「交際費が税務調査で否認された」。個人事業主やひとり会社の調査では、交際費はもっとも指摘を受けやすい費用の一つです。
否認の理由は、ほとんどが「事業のための支出だと説明できない」ことに尽きます。私的な飲食、相手の分からない支出、仲間とのゴルフ、家族の旅行。この記事では、国税不服審判所の公表裁決から否認の典型例を紹介し、なぜ否認されたのか、どうすれば防げるのかを整理します。
- 否認の典型は、私的な飲食、相手や目的を説明できない支出、事業と関係の薄いゴルフや会費、家族の旅行・家族への支払い
- 個人事業主は「家事費・家事関連費」として必要経費から外され、法人は役員給与(役員賞与)とされることがある
- 法人で役員給与とされると、会社で損金にならず社長個人にも課税され、二重の負担になる
- 防ぐ方法は、相手・目的・事業とのつながりの記録と、私的な支出を事業に入れないこと
否認されたときの扱いは個人と法人で違う
同じ「交際費の否認」でも、個人事業主と法人では結果が違います。
| 個人事業主 | 法人 | |
|---|---|---|
| 否認されたときの扱い | 家事費(私的な支出)として必要経費から外される | 交際費等から外れても、社長の私的な支出なら役員給与とされる |
| 税金への影響 | 所得が増え、所得税・住民税・事業税などが増える | 役員給与は原則として損金にならない。社長個人にも源泉所得税 |
| 加算税 | 過少申告加算税、事実を偽っていれば重加算税 | 同左。源泉所得税の不納付加算税も |
法人の場合、私的な支出を会社が払うことは、会社から社長に経済的な利益を与えたことになります。役員給与のうち、毎月同額の定期同額給与などに当たらないものは損金にならないため、会社と社長の両方で税金がかかる形になります。
否認の典型例と公表裁決
1. 私的な飲食・相手の分からない飲食
不妊治療クリニックを営む医師の事例(国税不服審判所 平成25年7月9日裁決)では、業務上の取引がない知人との飲食代は「私的な交際に基づく飲食代」として家事費とされました。また、相手を特定できない飲食代や、送り先の分からないお中元代は、業務との関連を説明できないとして否認されています。
この事例では、接待に伴うタクシー代も、もとの飲食代が否認されたことから同じく必要経費にならないとされました。飲食が否認されると、付随する交通費まで連鎖して否認されることがある点に注意が必要です。
2. ゴルフ
同じ医師の事例で、医大勤務時代の先輩後輩にあたる医師とのゴルフ代は、ゴルフ中の情報交換が業務に何らかの利益をもたらすとしても、客観的にみて業務のためにゴルフをする必要はないとして、家事費とされました。医師同士が任意に作った会で、ゴルフへの参加を条件に懇親していた会の費用も、私的な交際の部分が主として否認されています。
取引先の接待としてのゴルフ自体が否定されているわけではありません。法人の取引先接待ゴルフは交際費等として、中小法人なら年800万円の枠の中で損金にできます。問題は相手が仕事の関係者か、私的な仲間かです。
3. 会費・団体活動の費用
| 支出 | 判断 | 裁決 |
|---|---|---|
| 司法書士が払ったロータリークラブの入会金・会費 | 必要経費にならない(司法書士の業務と直接関係しない) | 平成26年3月6日裁決 |
| 会社が負担した、代表者が青年会議所の会議に出るための交通費・宿泊費・日当 | 代表者への給与(取引先の確保などは副次的な効果にすぎない) | 平成27年7月28日裁決 |
| 同窓会費・同窓会主催旅行の参加費など | 必要経費にならない(業務に直接必要な部分を明らかにできない) | 平成13年3月30日裁決(裁決事例集No.61) |
「人脈づくりは仕事のため」という説明だけでは足りず、活動そのものが事業と直接結びついているかが問われています。
4. 家族の旅行・家族への支払い
| 支出 | 判断 | 裁決 |
|---|---|---|
| 個人事業主が、専従者の配偶者と子を含む家族4人で毎年行った「慰安旅行」 | 家事費(通常の家族旅行と変わらない) | 平成3年11月19日裁決(裁決事例集No.42) |
| 葬儀のあと場所を移して取引先などに飲食を出した「おとき」 | 取引先の分は交際費等、現代表者の親族・友人の分は代表者個人の負担 | 昭和60年2月27日裁決(裁決事例集No.29) |
| 会社が代表者の母と義姉に払った外注費 | 業務に従事したと認められず、代表者への経済的利益 | 昭和62年12月24日裁決(裁決事例集No.34) |
| 実質経営者の妻が専属的に使う会社名義の車 | 使用料に相当する額が実質経営者への役員給与 | 平成24年11月1日裁決 |
家族への給与や外注費は、実際に働いている実態と、それに見合う金額であることが前提です。詳しくは家族への給与が否認された事例をご覧ください。
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オンライン記帳・申告サポートを見る否認を防ぐための5つのポイント
- 相手と目的をその日のうちに記録する:レシートに相手の会社名・氏名、目的を書く。後から思い出すのは難しい
- 私的な食事は最初から事業に入れない:「とりあえず全部経費」は、調査で一つひとつ説明を求められる
- 家族が同席したら、その分を除く:取引先との会食に家族が加わったら、家族の分は私的な支出
- ゴルフ・会費は「相手」と「事業との直接の関係」を説明できるか考える
- 事実と違う記録は絶対にしない:相手を偽る、架空の会食を作るといった行為は仮装に当たり、重加算税の対象になり得る
記録の具体的な残し方は食事の記録はGoogleカレンダーに残せばいい?にまとめています。
法人と個人で「認められる範囲」の考え方
法人の交際費は、租税特別措置法により上限があるものの、取引先との接待であれば交際費等として損金にできる余地があります(法人の交際費はいくらまで経費にできる?)。個人事業主には上限がない代わりに、業務の遂行上必要かどうかが一件ごとに問われます(個人事業主の交際費に上限はある?)。
否認されたときの加算税の全体像は税務調査で最悪どうなる?、ひとり会社の調査で見られやすい点はひとり会社の税務調査で整理しています。
まとめ
- 否認の典型は、私的な飲食、相手不明の支出、仲間とのゴルフ、団体の会費、家族の旅行や家族への支払い
- 公表裁決では「事業に何らかの利益がある」だけでは足りず、客観的にみて業務に必要かが問われている
- 法人では役員給与とされ、会社と社長の両方で課税されることがある
- 防ぐには、相手・目的の記録と、私的な支出を事業に入れないこと。事実と違う記録はしない
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