組織再編税制

組織再編と不動産取得税・登録免許税|合併・会社分割・売買でいくら違う?非課税の要件と試算

不動産を持つ会社のHD(ホールディングス)化や組織再編では、法人税よりも先に不動産取得税と登録免許税が問題になることがよくあります。法人税は適格要件やグループ法人税制で課税を繰り延べられても、不動産の税金は不動産が動くたびにかかり、しかも評価額が大きいほど負担が増えるからです。

ただし、同じ不動産を移すのでも、合併・会社分割・売買のどれを使うかで、税額は数倍違います。この記事では、方法ごとの税率と非課税の要件を整理し、試算例で比べます。

この記事の結論
  • 合併:不動産取得税は非課税、登録免許税は0.4%。不動産の移転コストが最も小さい
  • 会社分割:不動産取得税は要件を満たせば非課税、登録免許税は2.0%
  • 売買・事業譲渡:不動産取得税(土地・住宅3%、それ以外4%)と登録免許税(土地1.5%、建物2.0%)の両方がかかる
  • 株式移転・株式交換:不動産は動かないので不動産の税金はかからない。HDの設立登記(資本金の0.7%、最低15万円)だけ
  • 分割の非課税要件は、法人税の適格要件とは別。賃貸物件だけを切り出す分割などは要件を満たすか慎重に確認する

方法ごとの不動産の税金

方法不動産取得税登録免許税(所有権移転)
合併非課税(地方税法73条の7第2号)1,000分の4
会社分割(要件を満たす)非課税(同号、同施行令37条の14)1,000分の20
会社分割(要件を満たさない)課税1,000分の20
売買(HDへの売却など)・事業譲渡課税土地1,000分の20(令和11年3月31日までは1,000分の15)、建物1,000分の20
現物出資原則課税(新設法人への一定の現物出資は非課税の定めあり)1,000分の20
株式移転・株式交換不動産が動かないのでなしなし

不動産取得税の標準税率は4%で、土地と住宅は令和9年3月31日までに取得した場合3%です(地方税法73条の15・附則11条の2)。宅地評価土地は、同じ期間、課税標準が価格の2分の1になります(附則11条の5)。登録免許税の税率は国税庁タックスアンサーNo.7191で確認できます。どちらも課税標準は、固定資産課税台帳の価格(固定資産税評価額)が基本です。

会社分割で不動産取得税が非課税になる要件

地方税法施行令37条の14は、次の要件をすべて満たす分割を非課税の対象としています。

要件内容
対価分割対価資産として、分割承継法人の株式以外の資産が交付されないこと。分割型分割では、株式が分割法人の株主の持株数の割合に応じて交付されること
主要な資産・負債分割事業に係る主要な資産・負債が分割承継法人に移転していること
事業の継続分割事業が、分割後も分割承継法人で引き続き営まれることが見込まれること
従業者分割事業の従業者のおおむね80%以上が、分割後に分割承継法人の業務に従事することが見込まれること

法人税の適格分割の要件と似ていますが、別の法律の別の要件です。法人税は完全支配関係があれば従業者・事業継続の要件が不要な場合がありますが、不動産取得税の非課税には、100%グループ内でも上の要件が必要です。

会社分割で不動産を移すときの確認の順番
対価は承継会社の株式だけか
↓ はい
「事業」として移すか主要な資産・負債/事業の継続
↓ はい
従業者のおおむね80%以上が移るか
↓ はい
不動産取得税は非課税登録免許税2.0%はかかる
どれか「いいえ」なら課税
法人税の適格要件とは別に、地方税法施行令37条の14で判定する

注意したいケース

  • 自社で使っている本社ビルだけを切り出す:分割前は「本業のための建物」で、分割後は承継会社の「賃貸用の建物」になる場合、分割前に営んでいた事業がそのまま承継会社で続くとはいえない、と判断されるおそれがあります
  • 従業者がいない、または移らない:賃貸管理の担当者をどう移すかなど、従業者の要件を満たす実態が必要です
  • 対価に現金を含める:株式以外の資産を交付すると非課税の対象外になります

判断に迷う場合は、分割の前に、不動産の所在地を所管する都道府県税事務所に確認しておくと安心です。

試算:同じ不動産を3つの方法で移すと

固定資産税評価額が土地5,000万円(宅地)、建物3,000万円(事務所・非住宅)の不動産を、事業会社から別の会社に移す例で比べます。

方法登録免許税不動産取得税合計
合併8,000万円×0.4%=32万円非課税32万円
会社分割(要件を満たす)8,000万円×2.0%=160万円非課税160万円
売買土地5,000万円×1.5%=75万円、建物3,000万円×2.0%=60万円土地5,000万円×1/2×3%=75万円、建物3,000万円×4%=120万円330万円

