地方銀行の2026年4〜9月期(中間期)の決算発表が始まりました。2026年11月6日、八十二長野銀行は、中間期の純利益が過去最高になったと発表し、2027年3月期の通期の純利益の予想を730億円から800億円に引き上げました。日本経済新聞(11月6日)は、金利上昇で貸出と預金の利ざやが広がっていると報じています。同じ日には富山銀行も、中小企業への融資が堅調で貸出金利息が伸びたと発表しました。
銀行の利益が伸びている理由の大きな部分は、借り手が払う利息です。この記事では、八十二長野銀行の決算資料に出ている数字をもとに、銀行の貸出金利がどれくらい上がっているかを確かめ、借り手として自社の金利で何を確認しておくかを考えます。
- 八十二長野銀行の中間期は、経常利益604億円(前年同期比44.0%増)、純利益400億円(同34.6%増)。通期の純利益予想を800億円に上方修正
- 銀行単体・国内部門の貸出金利回りは1.34%で前年同期より0.29ポイント上昇。預金等利回りの上昇(0.15ポイント)を上回り、利ざやが広がった
- 借り手にとっては、貸出金利の引き上げがすでに決算に表れているということ。自社の借入の金利が、この1年でどれだけ上がったかを確かめておきたい
- 銀行が貸出を伸ばしたい局面では、決算書が良く、情報を早く出す会社ほど条件の相談がしやすい。金利交渉の準備を今のうちに
決算資料で示された内容
八十二長野銀行の決算短信と業績予想の修正のお知らせ(いずれも2026年11月6日)から、借り手に関係の深い数字を抜き出しました。
| 項目 | 2026年4〜9月期 | 前年同期・前回予想 |
|---|---|---|
| 経常利益(連結) | 604億円 | 419億円(44.0%増) |
| 中間純利益(連結) | 400億円 | 297億円(34.6%増) |
| 貸出金利息(連結) | 519億円 | 414億円 |
| 預金利息(連結) | 157億円 | 92億円 |
| 貸出金利回り(単体・国内部門) | 1.34% | 1.05%(+0.29ポイント) |
| 預金等利回り(単体・国内部門) | 0.32% | 0.17%(+0.15ポイント) |
| 総資金利鞘(単体・国内部門) | 0.43% | 0.29%(+0.14ポイント) |
| 貸出金残高(単体・9月末) | 6兆8,820億円 | 3月末から933億円増 |
| 通期の純利益予想(連結) | 800億円 | 前回予想730億円 |
出典:八十二長野銀行「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」「通期業績予想の修正および期末配当予想の修正(増配)に関するお知らせ」(2026年11月6日)。億円未満は切り捨て。
上方修正の理由として、銀行は、単体の資金利益と株式等の売却益が当初の予想を上回る見込みであることを挙げています。日本経済新聞(11月6日)によると、同行の幹部は、金利の引き上げが想定より早く、収益への貢献が大きくなったと説明しました。
ほかにも、富山銀行は中間期の純利益が前年同期比31%増で、中小企業向け融資が堅調で貸出金利息が伸びたと発表しています。静岡県の沼津信用金庫は、日銀の利上げを受けて貸出基準金利を0.25%引き上げました(いずれも日本経済新聞 11月6日)。
銀行の利益が増える仕組みと、借り手の利息
銀行の本業の利益は、ざっくり言えば「貸出の利息 − 預金の利息 − 経費」です。日銀が政策金利を上げると、短期プライムレートや各行の基準金利が上がり、変動金利の貸出の金利が順に上がります。一方、預金金利も上がりますが、上げ幅は貸出ほど大きくないことが多く、その差が利ざやの拡大として決算に表れます。
八十二長野銀行の数字でいえば、国内の貸出金利回りは1年で0.29ポイント、預金等利回りは0.15ポイント上がりました。貸出金利回りは銀行全体の平均なので、1社ごとの金利の動きとは違いますが、変動金利の借入の多くが、この1年で0.3ポイント前後上がっていてもおかしくないという目安になります。
| 借入残高 | 金利が0.3ポイント上がったとき | 0.5ポイント上がったとき |
|---|---|---|
| 5,000万円 | 年15万円の利息増 | 年25万円の利息増 |
| 1億円 | 年30万円の利息増 | 年50万円の利息増 |
