融資・資金調達

預金獲得競争が激化、地銀の一部で預貸率90%超|ゆうちょ限度額の論争と11月2日の金利改定。借り手は預金とどう付き合うか

日本経済新聞(2026年10月31日)が、ゆうちょ銀行が求める通常貯金の預入限度額の撤廃をめぐり、民間銀行との対立が始まっていると報じました。背景にあるのは銀行の預金獲得競争で、10月30日の郵政民営化委員会の会合では、地銀の一部で預貸率が90%を超えていることが示されたとされています。

同じ時期に、預金金利と貸出の基準金利もそろって動きます。三菱UFJ銀行は2026年11月2日に、預金金利と短期プライムレートを引き上げます。この記事では、預金の争奪がなぜ借り手にも関係するのか、融資を受ける会社が手元資金と預金取引をどう考えるかを整理します。

この記事の結論
  • 貸出の伸びに預金が追いつかず、預貸率は上昇。地銀の一部では90%超と報じられ、銀行にとって預金の価値が高まっている
  • ゆうちょ銀行は通常貯金の1,300万円の限度額の撤廃を要望し、民間の金融機関は反発。結論はまだ出ていない
  • 11月2日には、三菱UFJ銀行の短期プライムレートが2.625%に、定期預金1年物が0.700%に上がる。借入と預金の両方の金利が動く
  • 借り手は、預金金利と借入金利の差を金額で確認し、残す手元資金の水準を決める。融資の条件に預金が付くときは、使えるお金に対する実質の金利で判断したい

報道・発表で示された内容

項目示された内容
ゆうちょ銀行の要望通常貯金の預入限度額1,300万円の撤廃を要望。超過分に利息がつかない顧客が100万人超いるとして、利便性の改善を主張
民間の反応10月30日の郵政民営化委員会の非公開の会合で、全国銀行協会、全国地方銀行協会、全国信用金庫協会などが意見を表明。資金供給の余力への影響を懸念
預貸率上昇しており、地銀の一部では90%超と示された
預金の動き2023年3月〜2026年3月の3年間で、国内銀行の預金は32兆円増、ゆうちょ銀行の貯金は6.6兆円減(ゆうちょ銀行の資料)
ゆうちょ銀行の特徴融資業務は提供しておらず、集めた貯金は主に有価証券で運用。貯金残高は2026年3月末で186兆円
今後郵政民営化委員会が3年ごとの検証のなかで検討。議論は難航が避けられないとの見方

出典:日本経済新聞「ゆうちょ、貯金限度額の撤廃要望 カギ握る地域インフラと8年前の宿題」(2026年10月31日)。

あわせて、11月の金利改定を各行の発表などで確認しました。

金融機関項目変更前変更後改定日
三菱UFJ銀行短期プライムレート2.375%2.625%11月2日
三菱UFJ銀行普通預金0.40%0.50%11月2日
三菱UFJ銀行定期預金1年0.500%0.700%11月2日
三菱UFJ銀行定期預金5年1.000%1.100%11月2日
ゆうちょ銀行通常貯金0.400%0.500%11月9日
京都銀行定期預金1年-0.65%11月2日
南都銀行定期預金1年-0.6%11月2日

出典:三菱UFJ銀行短期プライムレート・普通預金・定期預金の各リリース、ゆうちょ銀行「貯金金利の引き上げについて」、京都銀行・南都銀行は日本経済新聞(2026年10月30日)。金利は税引前。

預金の争奪は、なぜ借り手に関係するのか

銀行の貸出は伸びています。日本経済新聞(2026年10月31日朝刊)は、貸出金残高の伸び率が今春以降、前年度比6%前後で推移していると報じました。貸出が預金より速く伸びれば、預貸率は上がります。

銀行にとって、預金は貸出の元手です。金利がほぼない時代は預金が余っていましたが、今は事情が違います。ここから借り手に関係しそうなことを、3つ挙げます。

銀行側の変化借り手に起こりうること
預金の調達費用が上がる新規の融資や書き換えで、金利の上乗せの話が出やすくなる
預金の重要性が高まる売上の入金や預金を自行に置く取引先が、より重視される可能性
貸出の元手に余裕がない銀行が出る融資の優先順位づけが強まり、案件を選ぶ動きが広がる可能性

この表は、報道された事実から私が考えた見立てで、すべての銀行に当てはまるわけではありません。実際、日銀は展望レポートで金融機関の貸出態度は積極的だとしています。ただ、銀行の貸出余力に限りがあるという話は、銀行の貸出余力に限界、ファンドが企業融資の担い手にでも取り上げました。預貸率は、その余力を見るひとつの目安です。