※数字は説明用の例。司法書士報酬、売買の場合の建物の消費税は含みません。

売買は合併の約10倍の移転コストですが、売買には「HDが銀行から借りて事業会社に代金を払い、事業会社に現金を入れられる」という、合併・分割にはない利点があります。移転コストだけでなく、資金の流れと目的で方法を選びます。比較の詳細は本業の会社から不動産を切り離す方法をご覧ください。

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会社の登記にかかる登録免許税

不動産とは別に、会社の登記にも登録免許税がかかります(国税庁タックスアンサーNo.7191)。

登記課税標準税率
株式会社の設立(株式移転のHDなど)資本金の額1,000分の7(最低15万円)
合併による設立・資本金の増加資本金の額・増加した資本金の額1,000分の1.5(消滅会社の資本金の額を超える部分は1,000分の7)、最低3万円
分割による設立・資本金の増加資本金の額・増加した資本金の額1,000分の7(最低3万円)
資本金の増加(増資・DESなど)増加した資本金の額1,000分の7(最低3万円)

再編で資本金を大きく設定すると、登録免許税だけでなく、法人住民税の均等割にも影響します。HDや承継会社の資本金は、必要以上に大きくしないのが基本です。HD化の費用全体はHD化にかかる費用と期間で整理しています。

銀行から見た移転コスト

不動産の税金は、法人税と違って取引の時点で現金が出ていくコストです。また、合併・分割では、不動産に付いている抵当権や借入の扱いも同時に決める必要があります。

  1. 担保と借入の承継:合併では借入と抵当権はそのまま合併法人に引き継がれますが、分割・売買では、どの借入を誰が負うか、担保をどう付け替えるかを銀行と事前に協議します
  2. 移転コストの資金手当て:売買で数百万円の税金がかかる場合、買い手(HDなど)の借入額にその分を含めるか、自己資金で払うかを決めておきます
  3. 計上の仕方:不動産取得税・登録免許税は、法人では取得価額に含めることも、費用にすることも選べます(費用にすると、その期の利益が減ります)。銀行に説明する利益計画と整合させます

まとめ

  • 不動産の移転コストは、合併<会社分割(要件を満たす)<売買の順に大きい
  • 合併は不動産取得税が非課税、登録免許税0.4%。分割は要件を満たせば非課税、登録免許税2.0%
  • 分割の非課税要件は、対価・主要な資産負債・事業の継続・従業者80%。法人税の適格要件とは別に判定する
  • 売買は移転コストが大きいが、HDの借入で事業会社に現金を入れられる利点がある
  • 株式移転・株式交換は不動産を動かさない。HDの設立登記(資本金の0.7%、最低15万円)だけ

再編の方法は、税金・登記費用・資金の流れ・銀行との関係をまとめて比べて選びます。消費税の扱いは組織再編と消費税、複数の不動産会社をまとめる方法は複数の不動産法人を合併でまとめるで解説しています。クレフティでは、不動産を持つ会社の再編の試算から金融機関との調整まで支援しています。初回のご相談は無料で、担当者がお話を伺ったうえで、担当の税理士または金融機関出身のコンサルタントが対応します。

よくある質問

合併で不動産を引き継ぐと、不動産取得税はかかりますか?
かかりません。法人の合併による不動産の取得は、地方税法73条の7第2号で非課税とされています。登録免許税は、合併による所有権移転登記に1,000分の4(0.4%)がかかります(国税庁タックスアンサーNo.7191)。
会社分割なら、不動産取得税は必ず非課税ですか?
必ずではありません。分割の対価が承継会社の株式だけで(分割型分割は持株割合に応じた交付に限る)、分割する事業の主要な資産・負債の移転、分割後の事業の継続、従業者のおおむね80%以上の引継ぎの見込みという要件を満たす場合に非課税です(地方税法施行令37条の14)。法人税の適格要件とは別に判定します。登録免許税は、分割による所有権移転登記に1,000分の20がかかります。
株式移転でHDを作ると、不動産の税金はかかりますか?
株式移転では事業会社の不動産は動かないため、不動産取得税も不動産の登録免許税もかかりません。かかるのはHDの設立登記の登録免許税で、資本金の額の1,000分の7(15万円に満たないときは15万円)です。HDの設立後に、事業会社の不動産をHDに移す段階で、不動産の税金が問題になります。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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