組織再編税制

完全支配関係の適格要件:親族の持株を合算して100%か判定する

HD化やグループ会社の整理で行う合併・会社分割・株式交換などは、多くの場合、完全支配関係による適格組織再編成として課税を繰り延べます。このとき問題になるのが、オーナー一人ではなく、配偶者や子どもなど親族の持株を合わせて100%かどうかという判定です。

この記事では、完全支配関係の定義、親族の範囲、合算の方法、実務で要件を外しやすい場面を整理します。組織再編税制の全体像は組織再編税制の基本をご覧ください。

この記事の結論
  • 完全支配関係は「一の者が発行済株式の全部を直接・間接に保有する関係」。個人なら親族など特殊関係者の持株を合算する
  • 親族の範囲は民法の親族(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)に、事実婚の相手、使用人、生計を一にする親族などを加えたもの
  • 親族以外が1株でも持つと原則として崩れる。例外は従業員持株会とストックオプション株式の合計5%未満
  • 適格になるには、再編の前の関係だけでなく、再編後も完全支配関係が続く見込みが必要
  • 兄弟会社の無対価合併は、両社の持株割合が等しいなどの条件がある。割合が違えば株式を交付する

完全支配関係の定義

法人税法では、完全支配関係を「一の者が法人の発行済株式等の全部を直接もしくは間接に保有する関係」、または「一の者との間にその関係がある法人相互の関係」と定めています(法人税法2条12号の7の6)。前者が当事者間の完全支配関係(親子)、後者が同一の者による完全支配関係(兄弟)です。

完全支配関係の2つの形
当事者間(親子)
オーナー
↓ 100%
A社(HD)
↓ 100%
B社
同一の者による(兄弟)
父+親族
↓ それぞれ100%
A社父100%
B社子70%・配偶者30%
右の例は、父を「一の者」とし、子と配偶者の持株を合算すると両社とも100%になる

ここでいう「発行済株式等」からは、会社が持つ自己株式を除きます(同法2条12号の7の5)。また、個人である「一の者」については、その人と特殊の関係のある個人の持株を合わせて判定します(同法施行令4条の2第2項)。

合算できる親族などの範囲

特殊の関係のある個人は、同族会社の判定と同じ範囲で、次の人たちです(法人税法施行令4条1項)。

区分具体例
親族(民法725条:6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)配偶者、子、孫、父母、兄弟姉妹、甥・姪、いとこ(4親等)、子の配偶者(1親等の姻族)、配偶者の兄弟姉妹(2親等の姻族)
事実上婚姻関係と同様の事情にある人婚姻届を出していない内縁の配偶者
個人である株主の使用人オーナー個人に雇われている人
株主から受ける金銭などで生計を維持している人上記以外で、仕送りで生活している人など
上の3つの区分の人と生計を一にする、その人たちの親族内縁の配偶者と同居するその子など

さらに、個人とその親族などが支配する法人も含めて、間接保有で判定します。たとえば父が100%持つHDがB社株式の60%、子が残り40%を持っていれば、父を一の者としてB社にも完全支配関係があります(同法施行令4条の2第2項後段)。

判定のケース

ケースA社の株主B社の株主判定
1父100%子100%○ 親族合算で両社100%
2父100%子80%・父20%○
3父100%子80%・子の配偶者20%○ 子の配偶者は1親等の姻族
4父100%子80%・父の友人20%× B社は親族合算で80%
5父95%・従業員持株会5%父100%× 持株会が5%未満でないため除外されない
6父97%・従業員持株会3%父100%○ 持株会の3%を除いて判定

ケース5・6の例外は、従業員持株会(民法上の組合で、組合員が使用人に限られ、その会社の株式の取得を主な目的とするもの)と、役員・使用人がストックオプションの行使で取得した株式に限られ、その合計が5%未満の場合だけです(同法施行令4条の2第2項1号・2号)。親族でない役員が個人で持つ株式は、たとえ1%でも除外されません。

再編後の「継続見込み」も要件になる

適格要件は、再編の直前に完全支配関係があるだけでは足りません。兄弟会社の合併なら、合併後も同一の者と合併法人との間に完全支配関係が続く見込みが必要です(法人税法施行令4条の3第2項2号)。親子の合併は、親が子を吸収すれば子会社は消えるので継続は問題になりませんが、分割や株式交換では、再編後の親子関係の継続が求められます。

継続見込みを崩しやすいのは、次のような予定です。

  • 合併後すぐに、親族以外の役員や取引先に株式を一部譲る
  • 合併後に、合併法人をM&Aで第三者に売る予定がある
  • 合併後に増資をして、親族以外の投資家が株主になる

