HDの基本と作り方

HD化と許認可:建設業・宅建業・運送業・派遣業で注意すること

建設業・宅建業・運送業・人材派遣業のように、許認可がないと営めない事業を持つ会社では、HD化の方法によって手続きの重さがまったく変わります。株式移転・株式交換なら許可を持つ会社がそのまま残りますが、会社分割や合併で事業を別の会社に移すと、許可の承継に事前の認可が必要だったり、許可を取り直す必要があったりします。

この記事では、HD化と許認可の関係を、方法別・業種別に整理します。

この記事の結論
  • 株式移転・株式交換・株式譲渡では、許可を持つ事業会社がそのまま残るため、原則として許可の承継は不要
  • ただし役員の変更の届出と、建設業の経営業務の管理を担う役員などの要件は引き続き必要
  • 会社分割・合併で事業を移すなら、建設業は事前認可、運送業は認可、宅建業・派遣業は新会社での新規取得が基本
  • 許可には財産的な基準があるものも多い。重い不動産や借入をHDに移すと、事業会社が基準を満たしやすくなることがある
  • 許認可の多い会社は、まず株式移転を検討し、行政庁には設計の段階で相談する

方法によって許認可の扱いが変わる

株式移転と会社分割での許可の扱い
株式移転(会社はそのまま)
オーナー
↓
HD(新設)
↓ 100%
事業会社許可は事業会社に残る
会社分割(事業が移る)
元の会社=HD許可を持っていた会社
↓ 事業を移す
新会社許可の承継の認可または新規取得が必要
会社法上は権利義務が包括的に移っても、許認可は行政法の定めにより、自動的には移らないものが多い

許認可は、会社という「法人」に与えられています。株式移転・株式交換・株式譲渡は、会社の株主が変わるだけで、許可を持つ法人は変わりません。一方、会社分割や合併では、事業が別の法人に移ります。会社法上は権利義務が包括的に移りますが、許認可は業種ごとの法律で扱いが決まっており、自動的には移らないものが多いのです。

許認可の承継の扱いは、おおむね次の3つに分かれます。

  • 所定の届出などで承継できるもの
  • 行政庁の認可・承認を受けて承継できるもの(建設業、一般貨物自動車運送事業など)
  • 承継できず、新たに取得が必要なもの(宅建業、新設分割での労働者派遣事業など)

業種別の扱い

業種株式移転・株式交換会社分割・合併で事業を移す場合
建設業許可はそのまま。役員などの変更は30日以内に変更届(建設業法11条)事前に認可を受ければ、分割・合併の日に許可を承継(建設業法17条の2)。業種の一部だけの承継は不可
宅地建物取引業免許はそのまま。役員・専任の取引士などの変更は30日以内に変更届(宅地建物取引業法9条)免許は法人ごと。移す先の会社が自ら免許を受けるのが基本。合併で消滅する会社は廃業等の届出
一般貨物自動車運送事業許可はそのまま合併・分割には地方運輸局長などの認可が必要(貨物自動車運送事業法30条2項)。標準処理期間は1〜3か月とする運輸局もある
労働者派遣事業許可はそのまま新設分割で新会社が事業を行う場合は新規許可が必要。吸収合併で存続会社が許可を持たない場合も新規許可が必要(厚生労働省の業務取扱要領)

建設業の事業承継の認可制度は、2020年10月1日の改正建設業法の施行で設けられました。それまでは、事業譲渡・合併・分割のたびに新しい会社が許可を取り直す必要があり、その間は軽微な工事以外を請け負えない空白期間が生じていました。認可の申請は分割・合併の前に行う必要があるため、分割計画の段階で許可行政庁(国土交通大臣許可なら地方整備局、知事許可なら都道府県)に事前相談します。

労働者派遣事業では、合併・分割の前に新規許可を申請できる扱いもありますが、財産的基礎の基準などは通常どおり審査されます。最新の扱いは、厚生労働省の労働者派遣事業関係業務取扱要領で確認します。

このほか、酒類の販売、医薬品、自動車整備などの許認可も、移転の手続きに時間がかかることがあります。M&Aでの許認可の扱いはM&Aでの許認可の引継ぎも参考になります。

