HDを作るとき、最初に決めるのが社名・資本金・役員構成です。どれも「とりあえず」で決めがちですが、資本金は消費税や均等割に、役員構成は承継の進め方や会社間の取引の手続きに影響します。
この記事では、HDの社名・資本金・役員構成を、税金・会社法・承継の3つの視点から決める考え方を整理します。HDそのものの基本はHD(ホールディングス)とはをご覧ください。
- 社名は法律上の制約は少ない。グループの名前として伝わりやすいか、M&Aで会社を増やしたときにまとめやすいかで決める
- 資本金は1,000万円未満が基本。1,000万円以上で設立当初の消費税の免税が使えず、1億円超で中小法人の特例が外れる
- 事業会社の売上が大きいと、資本金が小さくても特定新規設立法人として免税にならないことがある
- 役員構成は承継から逆算する。オーナーはHD、後継者は事業会社の代表、という分け方が典型
- 兼務する役員がいると、会社間の取引は利益相反取引として承認が必要になることがある
社名の決め方
会社法上、商号には「株式会社」の文字を入れる必要があり(会社法6条)、不正の目的で他の会社と誤認されるおそれのある名称は使えません(会社法8条)。同じ本店所在地で同じ商号は登記できません(商業登記法27条)。これ以外に、HDの社名の決まりはありません。
実務では、次の点を考えて決めます。
- 事業会社との関係:「○○ホールディングス」のように事業会社の名前を残すと、取引先や金融機関にグループの関係が伝わりやすい
- 将来の広がり:M&Aで業種の違う会社を増やす予定なら、特定の事業名に寄せすぎない
- 承継の意思:後継者の代で新しい名前にしたい、という希望を反映することもある
株式移転では、HDの商号は株式移転計画で定めます(会社法773条1項1号)。
資本金の決め方
1,000万円と1億円の境目
| 資本金の額 | 主な影響 |
|---|---|
| 1,000万円未満 | 設立1期目・2期目は基準期間がないため、原則として消費税は免税(特定期間の判定、特定新規設立法人、インボイスの登録をした場合などを除く) |
| 1,000万円以上 | 新設法人として、設立当初から消費税の課税事業者になる(消費税法12条の2) |
| 1億円以下 | 法人税の中小法人の特例(軽減税率、欠損金の控除限度など)の対象 |
| 1億円超 | 中小法人の特例が使えない。外形標準課税の判定の対象にもなる |
純粋持株会社の売上は、子会社からの経営指導料や賃料が中心で、配当は消費税の対象外です。課税売上が少ないHDでも、資本金を1,000万円以上にすると設立当初から課税事業者になり、申告の手間がかかります。消費税の新設法人の扱いは新しく作った法人の消費税も参考になります。
資本金が小さくても免税にならない場合
資本金が1,000万円未満でも、HDの株式の50%超を持つ株主(その親族や、その株主が支配する会社を含む)について、基準期間に相当する期間の課税売上高が5億円を超える場合は、特定新規設立法人として設立当初から課税事業者になります(消費税法12条の3)。オーナーが支配する事業会社の売上が大きいグループでは、この判定に当たる可能性があるため、HDの設立前に確認します。
株式移転での資本金の決まり方
株式移転では、HDの株主資本は事業会社の株式の受入れ額などをもとに決まり、そのうち資本金と資本準備金にいくら計上するかは株式移転計画で定めます。残りはその他資本剰余金になります(会社計算規則52条)。資本金を小さく設定すれば、設立の登録免許税は最低額の15万円に収まりやすくなります。
ただし、法人住民税の均等割の区分は、税務上の資本金等の額(自治体によっては会計上の資本金と資本準備金の合計額と比べて大きいほう)で決まります。資本金を小さくしても、資本金等の額が大きければ均等割は高くなります。標準税率では、資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下で年7万円、1,000万円超1億円以下・50人以下で年18万円です(地方税法52条・312条)。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見る役員構成の決め方
機関設計
株式会社には取締役を1人以上置けばよく(会社法326条1項)、取締役会や監査役は定款で置くかどうかを決めます(同条2項)。株式の譲渡を制限している会社(公開会社でない会社)なら、取締役の任期を最長10年まで延ばせます(会社法332条2項)。
| 機関設計 | 向いているHD | 注意点 |
|---|---|---|
| 取締役1〜2名(取締役会なし) | オーナー一族だけで株式を持つ小規模なHD | 重要事項はその都度、株主総会で決める |
| 取締役会+監査役 | 複数の事業会社を持ち、グループ経営の意思決定を組織で行いたいHD | 取締役3名以上と監査役が必要。取締役会の運営が必要 |
オーナーと後継者の役割分担
承継を見据えたHDでは、オーナーがHDの代表としてグループ全体の資本・人事・資金を見て、事業会社の代表は後継者や幹部に任せる形が典型です。後継者にはHDの取締役も兼ねてもらい、グループ全体の判断に早くから関わってもらいます。オーナーが事業会社の代表を退いて退職金を受け取る場合は、事業会社の経営に実質的に関与しないことが求められます。この点はオーナーは事業会社の社長を退きHDの社長へで詳しく取り上げます。
兼務と利益相反取引
HDと事業会社の両方の取締役を兼ねる人がいると、両社の間の取引(経営指導料の契約、不動産の賃貸借、資金の貸付など)は、その取締役にとって利益相反取引に当たることがあります。取締役会設置会社では取締役会、非設置会社では株主総会の承認が必要です(会社法356条1項、365条1項)。100%親子会社間の取引でも、手続きを省略してよいわけではないため、議事録を残しておきます。
役員報酬
HD化後のオーナーの報酬を、HDと事業会社のどちらから、いくら払うかは、各社の業務の実態に合わせて決めます。役員報酬を損金にするには、定期同額給与などの要件を満たす必要があります(法人税法34条)。詳しくはHD化後のオーナーの役員報酬をご覧ください。
銀行からの見え方
金融機関は、HDの役員構成から「誰がグループの意思決定をしているか」「後継者はどこまで関わっているか」を読み取ります。後継者が事業会社の代表として実績を積み、HDの取締役としてグループの資金計画にも関わっていれば、承継後も取引を続けやすいと判断されやすくなります。代表の相亰の著書のモデルでは、銀行は返済能力を最も重く見ます。役員構成とあわせて、各社の役割とお金の流れを説明できるようにしておきます。
まとめ
- 社名は、グループの名前としての伝わりやすさと将来の広がりで決める
- 資本金は1,000万円未満が基本。特定新規設立法人の判定と均等割の区分も確認する
- 株式移転では、資本金にいくら計上するかを株式移転計画で定められる
- 役員構成は承継から逆算し、オーナーはHD、後継者は事業会社の代表という分け方が典型
- 兼務役員がいる会社間の取引は利益相反取引の承認と議事録を忘れない
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