組織再編税制

会社分割の税務:適格分割の要件と、不動産を移すときの流通税・株価の注意

本業の会社から不動産を切り離したい、事業ごとに会社を分けたい、兄弟それぞれに会社を継がせたい。こうした場面で使うのが会社分割です。合併と同じく、税務上の適格要件を満たせば、移す資産の含み益に課税されません。

ただし会社分割には、合併にはない論点があります。株主に株式を渡す分割型か、会社自身が株式を持つ分社型か。法人税の適格要件と、不動産取得税の非課税要件が別であること。そして、分割の後に株価が上がることもあることです。この記事では、こうした会社分割の税務を整理します。

この記事の結論
  • 分社型分割は分割した会社が株式を受け取り、分割型分割はその株式が株主に渡る。非適格の分割型では株主にみなし配当が生じうる
  • 適格要件は合併と同じ3類型。100%グループなら対価要件(分割型は持株割合に応じた交付)と関係の継続見込みが中心
  • 法人税では不動産だけの分割も適格になりうるが、不動産取得税の非課税は別の要件(主要な資産・負債、従業者80%、事業継続)
  • 登録免許税は、合併(0.4%)と違い、売買と同じ水準の税率がかかる
  • 分割後は、会社規模・特定会社の判定・開業3年未満・3年以内取得の不動産で株価が上がることがある

分社型分割と分割型分割

会社分割は、会社の事業に関する権利義務の全部または一部を、他の会社(吸収分割)または新しく作る会社(新設分割)に承継させる手続きです(会社法2条29号・30号)。税務上は、対価の株式を誰が持つかで2つに分けます(法人税法2条12号の9・12号の10)。

分社型分割と分割型分割
分社型分割(親子になる)
オーナー
↓ 100%
A社(分割法人)
↓ 100%(対価の株式はA社が持つ)
B社(不動産を承継)
分割型分割(兄弟になる)
オーナー
↓ それぞれ100%(対価の株式は株主へ)
A社(分割法人)
B社(不動産を承継)
会社法上、分割型分割は「分割+分割対価の株式の剰余金の配当」として行う
項目分社型分割分割型分割
対価の株式分割した会社が持つ分割した会社の株主に交付
分割後の関係親子兄弟(株主が同じ)
適格の場合分割した会社は株式を簿価で取得、課税なし株主も課税なし
非適格の場合分割した会社に資産の譲渡損益会社の譲渡損益に加え、株主にみなし配当(法人税法24条1項2号、所得税法25条1項2号)
主な使い方事業ごとの子会社化、HDの形にする不動産と本業を兄弟会社に分ける、兄弟ごとの承継

適格分割の要件

適格分割の要件は、合併と同じく、①完全支配関係、②支配関係、③共同事業の3類型と、分割型分割に限った④独立して事業を行うための分割(スピンオフ)の類型があります(法人税法2条12号の11、同法施行令4条の3第6項〜9項)。どの類型でも、分割承継法人(またはその100%親会社)の株式以外の資産を交付しないことが必要で、分割型分割では、その株式が分割法人の株主の持株割合に応じて交付されることも求められます。

類型主な要件
① 完全支配関係対価要件、分割後の完全支配関係の継続見込み
② 支配関係①に加え、分割事業の主要な資産・負債の移転、分割事業の従業者のおおむね80%以上の引継ぎ、分割事業の継続見込み
③ 共同事業事業関連性、規模または役員の引継ぎ、主要な資産・負債の移転、従業者80%、事業継続、支配株主の株式継続保有

100%グループ内の分割で確認する「継続見込み」

分割型分割で兄弟会社を作る場合、同一の者(オーナーと親族など)と分割承継法人との完全支配関係が、分割後も続く見込みが必要です(同法施行令4条の3第6項2号)。分社型分割なら、分割法人と分割承継法人の完全支配関係の継続見込みが必要です。

分割の直後に、承継した会社の株式の一部を親族以外に売る、増資で第三者を入れる、といった予定があると、要件を外れるおそれがあります。親族の範囲と判定は完全支配関係の適格要件をご覧ください。

株主構成の整理から、承継・売却まで一緒に考えます

M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。

事業承継・M&A支援を見る

不動産を移すときの注意

法人税と不動産取得税の要件は別

100%グループ内の分割なら、法人税では、主要な資産・負債の移転や従業者の引継ぎは要件ではないため、不動産だけを移す分割でも適格分割になりえます。

しかし、不動産取得税の非課税は、法人税の適格とは別の要件で判定します。会社分割による不動産の取得が非課税になるのは、対価として分割承継法人の株式以外の資産を交付しない(分割型分割は持株割合に応じた交付)ことに加え、次の要件をすべて満たす場合です(地方税法73条の7第2号、同法施行令37条の14)。

  1. 分割事業に係る主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していること
  2. 分割事業が分割承継法人で引き続き営まれる見込みであること
  3. 分割事業の従業者のおおむね80%以上が、分割承継法人の業務に従事する見込みであること

本業の会社から賃貸ビルを切り出す場合でも、賃貸事業としての契約・敷金・管理の担当者などをまとめて移せば、要件を満たす余地はあります。逆に、従業者のいない遊休地だけを移す分割は、非課税にならない可能性が高いと考えておくべきです。不動産取得税は都道府県税なので、事前に所管の都道府県税事務所に確認しましょう。

登録免許税と消費税

税目合併会社分割事業譲渡・売買
登録免許税(土地・建物の所有権移転)0.4%本則2%(売買と同じ水準)本則2%(土地の売買は軽減の特例あり)
不動産取得税非課税要件を満たせば非課税課税
消費税かからないかからない建物などにかかる

