配達や訪問営業、現場への移動、近所の取引先回り――車ではなく、自転車やバイクで仕事をしている個人事業主・ひとり会社の方は少なくありません。仕事に使う自転車・バイクは経費になります。
迷いやすいのは、買ったときに一度に経費にできるかどうか、私用と兼ねているときの按分、ガソリン代や保険料などの維持費の扱いです。この記事では、国税庁の耐用年数表などに沿って整理します。
- 仕事に使う自転車・バイクは経費になる。買ったときの処理は購入金額で決まる
- 10万円未満は使い始めた年に全額、10万円以上20万円未満は3年で均等に(一括償却資産)、それ以上は自転車2年・二輪自動車3年で減価償却する
- 青色申告なら、40万円未満(2026年3月31日までの取得は30万円未満)の資産を一括で経費にする特例もある
- 私用と兼ねているときは、仕事に使う割合だけを経費にする。10万円・20万円の判定は按分前の金額で
- ガソリン・修理・駐輪場・保険・税金などの維持費も、同じ割合で按分する
買ったときの処理は「購入金額」で決まる
自転車やバイクは、何年も使える資産なので、原則として減価償却で少しずつ経費にします。ただし、金額が小さいものは、早く経費にできる取扱いがあります。
| 購入金額(取得価額) | 処理 | 使える人 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 使い始めた年に全額を経費 | 誰でも |
| 10万円以上20万円未満 | 3年間で3分の1ずつ経費(一括償却資産) | 誰でも |
| 10万円以上40万円未満(2026年3月31日までの取得は30万円未満) | 使い始めた年に全額を経費(年300万円まで) | 青色申告の個人事業主・中小法人など |
| 上記以外 | 法定耐用年数で減価償却 | ― |
国税庁の耐用年数表(一般用の車両・運搬具)では、法定耐用年数は次のとおりです。
| 区分 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 自転車 | 2年 |
| 二輪・三輪自動車 | 3年 |
| (参考)自動車のうち軽自動車などの小型車 | 4年 |
| (参考)一般の乗用車 | 6年 |
原動機付自転車がどの区分に当たるかは、車両の種類によって確認が必要です。運送事業用などの車両は、別の耐用年数が定められています。少額の資産の特例の要件は少額減価償却資産の特例で詳しく解説しています。
計算例:業務用のバイクを45万円で買った
個人事業主が、新品のバイクを1月に45万円で買い、すぐに仕事で使い始めたとします。40万円以上なので一括で経費にする特例は使えず、耐用年数3年で減価償却します。個人事業主は原則として定額法で、耐用年数3年の償却率は0.334です。
- 1年目の減価償却費:45万円 × 0.334 = 150,300円
- 仕事に使う割合が9割なら、経費になるのは 150,300円 × 90% = 135,270円
年の途中で買った場合は、使い始めた月からの月割りで計算します。
中古のバイク・自転車の耐用年数
中古で買った場合は、残りの使用期間を見積もるのが原則ですが、見積もりが難しいときは簡便法が使えます(国税庁タックスアンサー No.5404)。
- 法定耐用年数の全部が経過している:法定耐用年数 × 20%
- 法定耐用年数の一部が経過している:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
- 計算した年数に1年未満の端数があれば切り捨て、2年に満たなければ2年
二輪自動車の法定耐用年数は3年なので、中古のバイクは多くの場合、耐用年数が2年になります。考え方は車と同じなので、中古車の耐用年数と「4年落ち」の考え方も参考になります。
私用と兼ねているなら按分する
自転車やバイクは、仕事にも買い物などの私用にも使うことが多い乗り物です。個人事業主の場合、私用で使う部分は経費になりません。仕事に使う割合を合理的な基準で決めて、その割合だけを経費にします(家事按分)。
| 使い方 | 経費にできる範囲 |
|---|---|
| 配達専用・営業専用で、私用には使わない | 全額 |
| 平日は仕事、休日は私用 | 仕事に使う日数や距離の割合 |
| ほとんど私用で、たまに仕事で使う | 仕事で使った分だけ(経費にしないことも検討) |
割合の根拠として、配達アプリの稼働記録、訪問先の記録、カレンダーの予定など、仕事で使ったことが分かる記録を残しておくと、税務調査のときにも説明しやすくなります。車の按分の考え方は個人事業主が車を買ったら:経費にできる割合と家事按分で詳しく解説しています。