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株式移転でも注意すること

株式移転なら許可の承継は不要ですが、次の点は確認します。

役員の変更と、経営業務の管理を担う役員

HD化に合わせて、オーナーが事業会社の代表を退き、HDの代表になるケースは多くあります。建設業では、許可の要件として、経営業務の管理を適正に行う能力(一定の経験を持つ常勤の役員など)が求められます(建設業法7条1号)。オーナーがその要件を満たす唯一の人だった場合、事業会社の役員を退くと許可の要件を欠くおそれがあります。後任の役員が要件を満たすか、体制を整えてから役員を変更します。オーナーの役割の分け方はオーナーは事業会社の社長を退きHDの社長へで取り上げます。

経営事項審査と入札

公共工事の入札に参加する建設業者は、経営事項審査を会社ごとに受けます。株式移転では事業会社の決算書は変わりませんが、HD化に合わせて不動産や借入を動かすと、事業会社の自己資本や負債の数字が変わり、評点に影響します。

財産的な基準とHD

許可の中には、決算書の数字で基準が決まっているものがあります。

許可主な財産的な基準
特定建設業欠損の額が資本金の20%以下、流動比率75%以上、資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上
労働者派遣事業基準資産額2,000万円×事業所数以上、現預金1,500万円×事業所数以上、基準資産額が負債総額の7分の1以上

これらの業種では、本業の会社が大きな不動産と借入を抱えていると、決算ごとの基準を満たしにくくなることがあります。長期保有の不動産や、それに対応する借入をHDに移せば、事業会社の決算書を軽くして基準を保ちやすくなります。ただし、不動産を移すには登録免許税などの費用がかかり、売買なら消費税・法人税の扱いも検討が必要です。業種ごとの決算書の水準は業種別に必要な決算書の水準で詳しく取り上げます。

銀行からの見え方

金融機関は、許可が事業の前提になっている会社に融資するとき、「許可が途切れるリスクはないか」を気にします。会社分割で事業を移す計画なら、許可の承継や取得の見通しと時期を、借入の付け替えとあわせて説明します。株式移転なら許可は変わらないことを伝え、役員の変更がある場合は要件を満たす体制を示します。代表の相亰の著書のモデルでは、銀行は安全性と返済能力を重く見ます。許認可の基準と銀行の評価は、どちらも決算書の健全さで決まる、という点で共通しています。

まとめ

  • 株式移転・株式交換・株式譲渡なら、許可を持つ会社がそのまま残り、原則として承継は不要
  • それでも役員の変更の届出と、建設業の経営業務の管理を担う役員の要件は確認する
  • 会社分割・合併では、建設業は事前認可、運送業は認可、宅建業・派遣業は新規取得が基本
  • 財産的な基準のある業種では、不動産や借入をHDに移して事業会社の決算書を軽くする方法もある
  • 許認可の多い会社は、まず株式移転を検討し、行政庁には設計の段階で相談する

HD化の前に確認する項目はHD化の前に確認するチェックリスト、会社分割の手続きは会社分割でHD体制にする方法をご覧ください。クレフティの事業承継・M&A支援では、HD化の方法の選択から、行政書士など専門家との連携、金融機関への説明までご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士やコンサルタントが対応します。

よくある質問

株式移転でHDを作ると、建設業の許可を取り直す必要はありますか?
原則として取り直す必要はありません。株式移転では、許可を持つ事業会社がそのまま残り、株主がHDに変わるだけだからです。ただし、HD化に合わせて事業会社の役員を変える場合は変更の届出が必要で、経営業務の管理を担う常勤の役員などの要件を満たし続ける必要があります。オーナーが事業会社の役員を退く場合は、要件を満たす人がいるか先に確認します。
会社分割で建設業を新会社に移すとき、許可はどうなりますか?
2020年10月1日から、事前に許可行政庁の認可を受ければ、分割の日に建設業の許可を新会社が承継できるようになりました(建設業法17条の2)。認可を受けずに分割すると、新会社は許可を新たに取る必要があり、その間は軽微な工事以外を請け負えません。許可を受けている業種の一部だけを承継することは認められないため、分割の設計の段階で行政庁に相談します。
宅建業の免許は、会社分割や合併で引き継げますか?
宅建業の免許は法人ごとに与えられるもので、合併で消滅する会社の免許は廃業等の届出の対象になります。事業を移す先の会社は、自ら免許を受けるのが基本です。株式移転・株式交換なら免許を持つ会社がそのまま残るため、役員などの変更があれば30日以内に変更の届出をします(宅地建物取引業法9条)。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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