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HDから他のグループ会社へ資金を回す|貸付・配当・出資の違いと税務・銀行の見方

ホールディングス(HD)の利点の一つは、子会社からの配当でHDに資金を集め、その資金を新規事業や別の子会社に回せることです(グループ内の資金の配分)。ただし、資金を回す方法によって、税金の扱いも、銀行からの見え方も変わります。

この記事では、HDから他のグループ会社に資金を回す方法として、貸付・出資・寄附(資金の贈与)を比較し、それぞれの税務と銀行の見方を整理します。

この記事の結論
  • 資金を回す方法は、貸付(返してもらう)、出資(株式にする)、寄附(返してもらわない)の3つ
  • 貸付は、相場に見合った利息と契約書が基本。無利息は寄附金の論点になる
  • HDが100%持つ子会社への寄附は、寄附金の全額損金不算入・受贈益の益金不算入(法人税法37条2項、25条の2)
  • この特例は法人による完全支配関係に限られ、オーナー個人が持つ兄弟会社どうしには使えない
  • 出資は資本金が増えすぎると税務上の不利益がある。銀行は関係会社への貸付金を割り引いて見ることがある

資金を回す3つの方法

方法子会社の決算書HDの決算書税務の主な論点向いている場面
貸付借入金が増える貸付金が増える利息の水準、無利息の寄附金認定返済の見込みがある運転資金・設備資金
出資(増資)資本金・資本剰余金が増える子会社株式が増える資本金の額による税務上の区分新規事業の立ち上げ、子会社の財務の強化
寄附(資金の贈与)受贈益が出る寄附金が出る完全支配関係の特例、寄附修正子会社の支援。原則として慎重に
HDを通じた資金の流れ
事業会社A利益が出ている
↑ 配当(100%保有なら全額益金不算入)
HD
↓ 貸付・出資・寄附
子会社B新規事業
子会社CM&Aで取得
配当は下から上へ。上から下へは、貸付・出資・寄附のいずれかで回す

配当は子会社から親会社への資金の流れなので、HDから子会社へは使えません。HDに資金を集める側の注意点は配当で返済する融資の注意点で解説しています。

貸付:利息と契約書が基本

グループ内の貸付でも、独立した相手と取引する場合と同じように、利率・返済期間・返済方法を契約書で定めます。

  • 利率は、HDの調達金利や、子会社が銀行から借りる場合の金利などを参考に、根拠を残して決める
  • 無利息や低すぎる利息は、本来受け取るべき利息との差が寄附金として扱われるおそれがある(法人税法37条)
  • 業績が悪化した子会社の再建のための無利息貸付など、相当の理由がある場合は寄附金に当たらないとされる取扱いもある(法人税基本通達9-4-2)。理由と計画を書面で残す

HDが銀行から借りた資金を子会社に貸す(転貸する)場合は、銀行との契約で資金の使いみちが制限されていないかを確認します。

寄附:完全支配関係の特例と、その範囲

HDが子会社に資金を贈与すると、HDでは寄附金、子会社では受贈益になります。HDと子会社の間に法人による完全支配関係があれば、次の特例があります。

当事者扱い根拠
HD(寄附した側)寄附金は全額損金不算入法人税法37条2項
子会社(受けた側)受贈益は全額益金不算入法人税法25条の2
HDが持つ子会社株式帳簿価額を修正する(寄附修正)法人税法施行令9条、119条の3

兄弟会社どうしは特例の対象外

この特例は、法人による完全支配関係がある内国法人の間に限られます。オーナー個人がA社とB社を直接100%持つ兄弟会社の間では使えません。

寄附金・受贈益の特例が使えるか
使える(HDの下)
オーナー
↓ 100%
HD
↓ 100%
A社
B社
使えない(個人が直接保有)
オーナー
↓ 100% ↓ 100%
A社
B社
A社からB社への寄附は通常の寄附金・受贈益
法人による完全支配関係があるかどうかで、扱いが変わる

個人が直接持つ兄弟会社の間で資金を贈与すると、寄附した会社では損金算入限度額を超える部分が損金にならず、受けた会社では受贈益が課税されます。HD体制にする理由の一つになり得ますが、寄附そのものを目的にしたHD化は勧められません。100%グループ内の取引の扱い全般はグループ法人税制とはで解説しています。

