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業種別に必要な決算書の水準|人材派遣・建設業の許可の財産要件とHD

人材派遣業や建設業は、許可を受けて営む事業です。許可には決算書の水準に関する要件があり、許可の申請や更新の際に、直前の決算などで確認されます(どの場面で何を確認するかは業種・許可の区分で異なります)。本業は順調でも、会社が重い不動産や大きな借入を抱えていると、基準を割り込んで許可の維持が危うくなることがあります。

代表の相亰は2026年5月のセミナーで、「決算書の基準が厳しい業種ほど、ホールディングス(HD)化が効く」と紹介しました。この記事では、労働者派遣事業と建設業の財産要件を、厚生労働省・国土交通省の公式資料で確認したうえで、HDを使って要件を保つ考え方と注意点を整理します。

この記事の結論
  • 労働者派遣事業は、基準資産額2,000万円×事業所数、基準資産額≧負債の7分の1、現預金1,500万円×事業所数の3つ
  • 特定建設業は、欠損が資本金の20%以下、流動比率75%以上、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上の3つ
  • 負債が大きいほど、派遣の「負債の7分の1」や建設の「流動比率」は満たしにくい
  • 重い不動産と借入をHDに移すと、許可を持つ事業会社の決算書を基準に合わせやすい
  • ただし移し方によっては純資産や現預金が減る。移転後の決算書で必ず試算する

労働者派遣事業の資産要件

厚生労働省の労働者派遣事業の許可に関するよくある質問では、許可の財産的基礎の要件として次の3つが示されています。

要件基準
① 基準資産額2,000万円×派遣事業を行う事業所の数 以上
② 負債との比較基準資産額が負債の総額の7分の1以上
③ 現金・預金自己名義の現金・預金が1,500万円×事業所の数 以上

基準資産額は、資産(繰延資産と営業権を除く)の総額から負債の総額を差し引いた額です。同じ資料では、年度末の決算で要件を満たさない場合に、公認会計士または監査法人の監査証明を受けた中間決算・月次決算で確認できる場合があることも示されています(更新の申請では、合意された手続業務による確認も認められています)。

負債の大きさが効いてくる

②の要件は、負債が大きいほど必要な基準資産額が増えることを意味します。次の数字は説明のための例です(事業所2つ)。

項目A社(不動産と借入を抱える)B社(不動産と借入をHDへ移した後)
負債総額4億2,000万円2億1,000万円
必要な基準資産額(①)4,000万円4,000万円
必要な基準資産額(②:負債の7分の1)6,000万円3,000万円
実際の基準資産額5,000万円5,000万円
判定②を満たさない満たす

純資産が同じでも、負債を減らすだけで②の要件を満たせるようになることがあります。

建設業許可の財産的基礎

国土交通省の許可の要件のページでは、財産的基礎について次のように示されています。

区分要件
一般建設業(いずれか)自己資本が500万円以上/500万円以上の資金調達能力/許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績
特定建設業(すべて)欠損の額が資本金の20%を超えていない/流動比率が75%以上/資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上

既存の会社は、申請時の直前の決算期の財務諸表で判断されます。特定建設業は、大きな工事を下請に出す元請けに求められる許可で、要件を満たせないと、受注できる工事の形が制約されます。

公共工事を受注する会社は、経営事項審査(経審)で財務の内容も点数化されます。自己資本や負債の状況は経審の評点にも影響するため、許可の要件をぎりぎりで満たすだけでなく、決算書全体の水準を意識しておくことが大切です。

許可の要件に効く決算書の項目
純資産派遣①・建設の自己資本
負債の総額派遣②
現金・預金派遣③
流動資産・流動負債特定建設の流動比率
↓ 重い不動産と借入をHDへ
許可を持つ事業会社の決算書を基準に合わせやすくする
移し方によっては純資産や現預金が減るため、移転後の試算が欠かせない
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HDを使って要件を保つ考え方

許可を持つ事業会社から、事業に直接使わない重い不動産と、それに対応する借入をHDに移せば、事業会社の負債総額が減り、決算書は基準に合わせやすくなります。具体的な方法は、事業会社がHDに不動産を時価で売り、HDが融資を受けて代金を払う形が代表的です(事業会社の決算書を軽くする)。

  • 派遣:負債の総額が減れば②の要件が緩む。売却代金を現預金で持てば③にも効く
  • 特定建設:長期借入を返せば流動比率への影響は限られるが、短期の借入を返す、現預金を厚くするなどで流動比率が改善することがある
  • 含み益のある土地:時価で売れば会計上は譲渡益が出て、事業会社の純資産が増える(税務上は100%グループ内なら繰延べ)

注意点:移し方で結果が逆になる

HDへの移し方によっては、かえって要件を満たしにくくなることがあります。

移し方事業会社の決算書への影響注意
時価で売却し、代金を受け取る負債を返せば負債が減る。含み益があれば純資産が増える代金の使い道で効果が変わる
帳簿価額で売却純資産は変わらない時価との差は寄附金・受贈益の問題
会社分割で切り出す分割の形によっては純資産が減る分割型分割は株主に株式が渡り、事業会社の純資産が減ることがある
配当として現物で渡す純資産が減る許可の要件を割るおそれ

また、許可を持つ事業そのものを会社分割や合併で別の会社に移す場合は、建設業では承継の認可、派遣では新たな許可などの手続きが問題になります。HD化の方法と許認可の関係はHD化と許認可で解説しています。

銀行の見方とあわせて考える

許可の要件と、銀行の格付けは、見ている項目がよく似ています。純資産が厚く、負債が少なく、現預金が多い決算書は、許可の維持にも融資にも有利です。著書のモデルでは、正常先の目安を32点以上(129点満点)とし、安全性・収益性・成長性・返済能力の4つで評価しています。許可の基準をぎりぎりで満たしている会社は、銀行の安全性の評価も低くなりがちです。決算書の改善の考え方は資産を増やし負債を減らす決算書も参考にしてください。

まとめ

  • 労働者派遣事業は基準資産額・負債の7分の1・現預金の3要件。事業所の数に比例して重くなる
  • 特定建設業は欠損・流動比率・資本金と自己資本の3要件。直前の決算で判断される
  • 負債が大きいと要件を満たしにくい。重い不動産と借入をHDに移すと基準に合わせやすい
  • 移し方によっては純資産や現預金が減る。移転後の決算書で試算してから実行する
  • 最新の要件は、厚生労働省・国土交通省と許可行政庁の手引で確認する

よくある質問

労働者派遣事業の許可の資産要件は何ですか?
厚生労働省の資料では、①基準資産額(資産から繰延資産と営業権を除いた額から負債を引いた額)が2,000万円に事業所数を掛けた額以上、②基準資産額が負債総額の7分の1以上、③自己名義の現金・預金が1,500万円に事業所数を掛けた額以上、の3つを満たす必要があるとされています。
特定建設業の許可に必要な財産的基礎は何ですか?
国土交通省のページでは、欠損の額が資本金の20%を超えていないこと、流動比率が75%以上であること、資本金が2,000万円以上かつ自己資本が4,000万円以上であることの3つをすべて満たす必要があるとされています。一般建設業は、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、許可を受けて5年継続して営業した実績のいずれかです。
HD化すると、許可は取り直しになりますか?
株式移転や株式交換でHDを上に置く場合は、許可を持つ事業会社そのものは変わらないため、通常は許可を取り直す必要はありません。ただし、役員や株主の変更の届出が必要になることがあります。会社分割や合併で許可を持つ事業を別の会社に移す場合は、承継の認可や新たな許可が必要になることがあるため、事前に許可行政庁に確認してください。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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