ホールディングス(HD)が子会社から受け取る経営指導料は、HDの運営費をまかない、管理部門を集約した対価を受け取るための仕組みです。中小企業のHDでもよく使われますが、税務調査で指摘を受けやすい項目でもあります。
「なんとなく売上の3%」「HDの赤字を埋める額」。こうした決め方では、子会社が払った経営指導料が寄附金とされるおそれがあります。この記事では、経営指導料の決め方、残しておく根拠資料、税務と消費税の扱い、銀行からの見え方を整理します。
- 経営指導料は、HDが実際に提供する業務の対価。業務の実態がなければ、子会社では寄附金とされる(法人税法37条7項)
- 決め方は、HDの費用を配分する原価基準がもっとも説明しやすい。売上比例・定額でも根拠の説明は必要
- 契約書・業務の一覧・業務の記録・計算の根拠の4つをそろえる
- 100%グループ内でも、寄附金とされれば申告と株式の簿価の修正が必要になる
- 経営指導料は消費税の課税対象。子会社の仕入税額控除のため、HDはインボイスの登録を検討する
- 銀行は、経営指導料で子会社の利益が減ることを見る。金額は子会社の返済計画とあわせて決める
経営指導料の位置づけ
子会社がHDに払う経営指導料は、役務の提供を受けた対価であれば、子会社の損金になります。一方、HDが実際には何もしていない、あるいは業務に比べて金額が大きすぎる場合は、その部分は対価ではなく金銭の贈与とみなされ、寄附金とされます(法人税法37条7項)。
配当と比べると、違いは次のとおりです。
| 項目 | 配当 | 経営指導料 |
|---|---|---|
| 子会社での扱い | 損金にならない | 対価として相当なら損金 |
| HDでの扱い | 全額益金不算入(完全子法人株式等) | 益金(課税所得) |
| 消費税 | 対象外 | 課税対象 |
| 金額の制限 | 分配可能額の範囲内 | 業務の実態に見合う額 |
| 税務調査での論点 | 少ない | 業務の実態と金額の根拠 |
経営指導料の決め方
決め方には主に3つの方法があります。
| 方法 | 内容 | 説明のしやすさ | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 原価基準 | HDの費用(人件費・事務所費・システム費など)を、売上・人数・作業時間などで子会社に配分し、一定の上乗せをする | 高い | 費用の集計と配分の基準を毎年見直す |
| 売上比例 | 子会社の売上高の一定割合 | 中程度 | 率の根拠を業務と費用で説明できるか |
| 定額 | 月額○万円など | 中程度 | 業務量が変わったときに見直す |
もっとも説明しやすいのは原価基準です。たとえば、HDの管理部門の人件費と事務所費が年3,000万円で、子会社3社の売上高の比が5:3:2なら、まず1,500万円・900万円・600万円を配分し、そのうえで各社に提供した業務の量の違いを反映させます。上乗せの幅をどうするかは、業務の内容と外部に委託した場合の相場を参考に決めます。
売上比例は、子会社の規模に応じた負担になる点でわかりやすい方法ですが、「なぜ3%なのか」を業務の内容と費用から説明できなければ、根拠がないと見られます。
寄附金とされやすい例
| 例 | 問題になる理由 |
|---|---|
| HDの赤字を埋めるように、決算の直前に金額を決めた | 業務の対価ではなく、利益の付け替えと見られる |
| 子会社の利益が多い年だけ経営指導料を増やした | 業務量と関係なく金額が変わっている |
| 契約書はあるが、HDが何をしたかの記録がない | 役務の提供の実態を示せない |
| HDに社員がおらず、オーナーが役員を兼ねているだけ | HDとして業務を提供しているかが曖昧 |
| 子会社が自社でも同じ業務をしている | 二重の負担になっており、対価性が乏しい |
国税不服審判所の裁決でも、グループ会社に支払った業務委託費について、役務の提供を裏付ける資料が乏しいとして寄附金と認定された事例があります(平成12年12月14日裁決、裁決事例集No.60、国税不服審判所)。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見るそろえておく根拠資料