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出資:資本金の増えすぎに注意

新規事業を立ち上げる子会社や、財務を強くしたい子会社には、出資(増資)で資金を入れる方法もあります。返済の義務がないため、子会社の自己資本比率が上がり、銀行からの見え方は良くなります。

ただし、株式会社では、払い込まれた額の2分の1以上を資本金にする必要があります(会社法445条1項・2項)。資本金が増えると、次のような税務上の不利益が生じることがあります。

資本金の額主な影響
1,000万円以上基準期間のない事業年度の開始の日の資本金が1,000万円以上なら、消費税の新設法人の特例で課税事業者になる(消費税法12条の2)
1億円超法人税の中小法人の軽減税率が使えない、欠損金の繰越控除が制限されるなど

なお、資本金が1億円以下でも、資本金5億円以上の法人による完全支配関係がある場合などは、中小法人向けの特例が使えないことがあります。増資の額は、資本金と資本準備金への振り分けも含めて検討します。

方法を選ぶときの考え方

どの方法で資金を回すかは、資金の使いみちと、返ってくる見込みで決めます。

  • 返済の見込みがある運転資金・設備資金なら、貸付。利息と返済の条件を決め、返済の実績を残す
  • 事業が軌道に乗るまで時間がかかる新規事業なら、出資。返済の負担がなく、子会社の財務も強くなる
  • 業績が悪化した子会社の支援は、まず再建の計画を作り、そのうえで無利息貸付・債権放棄・増資のどれが適切かを検討する。安易な寄附は、税務でも銀行への説明でも不利になりやすい

HD自身も借入をしている場合は、HDの返済が回る範囲でしか子会社に資金を回せません。HDの手元資金と借入の返済予定を一覧にし、子会社への資金の回し方を、グループ全体の資金計画の中で決めます。

銀行の見方

資金の回し方銀行の見方(一般論)
関係会社への貸付金回収が貸付先の業績次第のため、実態の純資産を見るときに割り引いて見ることがある
子会社株式(出資)子会社の業績が悪ければ、株式の価値を割り引いて見ることがある
グループ全体最終的には、グループを合算した借入と返済力で判断する

HDから子会社に回した資金は、グループの中で形を変えただけです。銀行には、HD・子会社の決算書をそろえて出し、グループ全体の資金の流れを説明できるようにしておきます(HD化すると銀行の見方はどう変わる?)。役員や関係者への貸付金が銀行にどう見られるかは役員貸付金と銀行の評価も参考にしてください。

まとめ

  • HDから子会社へは、貸付・出資・寄附のいずれかで資金を回す
  • 貸付は相場の利息と契約書が基本。無利息は寄附金の論点になる
  • 寄附金・受贈益の特例は法人による完全支配関係に限られる。兄弟会社どうしは対象外
  • 出資は財務を強くするが、資本金の額による税務上の不利益に注意する
  • 銀行は関係会社への貸付金を割り引いて見ることがある。グループ全体で説明する

よくある質問

HDが子会社に無利息で貸してもよいですか?
グループ内でも、無利息や低すぎる利息での貸付は、本来受け取るべき利息相当額の寄附金として扱われるおそれがあります。HDが子会社の株式を100%持つ法人による完全支配関係なら、寄附金は全額損金不算入、子会社の受贈益は益金不算入の特例があります(法人税法37条2項、25条の2)。ただし、子会社の再建のためなど相当の理由がある場合を除き、利率と返済条件を契約書で定めておくのが基本です。
オーナー個人が株主の兄弟会社どうしでも、寄附金の特例は使えますか?
使えません。寄附金の全額損金不算入と受贈益の益金不算入の特例は、法人による完全支配関係がある内国法人の間に限られます。オーナー個人がA社とB社を直接持つ兄弟会社の間で資金を贈与すると、A社の寄附金は損金算入限度額の範囲でしか損金にならず、B社の受贈益は課税されます。HDの下に置くかどうかで扱いが変わる点に注意が必要です。
銀行は、グループ会社への貸付金をどう見ますか?
一般に、関係会社への貸付金は、回収できるかどうかが借り手の業績に左右されるため、銀行が実態の純資産を見るときに、資産の価値を割り引いて見ることがあります。貸付先の決算書をあわせて提出し、回収の見通しを説明できるようにしておくことが大切です。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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