YouTubeの広告収入、ライブ配信の投げ銭やギフト、企業案件の報酬、メンバーシップ収入。配信で収入を得るようになると、確定申告で「事業所得」と「雑所得」のどちらにするかで迷います。
この区分は、損益通算や青色申告の特典に直結します。この記事では、国税庁の通達と公表裁決をもとに、判定の基準と、区分による申告の違いを整理します。
- 事業所得か雑所得かは、配信活動が社会通念上「事業」といえる程度かで判定する(所得税基本通達35-2)
- 帳簿書類の保存がなければ、原則として業務に係る雑所得(収入が300万円を超え、事業所得と認められる事実がある場合を除く)
- 帳簿を保存していても、収入が僅少な場合や例年赤字で解消の取組がない場合は個別に判断される
- 公表裁決では、給与で生活しながら行う講演・執筆、自宅のライブチャット業務などが雑所得とされた。事務所の指揮命令下での報酬は給与所得とされる可能性もある
配信収入が当てはまりうる3つの所得
配信者の収入は、契約や働き方によって、主に次のどれかになります。
| 所得の種類 | 当てはまりやすいケース | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 事業所得 | 配信を本業として継続的に行い、帳簿をつけて収益を上げている | 赤字を他の所得と損益通算できる。青色申告の特典がある |
| 業務に係る雑所得 | 会社員の副業として小規模に配信している、帳簿書類がない | 赤字は損益通算できない。青色申告はできない |
| 給与所得 | 事務所と雇用契約を結んでいる、指揮命令や時間・場所の拘束を受けている | 事務所が源泉徴収・年末調整をする |
国税庁のタックスアンサー(No.1500)でも、「副業に係る所得」は雑所得の例として挙げられています。ただ、副業かどうかだけで決まるわけではありません。
判定の基準:所得税基本通達35-2(令和4年改正)
国税庁は令和4年10月7日に所得税基本通達35-2を改正し、事業所得と業務に係る雑所得の判定の考え方を示しました(令和4年分以後に適用)。
- 原則:その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する
- 帳簿書類の保存がない場合:業務に係る雑所得に該当する(その所得の収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除く)
国税庁の改正通達の解説では、帳簿書類を保存していれば、一般的に営利性・継続性・企画遂行性があり、事業所得に区分される場合が多いとしています。ただし、次の場合は事業かどうかを個別に判断するとしています。
- 収入金額が僅少な場合:例えば、収入金額が例年300万円以下で、主たる収入に対する割合が10%未満の場合(「例年」はおおむね3年程度)
- 営利性が認められない場合:例えば、例年赤字で、かつ赤字を解消するための取組(収入を増やす営業活動など)をしていない場合
「社会通念」で判定するときの要素として、解説は、営利性・有償性、継続性・反復性、自己の危険と計算による企画遂行性、費やした精神的・肉体的労力、人的・物的設備、職歴・社会的地位・生活状況などを挙げています(最高裁昭和56年4月24日判決、東京地裁昭和48年7月18日判決を引用)。
副業としての判定の詳しい考え方は「副業は事業所得か雑所得か:帳簿と300万円の目安」で解説しています。
公表裁決・判決ではどう判断されたか
配信やそれに近い個人の活動について、所得区分が判断された公表裁決があります。
| 裁決・判決 | 活動 | 結論と主な理由 |
|---|---|---|
| 平成26年5月22日裁決 | 自宅でウェブカメラを使うライブチャット業務(海外の運営会社のサイト) | 無申告に対し、雑所得として決定処分。争点は必要経費の範囲で、衣服・美容費・部屋の装飾などは家事費として否認 |
| 平成26年9月1日裁決 | 大学の准教授が行う執筆・講演 | 雑所得。取材・営業の裏付けがなく企画遂行性が乏しい、労力が限定的、大学から生活に十分な給与を得ていた。赤字は損益通算できない |