注意したいのは、10万円・20万円・40万円の判定は、按分する前の購入金額で行うことです。15万円の自転車を仕事で6割使う場合、「経費になるのは9万円だから10万円未満」とはなりません。一括償却資産などとして処理したうえで、6割を経費にします。
なお、自宅から事務所への移動のように、通勤に当たる使い方が経費になるかどうかは、個人事業主の通勤費は経費になる?で解説しています。
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オンライン記帳・申告サポートを見る維持費の勘定科目と消費税
自転車・バイクの維持費も、仕事に使う割合で按分して経費にします。
| 費用 | 勘定科目の例 | 消費税 |
|---|---|---|
| ガソリン代・電動自転車の充電費 | 車両費・旅費交通費 | 課税 |
| 修理・タイヤ交換・メンテナンス | 修繕費・車両費 | 課税 |
| 駐輪場・バイクの駐車場代 | 地代家賃・車両費 | 課税(月極の駐輪場など) |
| 自賠責保険・任意保険・自転車保険 | 損害保険料 | 非課税 |
| 軽自動車税(種別割) | 租税公課 | 対象外 |
| ヘルメット・レインウェア・ライト・鍵 | 消耗品費 | 課税 |
| 配達用のバッグ・スマホホルダー | 消耗品費 | 課税 |
どの勘定科目を使っても税額は変わりません。毎年同じ科目を使うことが大切です。ガソリン代や駐車場代、保険料の処理は、車の場合と同じ考え方なのでガソリン・駐車場・高速代・車検・自動車税の処理もご覧ください。
消費税の課税事業者が一般課税で仕入税額控除を受けるには、ガソリンスタンドや修理店のインボイス(適格簡易請求書のレシートなど)の保存が必要です。保険料や税金は、もともと消費税がかからないので、仕入税額控除の対象になりません。
シェアサイクル・レンタルバイクを使う場合
自転車を買わずに、シェアサイクルを仕事の移動に使うこともあるでしょう。仕事の移動のための利用料は、旅費交通費として経費にできます。月額の乗り放題プランで私用にも使っているなら、仕事の割合だけを経費にします。利用履歴はアプリで確認できるので、行き先が分かるように残しておきましょう。
ひとり会社で自転車・バイクを使う場合
ひとり会社が自転車やバイクを買う場合は、会社の名義で買い、会社の業務に使うのが基本です。会社の資産として、個人事業主と同じ基準で減価償却や少額資産の処理をします。
| 項目 | 個人事業主 | ひとり会社 |
|---|---|---|
| 購入の処理 | 金額の基準は同じ(10万・20万・40万円) | 同左 |
| 私用分の扱い | 家事按分で経費から除く | 社長の私用が多いと、その分は社長への給与(役員給与)とみられることがある |
| 通勤での利用 | 自宅と事務所の移動の扱いに注意 | 社長に通勤手当を払える(距離に応じて非課税の限度額がある) |
| 売ったとき | 譲渡所得(事業所得ではない) | 会社の売却損益 |
自転車通勤の通勤手当は、片道の通勤距離に応じて非課税となる限度額が決まっています(国税庁タックスアンサー No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当)。片道2km未満は非課税の対象外です。会社の車を社長が私用で使う場合の考え方は法人で車を買ったら:全額経費になる?私的利用の注意点が参考になります。
また、会社が業務で使う原付やバイクは、固定資産税(償却資産)ではなく軽自動車税の対象になります。償却資産税の申告の対象になる資産についてはパソコンなどの償却資産税は申告が必要?をご覧ください。
まとめ
- 仕事に使う自転車・バイクは経費になる。処理は購入金額で決まる
- 10万円未満は一括、20万円未満は3年の一括償却。青色申告なら40万円未満(2026年3月31日までの取得は30万円未満)を一括で経費にする特例もある
- それ以上は、自転車2年・二輪自動車3年で減価償却。中古は簡便法で、多くは2年
- 私用と兼ねるなら、仕事の割合だけを経費に。金額の判定は按分前の金額で行う
- ガソリン・修理・駐輪場・保険・税金も同じ割合で按分。保険料と税金は消費税の対象外
- ひとり会社は会社名義で買い、社長の私用に注意する。自転車通勤の通勤手当は距離に応じて非課税
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