メリット・デメリット

会社を増やすと増える税金|法人住民税の均等割と事業税、HDグループの試算

ホールディングス(HD)化で会社が増えると、法人税だけでなく地方税の負担も変わります。とくに、赤字でもかかる法人住民税の均等割は、会社の数と事務所の場所の数だけ増えます。一方、法人事業税の軽減税率は会社ごとに使えるため、事業の利益が各社に分かれていれば負担が下がる面もあります。

この記事では、会社を増やしたときの地方税を、均等割・法人税割・事業税・特別法人事業税・外形標準課税の順に整理し、仮のグループで試算します。国税の法人税については中小法人の軽減税率と会社の数、HDの維持費全体はHDの維持コストをご覧ください。

この記事の結論
  • 均等割は会社ごと・事務所のある自治体ごと。赤字でもかかり、23区内の小さな会社でも1社年7万円から
  • 均等割の区分は資本金等の額と従業者数。株式移転のHDは資本金等の額が大きくなり、区分が上がることがある
  • 法人税割は法人税額に比例するので、会社の数ではあまり変わらない
  • 事業税の軽減税率(年400万円以下3.5%など)は会社ごと。ただし3以上の都道府県に事務所がある資本金1,000万円以上の会社は軽減税率不適用法人
  • 外形標準課税は令和8年4月1日以後開始事業年度から、払込資本50億円超の親会社の100%子法人へ拡大。中小企業のHDグループは通常対象外

会社が増えると増える地方税

会社の数と地方税の関係
会社の数だけ増える
均等割赤字でも課税
申告書の作成会社ごと・自治体ごと
所得に比例する
法人税割法人税額×税率
事業税・特別法人事業税軽減税率の枠は会社ごと
固定でかかる均等割と、所得に比例する税を分けて考える

地方税のうち、所得に比例する税は、グループ全体の利益が同じなら、会社の数でそれほど変わりません。会社の数で確実に増えるのは、均等割と、申告・納付の手間です。

法人住民税の均等割

標準税率

均等割は、事務所等のある都道府県と市町村ごとに、資本金等の額と従業者数で決まる定額の税です(地方税法52条・312条)。標準税率は次のとおりです。

資本金等の額道府県民税市町村民税(従業者50人以下)市町村民税(従業者50人超)
1,000万円以下2万円5万円12万円
1,000万円超1億円以下5万円13万円15万円
1億円超10億円以下13万円16万円40万円
10億円超50億円以下54万円41万円175万円
50億円超80万円41万円300万円

出典:総務省 法人住民税。実際の税率は各自治体の条例によります。東京23区内だけに事務所がある場合は、両方の相当分を合わせて都税事務所に納めます(東京都主税局 法人事業税・法人都民税)。

仮のグループで試算する

東京23区内の同じオフィスに、HDと子会社2社がある例です。従業者はいずれも50人以下とします。

会社資本金等の額均等割(年)
HD1億円超10億円以下(株式移転で受け入れた子会社株式の取得価額が大きい)13万円+16万円=29万円
事業会社A1,000万円超1億円以下5万円+13万円=18万円
不動産会社B1,000万円以下2万円+5万円=7万円
合計54万円

HD化の前に事業会社Aだけだった場合と比べると、均等割だけで年36万円増えます。さらに、子会社が23区外の市や他の県にも事務所を持つと、その自治体の分も加わります。

株式移転で作ったHDは、登記上の資本金を小さくしても、税務上の資本金等の額が子会社株式の取得価額で決まるため、区分が上がることがあります。均等割の区分は、資本金等の額と、資本金と資本準備金の合計額のうち大きいほうで判定します。仕組みはHDの維持コストで解説しています。

法人税割

法人住民税には、法人税額に応じた法人税割もあります。東京23区内なら、資本金等が1億円以下などの法人の標準税率は7.0%です。法人税額に比例するため、会社を分けても大きくは変わりません。

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法人事業税と特別法人事業税

軽減税率は会社ごと

外形標準課税の対象でない普通法人の事業税(所得割)は、所得の段階ごとに税率が上がります(東京都の標準税率、令和4年4月1日以後開始事業年度)。

所得の区分標準税率東京都の超過税率
年400万円以下3.5%3.75%
年400万円超800万円以下5.3%5.665%
年800万円超7.0%7.48%

これに加えて、事業税の額(標準税率で計算した基準法人所得割額)の37%が特別法人事業税としてかかります(東京都主税局 特別法人事業税)。

段階の枠は会社ごとなので、グループの所得2,400万円が1社にある場合と、3社に800万円ずつある場合で、標準税率の所得割を比べると次のとおりです。

1社に2,400万円3社に800万円ずつ
所得割14万円+21.2万円+112万円=147.2万円35.2万円×3社=105.6万円
特別法人事業税(37%)約54.5万円約39.1万円

