日当・出張

出張ついでに観光したら経費はどうなる?按分の考え方と法人の注意点

「名古屋の取引先と打ち合わせのあと、せっかくなので土日に観光してから帰ってきた。この出張費は経費にできる?」。個人事業主やひとり会社の社長から、よくいただくご質問です。

結論からいうと、出張ついでの観光の部分は経費になりません。ただし、出張そのものの費用まで経費にできなくなるわけではありません。仕事の部分と観光の部分を分けて、仕事の部分だけを経費にするのが基本です。

この記事では、国税庁の通達をもとに、出張に観光をつけたときの費用の分け方と、個人事業主とひとり会社での扱いの違いを整理します。

この記事の結論
  • 出張に観光をつけても、仕事の部分は経費、観光の部分は経費にならない
  • 商談など仕事が直接の動機なら、仕事の場所までの往復の交通費は原則として仕事の費用。宿泊費などは日数の比などで按分する
  • 家族の同伴費用は、原則として経費にならない
  • 法人で観光分を会社が負担すると、社長への給与とされ、会社の費用にならないおそれがある
  • 「いつ・どこで・誰と・何をしたか」の記録が、按分の根拠になる

出張に観光をつけたときの基本的な考え方

個人事業主の必要経費になるのは、その事業の業務について生じた費用です(所得税法第37条)。一方、生活のための費用(家事費)は経費になりません(同法第45条)。仕事と私的な用途が混ざった費用(家事関連費)は、業務に必要な部分を明らかに区分できるときに、その部分だけが経費になります(所得税法施行令第96条、所得税基本通達45-2)。

出張ついでの観光は、まさにこの「混ざった費用」です。そこで、旅行全体の費用を仕事の部分と観光の部分に分けることになります。

国税庁の通達が示す分け方

国内の出張について、観光との按分を直接定めた通達はありません。ただし、海外渡航については、所得税基本通達37-21(法人は法人税基本通達9-7-9)が次のような分け方を示しています。国内出張でも、考え方の参考になります。

場面通達の考え方
旅行期間のおおむね全部が仕事不当に多額でない限り、全額を旅費として経費にできる(所得税基本通達37-18)
仕事と観光が混ざっている仕事の期間と観光の期間の比などで按分し、仕事の部分だけを経費にする(同37-21本文)
商談・契約など仕事が直接の動機で、その機会に観光をした仕事の場所までの往復の旅費は仕事の費用。残りの費用を按分する(同37-21ただし書)
主として観光目的の旅行原則として経費にならない。ただし旅行中に仕事に直接関連する部分があれば、その部分に直接かかった費用は経費になる(同37-19・37-22)

ポイントは、旅行の目的が何だったかです。通達は、仕事に必要な旅行かどうかを、旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間などを総合して実質的に判定するとしています(所得税基本通達37-19)。

具体例で見る按分の仕方

たとえば、個人事業主が大阪の取引先と2日間の打ち合わせをし、そのあと2日間観光してから東京に戻ったとします。

費用扱いの例
東京⇔大阪の新幹線(往復)打ち合わせが直接の目的なら、仕事の費用
打ち合わせの2日間のホテル代仕事の費用
観光の2日間のホテル代私的な費用(経費にならない)
観光地への移動・入場料私的な費用
取引先との会食内容によって交際費・会議費
自分だけの食事生活費の性格が強く、原則として経費になりにくい

このように、日ごとに費用が分かれるもの(ホテル代など)は、その日が仕事か観光かで分けます。分けにくいもの(パック料金など)は、仕事の日数と観光の日数の比などで按分します。

観光のために行き先や経路を変えた場合

「打ち合わせは大阪だが、帰りに広島に寄って観光した」というように、観光のために経路が変わり、交通費が増えることがあります。この場合、増えた分は観光のための費用と考えるのが自然です。大阪までの往復運賃相当額を仕事の費用とし、それを超える部分を私的な費用として区分する、といった整理が考えられます。どこまでを仕事の費用とするかは、個別の事情によって判断が分かれます。

家族を同伴した場合

家族を連れて行った場合、家族の分の旅費は原則として経費になりません。海外渡航の通達では、通訳が必要で社内に適任者がいない場合など、明らかに旅行の目的のために必要な同伴に限って例外を認めています(所得税基本通達37-20、法人税基本通達9-7-8)。