| 3億円 | 年90万円の利息増 | 年150万円の利息増 |
(残高が1年間変わらないと仮定した単純計算)
金利の変わる日や短期プライムレートとの関係は、短期プライムレートが2.625%に、11月2日から順次改定で解説しています。
借り手が自社の金利で確かめること
ここからは、税理士・公認会計士として、また融資を受けて事業を続けてきた立場からの考えです。
銀行の決算が良いことは、借り手にとって悪い話ではありません。体力のある銀行は、貸出を伸ばそうとします。実際に八十二長野銀行の貸出金は半年で933億円増えており、日本経済新聞はAI関連など企業の設備投資の需要を取り込んでいると伝えています。問題は、その利益の一部は自社が払っている利息だという視点を持てているかどうかです。
| やること | 具体的な内容 |
|---|---|
| 借入の一覧を作る | 金融機関ごと・借入ごとに、残高、金利、固定か変動か、基準金利、次の見直し日を一覧にする |
| 1年前と比べる | 1年前の金利と今の金利を並べ、上がった幅を確認する。銀行の貸出金利回りの上がり方(八十二長野銀行は国内0.29ポイント)と比べる |
| 返済余力を計算し直す | 利息の増加分を入れて、債務償還年数や返済の余力を計算し直す |
| 条件の根拠を聞く | 金利が上がった借入について、基準金利の改定によるものか、上乗せ幅(スプレッド)の見直しかを担当者に確認する |
| 相談の材料をそろえる | 直近の決算書と試算表、資金繰りの見通し、ほかの金融機関の条件を準備する |
著書のモデルでは、債務償還年数を(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)で計算し、10年以内を健全の目安としています。利息が増えると経常利益が減り、この年数が延びます。金利が上がる局面ほど、決算の数字を早く固めて銀行に見せることが、条件の良い融資につながります。
金利交渉は「上がった理由」を聞くところから
金利の引き上げを伝えられたとき、すぐに応じるか断るかの二択で考える必要はありません。基準金利の改定に連動したものなのか、上乗せ幅を広げたものなのかで、相談のしかたが変わります。上乗せ幅が広がっているなら、決算の改善や担保・保証の状況を説明して、見直しの余地がないかを聞いてみる価値があります。交渉の進め方は融資の金利交渉で、金利上昇局面の借入の考え方は金利上昇局面で中小企業がやるべき借入対策で解説しています。
銀行の決算資料は、ホームページの投資家向け情報で誰でも見られます。取引している銀行の「利鞘」の表を一度見ておくと、担当者との会話でも、金利の動きを数字で話せるようになります。
今後も注意して見ていきたいこと
- ほかの地銀・信金の中間決算:11月中旬にかけて地方銀行の決算が出そろいます。貸出金利回りの上がり方は銀行によって違うので、取引行の数字を確認しておきたいところです。預金の獲得競争の影響は預金獲得競争が激化、地銀の一部で預貸率90%超で取り上げました
- 債券の入れ替えの損失:八十二長野銀行の単体では、国債等の債券の損益が約123億円の損失となる一方、株式等の売却益が約271億円ありました。低い利回りの債券を売って入れ替える動きが、今後の銀行の収益と貸出の姿勢にどう影響するか
- 日銀の次の判断:日銀は10月30日に政策金利を1.25%に据え置き、物価2%への到達を判断しました(日銀が1.25%据え置きも「物価2%に到達」と判断)。次の利上げがあれば、貸出金利回りはもう一段上がります
金利の行方は、借り手にはコントロールできません。コントロールできるのは、自社の決算書と、金融機関に出す情報の質と速さです。銀行の決算資料を、自社の金利を確かめる材料として使ってみてください。
まとめ
- 八十二長野銀行の中間期は純利益400億円で過去最高、通期の純利益予想を800億円に上方修正
- 国内の貸出金利回りは1.34%で前年から0.29ポイント上昇し、預金等利回りの上昇を上回った
- 銀行の利益の伸びは、借り手が払う利息の増加でもある。1億円の借入なら0.3ポイントで年30万円の負担増
- 借入の一覧を作り、1年前と比べ、返済余力を計算し直す
- 金利の引き上げを伝えられたら、基準金利の改定か上乗せ幅の見直しかを確認し、決算書をそろえて相談する
自社の借入の金利や、銀行から決算書がどう見えているかを確認したい方は、お気軽にご相談ください。
