 |
許認可の取得が分割の日に間に合わないと、その間は事業ができません。業種ごとの扱いはHD化と許認可で詳しく解説します。株式移転なら許可を持つ会社がそのまま残るため、許認可の多い会社は、まず株式移転を検討するのが一般的です。
株価への影響
分社型分割で高収益の事業を子会社に移すと、元の会社(HD)の利益が減り、類似業種比準価額が下がる方向に働きます。一方で、次の点に注意が必要です。
- 新会社は開業後3年未満の会社として純資産価額で評価される(財産評価基本通達189)
- 新会社が分割で取得した土地・家屋は、3年間は通常の取引価額で評価される(財産評価基本通達185)
- 元の会社の事業内容が大きく変わると、類似業種比準価額を使いにくくなる期間がある
- 元の会社が株式等保有特定会社に当たると、純資産価額で評価される
株価への効果は、分割から数年たってから表れることが多く、分割の直後はかえって評価が上がる場合もあります。株価だけを目的にした分社化は、経営の効率を落とし、税務上の否認リスクも伴います。事業ごとに意思決定を分けたい、人事制度を分けたい、将来M&Aで子会社を増やしたい、といった経営上の目的を先に決めてから検討します。会社分割の税務は会社分割の税務も参考になります。
銀行への説明
会社分割では、借入や担保が新会社に移るかどうかで、金融機関の手続きが大きく変わります。移す借入、担保の変更登記、保証の付け替え、口座の扱いを、分割計画を固める前に金融機関に相談します。新会社は設立登記の後でなければ口座を開設できないため、入金口座の切替えの段取りも必要です。
代表の相亰の著書のモデルでは、銀行は債務償還年数や純資産を重視します。分割後の各社とグループ全体の決算書がどう見えるかを示し、格付けが悪化しないことを数字で説明できるようにします。
まとめ
- 分社型分割なら元の会社がそのままHDになる。分割型分割は兄弟会社になる
- 債権者保護手続と労働契約承継の手続きが必要で、期間は3〜6か月程度
- 適格分割なら課税は繰り延べ。不動産取得税は要件を満たせば非課税、登録免許税は2%
- 建設業・宅建業・運送業などは許認可の承継を事前に確認する
- 株価の効果は数年後。経営上の目的を先に決める
クレフティの事業承継・M&A支援では、会社分割を含むHD化の方法の比較から、税金・費用の試算、金融機関への説明までご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士やコンサルタントが対応します。