家族と一緒に泊まったホテル代のように、1つの支払いに本人と家族の分が含まれるときは、本人の分だけを経費にします。

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ひとり会社(法人)の場合は「社長への給与」に注意

法人の場合も、仕事と観光を分ける考え方は同じです。ただし、観光の部分を会社が負担したときの扱いが、個人事業主とは違います。

個人事業主ひとり会社(法人)
仕事の部分旅費交通費として経費旅費交通費として会社の費用
観光の部分経費にならない(事業主貸)会社が負担すると、社長への給与とされるおそれ
給与とされた場合―毎月同額の役員報酬ではないため、原則として会社の費用にならない。社長個人にも所得税がかかり、会社に源泉徴収の義務が生じる
家族の同伴費用経費にならない会社が負担すると、社長への給与とされるおそれ

法人税基本通達9-7-9は、海外渡航で仕事と仕事以外の旅行を併せて行った場合、仕事以外の部分は役員又は使用人に対する給与とすると定めています。役員への給与は、毎月同額の定期同額給与などに当たらなければ、原則として会社の費用(損金)になりません(法人税法第34条)。

つまり、社長の観光分を会社のカードで払って「旅費交通費」にしていると、税務調査で給与とされ、会社の費用にならないうえに、社長個人の所得税と、会社の源泉徴収漏れが同時に指摘される、ということが起こり得ます。観光分は、社長が自分のお金で払うか、会社が立て替えたなら社長から返してもらうのが安全です。

出張の日当との関係

旅費規程に基づいて社長に日当を払う会社では、観光の日に日当を払うのも避けましょう。日当は出張のための費用を補うものなので、観光の日に払う理由が説明しにくいからです。日当の考え方は日当(出張手当)を払えるのは?法人と旅費規程、規程の作り方は旅費規程の作り方をご覧ください。個人事業主が自分に日当を払えない理由は、個人事業主は自分に日当を払える?で解説しています。

按分の根拠になる記録の残し方

按分は「なんとなく半分」ではなく、事実にもとづいて説明できることが大切です。次のような記録を、領収書と一緒に残しておきましょう。

  • 日程表:何日に、どこで、何をしたか(仕事の日と観光の日が分かるように)
  • 仕事の証拠:取引先とのメール、打ち合わせのメモ、議事録、セミナーの受講票など
  • 按分の計算:どの費用を、何を基準に、どう分けたか
  • 同行者:誰と行ったか(取引先、従業員、家族など)

カレンダーアプリに予定と訪問先を残しておくだけでも、あとで説明するときの助けになります。記録の残し方は食事の記録はGoogleカレンダーに残せばいい?も参考になります。

海外への渡航や、配信者の撮影旅行のように観光との区別がつきにくいケースは、配信者の海外渡航費は経費になる?で、国税庁の通達と裁決例をくわしく紹介しています。不動産投資の物件視察を兼ねた旅行は、物件視察・遠方物件の旅費交通費は経費になるかをご覧ください。

まとめ

  • 出張に観光をつけた場合、仕事の部分だけが経費になり、観光の部分は経費にならない
  • 仕事が直接の動機なら、仕事の場所までの往復の交通費は原則として仕事の費用。宿泊費などは日ごとに分けるか、日数の比などで按分する
  • 観光のために経路を変えて増えた交通費や、家族の同伴費用は、原則として私的な費用
  • 法人で観光分を会社が負担すると、社長への給与とされ、会社の費用にならないおそれがある。観光分は社長が自分で払うのが安全
  • 日程表や仕事の証拠を残し、按分の根拠を説明できるようにしておく

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よくある質問

出張のあと1泊延ばして観光しました。延ばした分のホテル代は経費になりますか?
延ばした1泊は観光のための宿泊なので、原則として経費になりません。仕事の日の宿泊費は経費にでき、延泊分だけを私的な費用として区分します。個人事業主なら事業主貸、法人なら社長が自分で負担するか、会社が負担すれば社長への給与として扱われるおそれがあります。
仕事が目的の出張なら、帰りの飛行機代も全額経費にできますか?
国税庁の通達では、取引先との商談など仕事が直接の動機で、その機会に観光を併せて行った場合、仕事をする場所までの往復の交通費は仕事の費用として扱う考え方が示されています(海外渡航についての定め)。ただし、観光地を経由するなどして運賃が増えた分は、按分や区分が必要になることがあります。
家族を連れて出張に行きました。家族の分の旅費は経費になりますか?
原則としてなりません。国税庁の通達は、仕事に必要な同伴(通訳が必要で社内に適任者がいない場合など)を除き、親族の同伴費用は経費に入れないとしています。家族の分の交通費・宿泊費・食事代は私的な費用として区分しましょう。

※本記事は2026年11月7日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
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