配信者・クリエイター

配信者の衣装・服代は経費になる?裁決事例から考える普段着との境目

「配信用に服をたくさん買っている。服代は経費になる?」「コスプレ衣装は?」。見た目が大切な配信者・クリエイターにとって、服や衣装の費用は大きな悩みです。

結論からいうと、普段も着られる服は、配信で着ていても経費として認められにくいのが実情です。一方、配信専用で私生活では使わない衣装は、経費として説明できる可能性があります。ただし「これは経費になる」と言い切れる線引きはなく、個別の事情によって判断が分かれます。この記事では、裁決・判決の実例をもとに、その境目を考えます。

この記事の結論
  • 服は本来、生活のための支出(家事費)。仕事にも生活にも使う服は家事関連費で、仕事の部分を明らかに区分できる場合に限り経費になり得る(所得税法45条、所得税法施行令96条)
  • ライブ配信者の衣服・バッグ・時計について、特殊な衣装ではなく日常使うもので、私的に着たかどうか区分できないとして否認した裁決がある
  • 服飾品について、服装に費用をかけないと売上が上がらないという抽象的な主張を退けた裁判例がある
  • 経費として説明しやすいのは、配信・撮影専用で私生活では使わない衣装。保管・着用の記録と、案件との対応が大切

服代が経費になりにくい理由

服は、仕事がなくても誰もが買うものです。所得税法45条は、生活のための支出(家事費)と、生活と仕事の両方の性質をもつ支出(家事関連費)を原則として必要経費にしないとしています。家事関連費のうち経費にできるのは、主たる部分が仕事に必要で、その部分を明らかに区分できる場合のその部分などに限られます(所得税法施行令96条)。

配信で着た服でも、休日に着て出かけることができるなら、「どこまでが仕事か」を区分するのは困難です。ここが服代の難しさです。

裁決・判決の実例

ライブ配信者の衣服が否認された裁決

ウェブカメラを使って会員とライブチャットをする業務で報酬を得ていた人の公表裁決(国税不服審判所 平成26年5月22日裁決)では、本人が「会員からのアクセスを増やすため、業務に使用する衣服や水着などを購入した」と主張しました。本人は、同じ服を何回か着ていると飽きられるので大量に買って毎日着替えていた、とも説明しています。

しかし審判所は、次の理由で衣服などの購入費用を必要経費と認めませんでした。

支出審判所の判断の要旨
衣服・バッグ・時計など何ら特殊な衣装や小道具ではなく、日常使用するものとして一般に販売されているもの。購入しただけでは、業務で身に着けたのか私的に身に着けたのかを合理的に区分できない
若い女性向けブランドの服(「自分は普段おしゃれをしない」との説明)その事情があっても、業務上必要だった根拠にはならない
スーツケース・チェスト・ハンガー・ミシン・裁縫用品など(衣装関連)購入しただけでは、業務に使ったと認定できない
商品名と金額だけのリストや、商品画像の印刷物そもそも購入の事実を示す資料とは認められない

この裁決では、本人の説明が全体として一貫せず信用できないことも、否認の大きな理由になっています。

服飾品の「抽象的な主張」が退けられた判決

東京地裁平成25年10月17日判決(税務訴訟資料第263号-187)では、代理店業を営む人が「仕事用品」として計上したバッグや婦人服などの購入費用について、裁判所は、配偶者が使う服飾品などで一般には家事費に当たるとしました。仮に業務で使うことがあるとしても、服装や服飾品に多額の費用をかけなければ売上が上がらない、という抽象的な主張だけでは、業務上客観的に必要とは認めがたいと判断しています。

2つの事例から分かること

どちらの事例も、「服が仕事に役立つ」こと自体を否定しているわけではありません。否認の理由は、普段の生活でも使えるものであることと、仕事に必要だったことを具体的に示せなかったことです。裏を返せば、裁決が「特殊な衣装や小道具ではない」点を理由の一つに挙げていることからも、私生活では着ない衣装かどうかが一つの分かれ目になると考えられます。

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経費として説明しやすい服・しにくい服

区分例考え方
説明しやすいキャラクターの衣装、コスプレ衣装、着ぐるみ、舞台衣装、番組や企画のために作った特注の衣装私生活で着ることが通常考えにくい。企画・配信との対応を記録する
個別の事情で判断が分かれるPR案件の契約で着用が求められた服、ロゴ入りのチャンネルグッズの服契約内容や着用の実態で説明できるか。撮影後に普段着にするなら私的な部分がある
説明しにくい一般のブランド服、普段着、バッグ、時計、アクセサリー、靴私生活でも使えるため、家事費と判断されやすい

「説明しやすい」に入る衣装でも、自動的に経費になるわけではありません。実際にその衣装で配信・撮影した記録がなければ、裁決と同じく「購入しただけでは業務に使ったと認定できない」と言われるおそれがあります。

記録の残し方

  1. 購入の記録:通販の購入履歴や領収書(購入日・購入先・金額が分かるもの)を保存する。商品ページのスクリーンショットだけでは不十分
  2. 着用の記録:その衣装を着た配信・動画の日付とURLを、会計ソフトのメモ欄に残す
  3. 案件との対応:PR案件なら、契約書・指示書・投稿URLを一緒に保存する
  4. 保管の実態:衣装は撮影用として別に保管し、私服と混ぜない
  5. 普段着は入れない:迷う服は事業に入れないのが無難

美容や整形の費用は、さらに判断が厳しくなります。考え方は配信者の美容代・整形費用は経費になる?をご覧ください。配信者の経費の全体像は配信者・クリエイターの経費の考え方、撮影用の小道具や部屋の装飾は配信の機材・スタジオ・自宅の撮影スペースの経費処理で取り上げています。

法人の場合

法人で配信をしている場合、社長が私生活でも着られる服を会社の経費で買うと、役員への給与とされるおそれがあります。会社の衣装として管理する(会社で保管し、撮影でのみ使う)という実態が必要です。

まとめ

  • 服は本来家事費。配信で着ても、普段も着られる服は経費として認められにくい
  • ライブ配信者の衣服・バッグ・時計を、特殊な衣装ではなく私的な着用と区分できないとして否認した裁決がある
  • 「服にお金をかけないと売れない」という抽象的な主張は、裁判例でも退けられた
  • 説明しやすいのは配信専用で私生活では使わない衣装。購入・着用・案件との対応の記録を残す

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よくある質問

配信でしか着ていない服なら、経費にできますか?
「配信でしか着ていない」ことを説明できれば、経費として検討の余地はあります。ただ、街でも着られる一般的な服は、私的に着たかどうかを区分しにくく、公表裁決でも否認されています。衣装の保管場所、着用した配信の記録、私生活で使っていないことの説明が必要です。
ブランドの服を着ることが、チャンネルのイメージ上必要です。それでも経費になりませんか?
イメージ上必要という説明だけでは、認められにくいと考えてください。裁判例でも、服装に費用をかけないと売上が上がらないという抽象的な主張では、業務上客観的に必要とは認められないとされました。個別の事情によって判断が分かれますが、普段着として使えるものは慎重に扱うべきです。
企業から依頼されたPR案件で着る服を自分で買った場合は?
案件の契約内容として着用が求められ、その案件の撮影のために購入した服であれば、案件との対応を説明しやすくなります。契約書や指示書、撮影日、投稿のURLを保存しておきましょう。撮影後に普段着として使うなら、私的な部分があることになります。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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