| 令和8年2月6日裁決 | 講演、一般財団法人の理事などの業務 | 雑所得。連年1,000万円を超える経費で大幅な赤字が続き、給与収入で業務が継続されていた。安定した収益の可能性が認められない |
| 令和3年11月19日裁決 | 医師が病院等から受けた健康診断業務の報酬 | 給与所得。従事時間に応じて報酬が決まり、器具の貸与や交通費の支給を受け、業務内容・時間・場所の指定を受けていた |
| 平成15年3月11日裁決(裁決事例集No.65) | 弁護士の著書の印税 | 弁護士としての知識と経験に基づき、本来の職務と直接結び付くため、弁護士業の事業所得に含まれる |
これらから読み取れるポイントは次のとおりです。
- 給与で生活していて、配信は赤字続きだと、事業とは認められにくい
- 「事業として行うつもりだった」という本人の意思だけでは足りない(平成26年9月1日裁決は、目的や意思という主観的な要素は少なくとも重要な判断要素ではないとしています)
- 事務所などの指揮命令や時間・場所の拘束が強いと、給与所得とされる可能性がある
- 本業と内容が直接結び付く収入は、本業の事業所得に含まれることがある
区分によって申告はどう変わるか
| 項目 | 事業所得 | 業務に係る雑所得 |
|---|---|---|
| 赤字の損益通算 | できる(所得税法69条) | できない |
| 青色申告(特別控除、純損失の繰越控除) | 承認を受ければ使える | 使えない |
| 青色申告者の少額減価償却資産の特例 | 使える | 使えない |
| 家族への給与(青色事業専従者給与) | 要件を満たせば使える | 使えない |
| 現金主義の特例 | 青色申告の小規模事業者の特例あり | 前々年の収入が300万円以下なら、申告書に記載して適用できる |
| 書類の保存 | 帳簿・書類の保存義務あり | 前々年の収入が300万円を超えると、請求書・領収書などの保存が必要 |
| 収支内訳書などの添付 | 必要 | 前々年の収入が1,000万円を超えると必要 |
雑所得の扱いは、国税庁タックスアンサーNo.1500で確認できます。
配信者が申告で押さえておきたいこと
1. 帳簿をつけ、書類を保存する帳簿書類の保存は、事業所得と認められるための前提です。収入(プラットフォームごとの明細)と経費を、日付・相手・内容がわかる形で記録しましょう。
2. 開業届と青色申告承認申請書を出す本格的に配信を事業として行うなら、開業届と青色申告承認申請書の提出を検討します。期限は「開業届と青色申告承認申請書:出す時期と出し忘れたとき」をご覧ください。ただし、届出を出しただけで事業所得になるわけではなく、活動の実態で判断されます。
3. 源泉徴収された報酬を確認する企業案件や出演料など、個人への報酬は支払時に源泉徴収されていることがあります。支払調書や明細で源泉徴収税額を確認し、申告で精算します。
4. 海外プラットフォームの収入も申告する海外の運営会社から振り込まれる収入も、日本の居住者なら申告の対象です。平成26年の裁決の事案も、海外の運営会社のサイトでの報酬でした。消費税や外国の源泉税の扱いは「海外のプラットフォームからの収入と消費税・源泉税」で解説しています。
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オンライン記帳・申告サポートを見るまとめ
- 配信収入が事業所得か雑所得かは、社会通念上の事業といえる程度かで判定する
- 令和4年改正の通達35-2により、帳簿書類の保存がなければ原則として雑所得。保存していても、収入が僅少な場合や例年赤字で取組がない場合は個別に判断される
- 公表裁決では、給与で生活しながらの講演・執筆や、赤字が続く業務が雑所得とされ、損益通算が認められなかった
- 事務所の指揮命令下での報酬は、給与所得とされる可能性もある
- 区分で損益通算・青色申告の可否が変わるため、まず帳簿をつけて実態を整えることが出発点
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