ただし、これは3社がそれぞれ実際の事業で所得を得ている場合の話です。均等割の増加や維持費を差し引くと、差は小さくなります。実態のない会社に所得を付け替えると、寄附金や同族会社の行為計算否認(法人税法132条)の問題になる点は、法人税と同じです。

軽減税率不適用法人

3以上の都道府県に事務所等を設けて事業を行う法人で、資本金が1,000万円以上のものは、軽減税率が使えず、所得の全額に最も高い税率がかかります(地方税法72条の24の7)。全国に営業所を持つ事業会社を分社化するときは、どの会社に事務所を置くかで判定が変わります。

外形標準課税の拡大と100%子法人

外形標準課税は、原則として資本金1億円超の法人が対象です。令和6年度の改正で、次の二つの見直しが行われました(東京都主税局 外形標準課税の対象法人の見直し)。

見直し対象適用
減資への対応前事業年度に外形標準課税の対象で、資本金1億円以下・払込資本10億円超の法人令和7年4月1日以後開始事業年度
100%子法人等への対応払込資本50億円超の法人(特定法人)の100%子法人等で、資本金1億円以下・払込資本2億円超の法人令和8年4月1日以後開始事業年度

払込資本は、資本金と資本剰余金の合計額です。中小企業のHDグループで、親会社の払込資本が50億円を超えることは多くありません。ただし、上場企業などの大きなグループに会社を売却して100%子会社になる場合は、売却後の税負担として確認が必要です(HD体制なら事業の一部だけ売れる)。

銀行から見た地方税

銀行は、決算書の租税公課や未払法人税等とともに、納税証明書で地方税の滞納がないかも確認します。均等割は金額が小さいため見落とされがちですが、休眠状態の子会社で申告や納付が漏れていると、グループの融資の審査で説明を求められることがあります。

会社を増やすときは、税率の差だけでなく、会社1社あたりの固定費(均等割、会計・申告の報酬、登記など)を事業計画に入れておきます。著書のモデルでは、債務償還年数の分母は(経常利益+減価償却費-法人税等)です。グループで見た固定費が増えれば、その分だけ返済能力の見え方も下がります。事業を分ける判断は事業ごとにリスクを分けるもあわせてご覧ください。

まとめ

  • 会社を増やすと確実に増えるのは均等割。会社ごと・自治体ごとで、赤字でもかかる
  • 株式移転のHDは資本金等の額が大きくなり、均等割の区分が上がることがある
  • 法人税割は法人税額に比例し、会社の数ではあまり変わらない
  • 事業税の軽減税率は会社ごとだが、3以上の都道府県に事務所がある資本金1,000万円以上の会社は軽減税率不適用法人
  • 外形標準課税は払込資本50億円超の親会社の100%子法人へ拡大。大きなグループへの売却時に確認する
  • 税率の差を目的に会社を増やさない。固定費の増加を事業計画に入れる

クレフティの事業承継・M&A支援では、HD化や分社化を検討する段階で、会社の数と地方税・維持コストの試算、金融機関への説明までご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士やコンサルタントが対応します。

よくある質問

HDと子会社2社が同じ東京23区内のオフィスにある場合、均等割は1社分で済みますか?
済みません。均等割は法人ごとに課されるため、同じ場所に事務所があっても3社それぞれに均等割がかかります。資本金等の額が1,000万円以下で従業者50人以下なら、23区内では1社あたり年7万円(道府県民税相当2万円+市町村民税相当5万円)、3社で年21万円です。
事業税の軽減税率(年400万円以下3.5%など)は、どの会社でも使えますか?
外形標準課税の対象でない普通法人は原則として使えますが、3以上の都道府県に事務所等を設けて事業を行う資本金1,000万円以上の法人は、軽減税率不適用法人として所得の全額に最も高い税率(標準税率7.0%)がかかります(地方税法72条の24の7)。子会社ごとに判定します。
中小企業のHDの子会社も、外形標準課税の対象になりますか?
令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、資本金1億円以下でも、払込資本(資本金+資本剰余金)が50億円を超える法人などの100%子法人で、自社の払込資本が2億円を超えるものは外形標準課税の対象になりました。親会社の払込資本が50億円以下の中小企業のHDグループは、通常この拡大の対象になりません。

※本記事は2026年11月6日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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