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HD化すると銀行の見方はどう変わる?グループ合算(連結)で見られる純資産・債務償還年数・返済原資

HD(ホールディングス)化の相談で、オーナーからよく出る質問が「HDにすると、銀行の評価は良くなるのか、悪くなるのか」です。答えは、HDの作り方と、その後のお金の流れ次第です。

確かなのは、HD化の後、銀行は事業会社単体ではなく、HDを含むグループ全体を合算(連結)して見るようになることです。事業会社の決算書がきれいでも、HDに借入やのれんに相当する差額があれば、グループとしての評価は変わります。この記事では、HD化で銀行の見方がどう変わるかを、合算の仕組みと数値例で整理します。

この記事の結論
  • HD化の後、銀行はグループ全体を合算して見る。内部取引と、HDの子会社株式・子会社の資本は相殺される
  • 株式移転のHDは借入が増えず、合算の数字はほぼ変わらない。株式の買取りのHDは、借入とのれん相当額が加わる
  • のれん相当額を実態純資産から差し引く銀行も多く、合算の純資産・債務償還年数が悪化して見えることがある
  • HDの返済原資は配当・経営指導料・家賃。配当には分配可能額の制限があり、事業会社の利益計画と一体で示す
  • 銀行に伝えていない会社をつくらない。グループ全体の合算資料を自社で用意する

なぜ銀行はグループを合算するのか

グループ会社の間では、資金・利益・資産を動かせます。事業会社がHDに配当を出す、HDが事業会社に不動産を貸す、グループ内で貸し借りをする。こうした取引で、ある会社の決算書だけを良く見せることもできてしまいます。そのため銀行は、グループ全体の実力を見るために、各社の決算書を合算し、内部取引を消して評価します。

中小企業には、会社法上の連結決算の義務はありません。連結計算書類の作成が義務づけられているのは、事業年度の末日に大会社であって有価証券報告書を提出する会社です(会社法444条3項)。義務がない分、銀行は自分で合算表を作るか、会社に合算資料を求めます。合算の基本は銀行はグループ会社を合算して見るで詳しく解説しています。

合算で消えるもの

項目合算での扱い
グループ内の売上・費用(経営指導料・家賃など)相殺して消す
グループ内の貸付金・借入金相殺して消す
HDが持つ子会社株式と、子会社の資本相殺する(投資と資本の消去)
相殺で生じる差額(株式の取得価額>子会社の純資産)のれんに相当する差額として残る
HDが受け取る配当グループ内の資金移動として消す

作り方で変わる:株式移転と株式の買取り

HDの作り方によって、合算した数字は大きく変わります(作り方の比較はHDの作り方の全体像)。

HDの作り方と、銀行が合算で見る数字
株式移転でHDを作る
オーナー
↓ HD株式と交換
HD借入なし
↓ 100%
事業会社資産・借入はそのまま
後継者のHDが株式を買い取る
後継者
↓ 出資
HD銀行から借りて株式を購入
↓ 100%
事業会社配当でHDの返済を支える
株式の買取りでは、合算にHDの借入と、のれん相当額が加わる

数値例

事業会社(純資産1億2,000万円、借入3億円、現預金1億円、経常利益5,000万円、減価償却費1,500万円、法人税等1,500万円)のHD化を例に比べます(数字は説明用)。買取りの例では、後継者が1,000万円を出資して作ったHDが、銀行から2億円を借り、オーナーから事業会社株式を2億円で買い取るとします。

項目HD化の前(事業会社単体)株式移転のHD(合算)買取りのHD(合算)
借入金3億円3億円5億円(事業会社3億円+HD2億円)
現預金1億円1億円1億1,000万円
帳簿上の純資産1億2,000万円1億2,000万円1,000万円(HDの資本金)
のれん相当額なしなし8,000万円(株式2億円-事業会社の純資産1億2,000万円)
のれん相当額を除いた実態純資産1億2,000万円1億2,000万円▲7,000万円
債務償還年数(著書のモデル)(3億円-1億円)÷5,000万円=4.0年4.0年(5億円-1億1,000万円)÷5,000万円=7.8年

※債務償還年数=(借入金-現預金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)。経常利益+減価償却費-法人税等=5,000万円で計算。HDの支払利息は省略。

株式移転のHDでは、合算した数字はHD化の前とほとんど変わりません。一方、買取りのHDでは、借入が増え、帳簿上の純資産はHDの資本金だけになり、のれん相当額を差し引くと実態では債務超過に見えることもあります。債務償還年数は著書のモデルで10年以内が健全の目安なので、7.8年はまだ範囲内ですが、余裕は小さくなります。

買取りのHDが悪いわけではありません。承継のために後継者がオーナーから株式を買い取るのは合理的な方法で、オーナーには売却代金が入り、後継者は株式を取得できます。大切なのは、銀行がこの数字をどう見るかを前提に、返済計画と説明を準備することです。

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返済原資:HDの収入は何か

HDは自ら事業をしない場合が多く、借入の返済原資はグループ会社からの収入です。

HDの収入銀行が見るポイント
配当事業会社の分配可能額の範囲内(会社法461条)。100%子会社からの配当はHDで全額益金不算入(法人税法23条)だが、配当で事業会社の現預金と純資産が減る
経営指導料実際の役務提供に見合う額か。過大だと税務上も寄附金のリスク
不動産の賃料HDが不動産を持ち事業会社に貸す場合。相場に見合う家賃か