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融資を受ける会社がやること

ここからは、税理士・公認会計士として、また融資を受けて事業を続けてきた立場からの考えです。

やること確認する内容
預金と借入の金利差を出す手元に置いている資金に、年いくらの費用がかかっているか
残す手元資金の水準を決める月商の何か月分、返済と納税の何か月分を残すか
入金口座と預金の置き場所を見直すメインの金融機関に売上の入金が見えているか。利息のつかない口座に置いたままになっていないか
融資の条件に預金が付いたら確認する引き出しの制限の有無と、実質の金利

1. 預金と借入の金利差を金額で見る

借入金利が2.5%、定期預金が0.7%なら、差は1.8%です。5,000万円を預金に置いて同じ額を借りていれば、年90万円の費用がかかっている計算になります。

ただし、これは「すぐ返すべきだ」という話ではありません。手元資金は資金繰りの安全弁であり、銀行の評価の材料でもあります。一度返した借入を、必要なときに再び借りられるとは限りません。まず残す水準を決め、それを超える分だけ返済を検討する順番がおすすめです。不動産投資の場合は、繰り上げ返済のメリット・デメリットもあわせてご覧ください。

なお、法人が受け取る預金利息には、所得税及び復興特別所得税の15.315%が源泉徴収されます。この分は法人税の計算で税額控除の対象になります。申告のときに漏れないよう、通帳の入金額ではなく税引前の利息で記帳しておきましょう。

2. 預金は、融資の話のなかで使う

預金の価値が高まっている今は、預金取引が交渉の材料になりやすいと考えられます。売上の入金口座をまとめる、一定の預金を置く、といった取引の広がりと引き換えに、金利の条件を相談する余地があります(融資の金利交渉)。

反対に、取引を分散しすぎると、どの銀行からも会社の資金の流れが見えなくなります。信用金庫と地方銀行では得意な分野も違います。規模と性格の違う金融機関に役割を持たせておくことが大切です(信用金庫と地方銀行の違い)。

3. 拘束される預金は、実質の金利で判断する

融資の条件として定期預金を求められることがあります。たとえば1億円を2.5%で借り、そのうち2,000万円を引き出せない0.7%の定期預金に置くとします。利息は250万円で、受取利息は14万円です。実際に使える8,000万円に対する負担は年236万円で、実質の金利は約2.95%になります。

過当な歩積・両建預金は、金融庁の監督指針で、防止すべき取引として挙げられています。融資の見返りの預金がすべて不適切というわけではありませんが、拘束の有無と理由は確認し、実質の金利で他の条件と比べてください。

今後も注意して見ていきたいこと

  • 郵政民営化委員会の検証:限度額の議論がどう決着するか。2018年は、通常貯金と定期性を合わせて1,300万円から各1,300万円に広げた
  • ゆうちょ銀行の定期性貯金:引き上げの対象と金利は確定次第公表される
  • 各行の4〜9月期決算:預金の増減、預貸率、利ざやがどう動いたか
  • 大手行以外の短期プライムレート:取引先の改定日と幅
  • 12月の日銀の判断:再び利上げがあれば、預金と貸出の金利が次にいつ動くか(日銀の10月30日の決定)

まとめ

  • 貸出の伸びを背景に預貸率が上がり、地銀の一部では90%超と報じられた
  • ゆうちょ銀行の1,300万円の限度額撤廃の要望に民間が反発し、議論はこれから
  • 11月2日に三菱UFJ銀行の短期プライムレートは2.625%、定期預金1年物は0.700%に上がる
  • 預金と借入の金利差を金額で確認し、残す手元資金の水準を決めてから返済を考える
  • 融資に預金が付くときは、使えるお金に対する実質の金利で判断する

手元資金の水準や金融機関との取引の組み立て方を見直したい方は、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

よくある質問

預貸率とは何ですか?
銀行が集めた預金に対して、どれだけ貸出をしているかを示す割合です。100億円の預金で90億円を貸していれば90%です。貸出が伸びて預金が追いつかないと上がります。預貸率が高い銀行にとっては、新しい預金を集めることの価値が高まります。
預金金利が上がったので、借入を返さずに定期預金に置いたほうが得ですか?
利息だけを比べれば、多くの場合は借入金利のほうが預金金利より高いので、預金に置いておくことには費用がかかります。ただし、手元資金は資金繰りの安全弁で、銀行の評価にも関わります。一度返すと再び借りられるとは限らないため、月商の何か月分を手元に残すかを決めたうえで、それを超える分だけ返済を検討するのが現実的です。
融資の条件として定期預金を求められたら、どうすればよいですか?
まず、その預金が解約や引き出しに制限のあるものか、担保になるのかを確認します。使えない預金があると、実際に使えるお金に対する金利の負担は表面の金利より重くなります。過当な歩積・両建預金は、金融庁の監督指針でも防止すべき取引として挙げられています。条件に納得できない場合は、理由を確認し、他の金融機関の条件とも比べてみてください。

※本記事は2026年10月31日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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