経営指導料を説明するために、次の4つをそろえておきます。
- 契約書:経営指導・業務委託の契約。提供する業務の範囲、金額の計算方法、支払時期、見直しの方法を書く
- 業務の一覧:HDが提供する業務(経営会議の運営、月次決算、給与計算、採用、資金管理、銀行対応など)を具体的に列挙する
- 業務の記録:経営会議の議事録、月次の報告書、HDの担当者の作業記録、子会社とのやりとり
- 計算の根拠:HDの費用の集計、配分の基準、上乗せの考え方を毎年の資料にする
オーナーがHDと子会社の役員を兼ねている場合は、オーナーの業務のうち、どれがHDの役員としての業務で、どれが子会社の役員としての業務なのかを整理しておきます。子会社からも役員報酬を受け取っているなら、同じ業務について子会社が報酬と経営指導料を二重に払っていると見られないようにします。役員報酬の分け方はHD化後のオーナーの役員報酬で取り上げています。
100%グループ内で寄附金とされた場合
HDと子会社の間に法人による完全支配関係がある場合、寄附金とされた部分は、子会社で全額損金不算入、HDで受贈益として全額益金不算入になります(法人税法37条2項・25条の2)。HDが経営指導料として計上していた収益のうちその部分は所得から除かれるため、グループ全体の所得への影響は小さくなることもあります。
ただし、それで問題がなくなるわけではありません。両社で申告の修正が必要になり、HDでは子会社株式の帳簿価額と利益積立金額の修正(寄附修正)も生じます。子会社の税率とHDの税率が違えば、グループ全体の税額も変わります。何より、「グループ内の取引に根拠がない」という指摘は、税務調査で他の取引にも目を向けられるきっかけになります。調査で見られる点はHD化と税務調査で解説しています。
消費税とインボイス
経営指導料は役務の提供の対価なので、HDの課税売上になり、子会社では仕入税額控除の対象になります。子会社が仕入税額控除を受けるには、HDが適格請求書発行事業者として登録し、インボイスを発行することが必要です。
HDの課税売上高が1,000万円以下で免税事業者のままだと、子会社は仕入税額控除を受けられず、グループ全体では不利になることがあります。HD化の時点で、インボイスの登録と消費税の申告の体制を決めておきます。
銀行からの見え方
経営指導料は、子会社の経費になる分だけ、子会社の利益を減らします。子会社が自分の借入を返済している場合、銀行は子会社単体の利益で返済できるかを見るため、経営指導料が大きすぎると子会社の格付けや返済力の評価が下がることがあります。
代表の相亰の著書のモデルでは、債務償還年数((借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等))を10年以内に保つのが健全の目安です。経営指導料を決めるときは、子会社の債務償還年数がこの範囲に収まるか、HDの借入の返済原資を配当と経営指導料のどちらでまかなうかをあわせて検討します。銀行には、グループ内の経営指導料を相殺したグループ全体の数字で説明すると伝わりやすくなります(HDで経営管理を強くする)。HDの費用全体の設計はHDの維持コストをご覧ください。
まとめ
- 経営指導料は、HDが実際に提供する業務の対価。実態がなければ寄附金とされる
- 決め方は原価基準がもっとも説明しやすい。売上比例・定額でも根拠の説明が必要
- 契約書・業務の一覧・業務の記録・計算の根拠をそろえる
- 100%グループ内で寄附金とされても、申告と株式の簿価の修正が必要になり、調査の指摘として残る
- 経営指導料は消費税の課税対象。HDのインボイスの登録を検討する
- 銀行は子会社の利益の減少を見る。子会社の返済計画とあわせて金額を決める
経営指導料は、HDの運営を支える大切な仕組みですが、根拠のない金額は税務と銀行の両方で信頼を損ないます。クレフティの事業承継・M&A支援では、HDの業務の設計から経営指導料の計算の根拠づくり、金融機関への説明までご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士やコンサルタントが対応します。