とくに注意したいのが、配当を返済原資にする融資です。

  1. 事業会社の利益が落ちると、配当も止まる:HDの返済は事業会社の業績に依存します。銀行は、事業会社の利益計画と配当計画を一体で見ます
  2. 事業会社自身の借入とのバランス:事業会社が配当で現預金を出すと、事業会社の借入の返済余力が下がります。事業会社に融資している銀行の理解が必要です
  3. 分配可能額の制限:利益が出ていても、分配可能額が足りなければ配当できません

配当で返済する融資の詳細は配当で返済する融資の注意点、HDが株式を買い取る資金の融資はHDが株式を買い取る資金の融資で解説しています。

銀行が気にする、そのほかのポイント

  • どの会社が借りるか:事業の資金は事業会社、株式の取得資金はHD、不動産はHDまたは不動産会社、と目的に合った会社で借りる
  • 保証と担保:HDが事業会社の借入を保証する、事業会社がHDの借入を保証する、といったグループ内の保証の組み方(HDと子会社の連帯保証・担保)
  • HD単体の決算書の見え方:HDは売上が小さく、資産の大半が子会社株式です。単体の決算書だけで判断されないよう、グループの合算資料を添える
  • 伝えていない会社をつくらない:取引のある銀行に知らせていないグループ会社があると、HD化や合併の過程で必ず明らかになり、信用を損ないます。HD化の前に、すべての取引銀行にグループの全体像を開示しておく
  • 経営者保証:HD化を機に、経営者保証に関するガイドラインに沿って、保証の解除や後継者への切替えを協議する余地がある(HD化と経営者保証の解除)

銀行の評価を高めるHD化の進め方

著書のモデルでは、銀行の格付けを129点満点(安全性34点・収益性15点・成長性25点・返済能力55点)で考え、正常先の目安を32点以上、プロパー融資の目安を「正常先+純資産1億円」としています。HD化の後は、これをグループの合算で満たせるかを意識します。

  1. 合算資料を自社で作る:各社の決算書、内部取引の一覧、合算の貸借対照表・損益計算書、合算の債務償還年数
  2. HD化の目的を説明する:承継の整理、グループ経営、資金の配分、リスクの分離など。「節税のため」という説明は避ける
  3. 返済計画をグループで示す:事業会社の利益計画→配当・経営指導料・家賃→HDの返済、の流れを数字で示す
  4. 事前に相談する:HD化の実行前に、取引銀行に計画を説明し、借入の契約上の手続き(通知・承諾)を確認する(HD化を金融機関にどう説明するか)

クレフティの支援事例では、本業と不動産業を営む経営者の、不動産業を息子に承継したいというご相談に対し、HD化による組織再編・種類株式の設計・定款の整備・株価算定とあわせて金融機関をご紹介し、地方銀行から1.6億円を調達して事業承継を実現しました。グループ全体の数字と承継の計画をそろえて示したことが、融資の判断につながっています。

まとめ

  • HD化の後、銀行はHDを含むグループ全体を合算して見る。内部取引と、子会社株式・子会社の資本は相殺される
  • 株式移転のHDは合算の数字がほぼ変わらない。株式の買取りのHDは、借入とのれん相当額が加わり、実態純資産と債務償還年数が悪化して見えることがある
  • HDの返済原資は配当・経営指導料・家賃。配当は事業会社の利益と分配可能額に依存する
  • 伝えていない会社をつくらず、グループの合算資料と返済計画を自社で用意する
  • 著書のモデルの格付けや債務償還年数を、グループの合算で満たせるかを確認しながら進める

HD化は、銀行との関係を見直すきっかけにもなります。クレフティでは、HD化のスキーム設計から、グループの合算資料の作成、金融機関への説明・紹介まで支援しています。初回のご相談は無料で、担当者がお話を伺ったうえで、担当の税理士または金融機関出身のコンサルタントが対応します。

よくある質問

中小企業もHD化したら連結決算をしなければいけませんか?
会社法で連結計算書類の作成が義務づけられているのは、事業年度の末日に大会社であって有価証券報告書を提出する会社です(会社法444条3項)。多くの中小企業のHDには義務はありません。ただし、銀行は融資の審査でグループ各社の決算書を合算して見るため、内部取引を消したグループ合算の資料を自社で作って説明できるようにしておくと、審査がスムーズになります。
HDが借入で事業会社の株式を買うと、銀行の評価は下がりますか?
グループを合算すると、HDの借入がそのまま増え、HDが払った株式の代金のうち事業会社の純資産を超える部分は、のれんに相当する差額になります。この差額を資産として認めず実態純資産から差し引く銀行も多いため、合算の純資産と債務償還年数が悪化して見えることがあります。返済原資となる配当の計画と、承継のための借入であることを事前に説明することが大切です。
株式移転でHDを作った場合は、銀行の見方は変わりませんか?
株式移転では事業会社の資産も借入も動かず、HDの借入も増えないため、合算した数字は大きくは変わりません。ただし、銀行は今後、HDを含むグループ全体で与信を考えるようになります。HDの役割(管理・不動産・資金の配分)、グループ内の取引、配当の方針などを説明できるようにしておきます。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
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