組織再編税制

グループ法人税制とは:100%グループ内の取引の扱いと、HDで変わること

HDを作ると、HDと事業会社の間には完全支配関係(100%の関係)ができます。このとき自動的に適用されるのが、グループ法人税制です。申告で選ぶ制度ではなく、要件に当たれば強制的に適用されます。

グループ法人税制は、グループ内の資産の売買、寄附、配当、清算などで、課税を繰り延べたり、損金や益金に算入しなかったりするルールの総称です。うまく使えばグループ内の資金や資産を動かしやすくなりますが、損金にならないものもあります。この記事では、6つのルールと、HDの有無で変わる点を整理します。

この記事の結論
  • 完全支配関係のある内国法人の間の取引に強制適用。グループ通算制度とは別の制度
  • ① 帳簿価額1,000万円以上の土地・建物・有価証券などの譲渡損益は繰延べ(法人税法61条の11)
  • ② 寄附金は全額損金不算入、受贈益は全額益金不算入(37条2項・25条の2)。ただし法人による完全支配関係に限る。個人が株主の兄弟会社には使えない
  • ③ 100%子会社からの配当は全額益金不算入(23条)。④ 適格現物分配で資産を簿価で移せる
  • ⑤ グループ内の自己株式の取得は譲渡損益なし、⑥ 子会社の清算で欠損金を引き継げる
  • 個人のDES・債権放棄はグループ法人税制の外。債務消滅益・債務免除益に注意

グループ法人税制の対象

対象は、完全支配関係がある内国法人(普通法人・協同組合等)の間の取引です。完全支配関係は、オーナーと親族などの持株を合算して判定します(法人税法2条12号の7の6、同法施行令4条の2第2項)。判定の方法は完全支配関係の適格要件をご覧ください。

HDの有無で変わるグループ法人税制の適用
個人が株主の兄弟会社
オーナー一族
↓ それぞれ100%
A社
B社
譲渡損益の繰延べ:○/寄附金・受贈益:×
HDの下の子会社
オーナー一族
↓ 100%
HD
↓ 100%
A社
B社
譲渡損益の繰延べ:○/寄附金・受贈益:○
寄附金・受贈益のルールは「法人による完全支配関係」がある場合だけ。HDの下に置くと対象になる

6つのルール

#ルール内容条文
①資産の譲渡損益の繰延べ譲渡損益調整資産の譲渡損益を、譲受側で譲渡・償却などがあるまで繰り延べる法人税法61条の11
②寄附金・受贈益寄附した側は全額損金不算入、受けた側は全額益金不算入(法人による完全支配関係に限る)37条2項、25条の2
③受取配当計算期間を通じて完全支配関係がある子会社からの配当は、負債利子を控除せず全額益金不算入23条1項・4項、施行令22条の2
④現物分配完全支配関係のある内国法人だけに行う現物分配は適格現物分配として、資産を簿価で移す。源泉徴収も不要2条12号の15、62条の5
⑤自己株式の取得グループ内の発行会社に株式を譲渡しても、譲渡損益を計上しない(資本金等の額で調整)61条の2第17項
⑥子会社の清算残余財産が確定した100%子会社の欠損金を引き継ぎ、子会社株式の消滅損は計上しない57条2項、61条の2第17項

① 資産の譲渡損益の繰延べ

対象は、固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産のうち、売買目的有価証券などを除いたもので、譲渡直前の帳簿価額が1,000万円未満のものは除かれます(法人税法施行令122条の12第1項)。事業会社が昔から持つ土地をHDに時価で売れば、譲渡益は繰り延べられ、HDはその時価を取得価額として計上します。繰り延べた譲渡益は、HDがその土地を外部に売った、グループから外れた、などのときに事業会社で益金になります。

この取引の本当の価値は、税金よりも資金化にあります。HDが銀行から借りて事業会社から土地を買えば、事業会社に現預金が入り、貸借対照表が軽くなります。土地の譲渡は消費税が非課税なので、消費税の負担もありません(建物は課税)。具体的な組み方は事業会社の決算書を軽くするで扱っています。グループ内の資産の移動の詳細はグループ内で資産を移す:譲渡損益の繰延べをご覧ください。

② 寄附金・受贈益

法人による完全支配関係がある会社の間で、無償で資金を渡したり、低い価額で資産を譲ったりすると、渡した側の寄附金は全額損金不算入、受けた側の受贈益は全額益金不算入になります(法人税法37条2項、25条の2第1項)。グループ内で黒字の会社から赤字の会社へ資金を回しても、受けた側に課税は生じません。寄附をすると、株主である親会社で子会社株式の帳簿価額を修正する処理(寄附修正)が必要です。