親族の間での贈与や相続は、同一の者のグループの中での移動なので、それ自体で関係が崩れるわけではありません。ただし、後継者に株式を集約するために親族以外の少数株主から買い取るなら、再編の前に買取りを済ませ、きれいな100%の状態で再編するのが基本です。少数株主の整理は分散した株式をHDに集めるで扱っています。

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無対価合併の落とし穴

兄弟会社の合併では、合併法人の株式を交付しない無対価合併がよく使われます。株主が同じなら、株式を交付しても持株割合が変わらないからです。ただし、兄弟会社の無対価合併が完全支配関係による適格合併になるのは、次のいずれかの場合に限られます(法人税法施行令4条の3第2項2号イ・ロ)。

  • 合併法人が被合併法人の株式の全部を持っている
  • 両社の株主の全員について、被合併法人での持株割合と合併法人での持株割合が等しい

先ほどのケース1(A社は父100%、B社は子100%)で無対価合併をすると、持株割合が両社で違うため、この条件を満たしません。この場合は、合併比率を算定し、合併法人の株式を交付する形にします。株式を交付すれば、同一の者による完全支配関係の合併として適格になりえます。なお、株式の交付によって親族の間で持株の価値が動く場合は、贈与税の問題が起きないか、合併比率の根拠も確認します。

支配関係(50%超)との違い

同じ「親族合算」でも、50%超で判定する支配関係(法人税法2条12号の7の5、同法施行令4条の2第1項)は、適格要件のもう一つの類型であり、欠損金の引継ぎ制限で「支配関係が5年続いているか」を見るときの基準でもあります。完全支配関係(100%)と支配関係(50%超)は、使われる場面が違うので混同しないようにしましょう。

関係基準主に使う場面
完全支配関係親族合算で100%適格要件(類型①)、グループ法人税制
支配関係親族合算で50%超適格要件(類型②)、欠損金の引継ぎ制限の5年判定、特定資産譲渡等損失

5年判定の詳細は合併で欠損金は引き継げる?、100%グループ内の取引のルールはグループ法人税制とはをご覧ください。

確認の手順

  1. 両社の株主名簿を最新にする(名義株がないか、相続で分散していないかも確認)
  2. 「一の者」を誰にするかを決め、各株主との親族関係を戸籍で確認する
  3. 自己株式、従業員持株会、ストックオプション株式の有無を確認する
  4. 再編後の株式の移動予定(贈与・売却・増資)を洗い出す
  5. 無対価で行うなら、両社の持株割合が等しいかを確認する

株主名簿と実際の株主が違う「名義株」は、判定の前提を崩します。名義株の整理は名義株の扱いで解説しています。

まとめ

  • 完全支配関係は、個人なら親族などの持株を合算して発行済株式の全部を持つかで判定する
  • 親族は6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族。親族以外が1株でもいれば原則として崩れる
  • 例外は従業員持株会とストックオプション株式の合計5%未満だけ
  • 再編後も完全支配関係が続く見込みが必要。親族以外への譲渡予定は要注意
  • 兄弟会社の無対価合併は、持株割合が等しい場合などに限られる。割合が違えば株式を交付する

よくある質問

父が100%持つA社と、子が100%持つB社は、完全支配関係にありますか?
あります。個人の場合、その人と特殊の関係のある個人(親族など)の持株を合わせて判定するため(法人税法施行令4条の2第2項、4条1項)、父を「一の者」とすると、父と子でA社・B社の株式をそれぞれ全部持っていることになり、同一の者による完全支配関係があるとされます。
親族ではない役員が数%だけ株式を持っていると、どうなりますか?
その会社の発行済株式の全部を親族グループで持っていないことになり、原則として完全支配関係はありません。ただし、従業員持株会(民法上の組合で、組合員が使用人に限られるもの)の株式と、役員・使用人がストックオプションの行使で取得した株式は、合計で発行済株式の5%未満であれば、判定上除いて考えます(法人税法施行令4条の2第2項)。
合併の後、子に株式を贈与する予定があっても適格になりますか?
親族の間の移動であれば、同一の者(その人と親族など)による完全支配関係は続くため、それだけで継続見込みの要件を外れるものではありません。一方、合併後に親族以外の人へ株式を譲る予定がある場合は、完全支配関係が継続する見込みがないとされるおそれがあります。再編の前に、その後の株式の移動予定まで確認しておきます。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
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