会社分割は、不動産取得税と消費税で事業譲渡・売買より有利ですが、登録免許税では合併ほど有利ではありません。流通税は組織再編と不動産取得税・登録免許税で詳しく扱います。

分割後の株価への影響

分割は、自社株の評価にも影響します。代表的なのは次の4点です。

  • 会社規模の区分:会社を分けると、従業員数・総資産・売上高が減り、会社規模の区分が小さくなることがあります。小会社に近づくほど純資産価額の比重が増え、株価が上がる場合があります
  • 株式等保有特定会社:分社型分割で子会社株式を持つと、分割法人の総資産に占める株式の割合が高まり、株式等保有特定会社に当たることがあります(株式保有特定会社に注意)
  • 開業後3年未満の会社:新設分割で作った会社は、開業後3年未満の間は純資産価額で評価されます
  • 3年以内に取得した土地・建物:純資産価額の計算で、課税時期の前3年以内に取得した土地・建物は、路線価などではなく通常の取引価額で評価されます

分割の直後に相続や贈与があると、思ったより株価が高くなることがあります。分割の前後の株価を試算してから実行しましょう。株価の考え方はHD化すると自社株の評価はどう変わる?をご覧ください。

銀行の見え方

不動産を分割で別会社に移すと、本業の会社の貸借対照表は軽くなりますが、不動産に付いた借入や担保も一緒に移すのか、残すのかを銀行と決める必要があります。会社分割では、分割する会社の債権者に対して債権者保護手続が必要になる場合があり、銀行は債権者として分割の内容を確認します。

本業の会社の格付けを上げたいなら、分割後の会社ごとの貸借対照表と、債務償還年数(著書のモデルでは(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)、10年以内が健全の目安)を試算して示しましょう。不動産の切り離し方は本業の会社から不動産を切り離す、M&Aの前の切り離しは売却前の不動産の切り離しも参考にしてください。

まとめ

  • 分社型は親子、分割型は兄弟になる。非適格の分割型では株主にみなし配当が生じうる
  • 100%グループ内の分割は、対価要件(分割型は持株割合に応じた交付)と継続見込みが中心
  • 法人税で適格でも、不動産取得税の非課税には、主要な資産・負債、事業継続、従業者80%の要件が別にある
  • 登録免許税は合併より高い。消費税はかからない
  • 分割後は会社規模・特定会社・開業3年未満・3年以内取得の不動産で株価が上がることがある

よくある質問

100%グループ内で、不動産だけを会社分割で移すことはできますか?
法人税では、完全支配関係のある会社の間の分割なら、対価要件と関係の継続見込みを満たせば、移す資産が不動産だけでも適格分割になりえます。ただし、不動産取得税の非課税は、法人税とは別に、分割事業の主要な資産・負債の移転、従業者のおおむね80%以上の引継ぎ、事業の継続などの要件を満たす必要があります(地方税法施行令37条の14)。不動産だけを移す分割は、不動産取得税がかかる可能性が高い点に注意が必要です。
分社型分割と分割型分割は、どちらが株価対策になりますか?
一概にはいえません。分社型分割は、分割した会社が新しい会社の株式を持つため、分割した会社の資産に子会社株式が増え、株式等保有特定会社に当たらないかの確認が必要です。分割型分割は、株主が両社の株式を持つ形になり、それぞれの会社規模が小さくなって評価方式が変わることがあります。新設した会社は開業後3年未満の間は純資産価額で評価され、3年以内に取得した土地・建物は通常の取引価額で評価されるため、分割直後は株価が上がることもあります。
会社分割に消費税はかかりますか?
会社分割による資産の移転は、包括的な承継であり、資産の譲渡等に当たらないため、消費税はかかりません。事業譲渡で建物などを移すと消費税がかかるのと大きく違う点です。ただし、分割後の課税事業者の判定では、分割した会社の基準期間の課税売上高を考慮する特例があります。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

RELATED

あわせて読みたい

組織再編税制

グループ通算制度は中小企業に必要?HD化で検討するときのメリット・デメリットと判断基準

HD体制の100%グループは、グループ通算制度を選ぶと子会社の赤字と親会社の黒字を通算できます。一方で、15%の軽減税率の特例が使えない、時価評価・欠損金の切捨て、e-Tax義務と連帯納付、やめにくさなどの負担もあります。中小企業の判断基準を解説します。

2026年10月30日
組織再編税制

グループ内で資産を移すと税金は?譲渡損益の繰延べ(法人税法61条の11)の仕組みと注意点

HDと子会社など100%グループ内で土地・建物・株式を売買すると、譲渡損益は法人税法61条の11で繰り延べられます。対象になる資産と1,000万円基準、繰り延べた損益が戻る事由、寄附金・受贈益の扱い、消費税や登記費用、銀行の見方を解説します。

2026年10月30日
組織再編税制

グループ法人税制とは:100%グループ内の取引の扱いと、HDで変わること

完全支配関係のある会社の間の取引には、グループ法人税制が強制的に適用されます。譲渡損益の繰延べ、寄附金・受贈益、受取配当、現物分配、自己株式、子会社の清算の6つのルールと、個人が株主の兄弟会社では寄附金のルールが使えない点、DESとの関係を整理します。

2026年10月30日
FREE CONSULTATION

決算書と融資のこと、
まずはお気軽にご相談ください。

初回のご相談は無料です。まずは担当者がお話を伺い、内容に応じて担当税理士や金融機関出身のコンサルタントがご提案します。