ただし、オーナー個人が株主の兄弟会社の間では、このルールは使えません。寄附した会社は寄附金の損金算入限度額の計算を行い、受けた会社には受贈益が課税されます。

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③ 受取配当の全額益金不算入

HDが100%子会社から受ける配当は、配当の計算期間の初日から末日まで継続して完全支配関係があれば、完全子法人株式等に係る配当として全額益金不算入です(法人税法23条1項・4項、同法施行令22条の2)。計算期間を通じた関係が必要なので、HDを作った直後の配当は、要件を満たすかを事前に確認します。要件を満たさない場合でも、3分の1超を一定期間持っていれば関連法人株式等として扱われますが、負債利子の控除があります。HDの配当の考え方はHDが子会社から受ける配当は非課税?で扱っています。

DESと債権放棄はどう扱われるか

グループ内の貸借を整理するとき、よく比べられるのがDESと債権放棄です。誰が債権者かで、課税が大きく変わります。

方法HD(法人)が債権者オーナー個人が債権者
債権放棄HD:寄附金で全額損金不算入/子会社:受贈益で全額益金不算入。課税なし会社に債務免除益。繰越欠損金がなければ法人税
DES(債権の現物出資)完全支配関係があれば適格現物出資として簿価で移り、債務消滅益は通常生じない非適格。会社は債権を時価で受け入れ(施行令8条1項1号)、額面との差額が債務消滅益

個人のDESでは、会社が債務超過のとき、債権の時価が額面を大きく下回り、多額の債務消滅益が出ることがあります。DESの評価額を額面で行っても、税務上の時価が低ければ差額は益金とされるおそれがあるため、債権の評価の根拠を残し、繰越欠損金との相殺の範囲を事前に試算します。詳しくは役員借入金は相続財産:DESで解消する方法をご覧ください。

中小企業向けの特例が使えなくなる場合

資本金5億円以上の大法人などの100%子会社は、資本金が1億円以下でも、軽減税率や欠損金の控除限度(所得の全額)などの中小企業向けの特例が使えません(タックスアンサーNo.5800)。HDの資本金は大きくしすぎないようにします。

グループ通算制度との違い

グループ法人税制は、取引ごとの課税を調整するルールで、各社は別々に申告します。一方、グループ通算制度は、承認を受けて、グループ内の所得と欠損を通算する制度です。中小企業では、事務の負担や開始・加入時の時価評価・欠損金の制限を考えると、通算制度まで使う必要がないことも多くあります。違いはグループ通算制度は中小企業に必要?で整理しています。

銀行の見え方

銀行はグループを連結で見るので、グループ内の寄附や資産の売買は、グループ全体の財務を良くも悪くもしません。見られるのは、なぜその会社に資産や資金を置くのかという説明と、返済原資のある会社に借入があるかです。グループ内取引は、契約書・取締役会の議事録・時価の根拠をそろえておきましょう。グループ法人税制のM&Aでの使われ方はM&Aとグループ法人税制も参考にしてください。

まとめ

  • グループ法人税制は、完全支配関係のある内国法人の間の取引に強制適用される
  • 譲渡損益の繰延べは個人が株主の兄弟会社でも使えるが、寄附金・受贈益は法人による完全支配関係に限られる
  • 100%子会社からの配当は、計算期間を通じた完全支配関係があれば全額益金不算入
  • 適格現物分配、自己株式の取得、子会社の清算にも特別なルールがある
  • 個人のDES・債権放棄は対象外。債務消滅益・債務免除益を試算してから実行する

よくある質問

グループ法人税制は、選択しないと適用されないのですか?
選択は不要で、要件に当たれば強制的に適用されます。完全支配関係(100%の関係)がある内国法人の間の取引が対象です。申告で選ぶグループ通算制度とは別の制度で、グループ通算制度は承認を受けた場合に損益を通算する仕組みです。
オーナー個人が100%持つ兄弟会社の間で寄附をしたら、受け取った会社は非課税ですか?
非課税になりません。寄附金の全額損金不算入と受贈益の益金不算入のセットは、法人による完全支配関係がある会社の間に限られます(法人税法37条2項、25条の2第1項)。個人が株主の兄弟会社の間では、寄附した側は寄附金の損金算入限度額の計算を行い、受け取った側は受贈益として課税されます。HDの下に置けば、このルールの対象になります。
HDが子会社への貸付金を放棄すると、子会社に債務免除益の課税はありますか?
HDと子会社の間に法人による完全支配関係があれば、HD側の寄附金は全額損金不算入、子会社側の受贈益(債務免除益)は全額益金不算入となるため、子会社に課税は生じません。HDでも損金にはなりません。一方、オーナー個人が会社への貸付金を放棄した場合は、会社に債務免除益が生じ、繰越欠損金がなければ法人税がかかります。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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