消費税・インボイス

インボイス登録はするべき?取引先と売上の構成で判断する方法

「インボイス登録はしたほうがいいの?」。フリーランスや小さな会社の方から、今もいちばん多く受ける質問のひとつです。

答えは、誰に売っているかで決まります。登録すると消費税を納めることになり、登録しないと取引先の負担が増える可能性があります。この記事では、令和8年10月以降の制度(経過措置の70%への縮小、個人の3割特例)を踏まえて、判断の手順を説明します。

この記事の結論
  • 一般消費者・簡易課税や免税事業者の取引先が中心なら、登録しない選択も十分あり得る
  • 本則課税の会社が中心なら、登録を求められやすい。登録していない相手からの仕入れは、取引先側で令和8年10月から70%しか控除できない
  • 登録すると消費税を納める。個人は令和9年分・10年分の3割特例、または簡易課税で負担を抑えられる場合がある
  • 登録・取りやめには15日の期限ルールと、取りやめても2年は免税に戻れない場合がある

判断の手順:売上の相手を分ける

まず、去年1年分の売上を、相手ごとに次の3つに分けてみてください。

売上の相手インボイスの必要性理由
一般消費者(個人のお客さま)低い消費者は仕入税額控除をしない
簡易課税・2割特例・3割特例・免税事業者の事業者低い仕入れのインボイスの有無で、相手の納税額が変わらない
本則課税の会社・個人事業主高いインボイスがないと、相手の控除できる消費税が減る

3つ目の割合が大きいほど、登録を求められる可能性が高くなります。取引先が本則課税かどうか分からない場合は、取引先の規模(売上5,000万円を超える会社は簡易課税を使えない)を目安にしつつ、直接確認するのが確実です。

登録しない場合:取引先の負担

インボイス登録をしていない相手からの仕入れは、原則として仕入税額控除ができません。ただし経過措置により、仕入税額相当額の一定割合を控除できます(インボイスQ&A問113)。

課税仕入れの時期取引先が控除できる割合
令和5年10月1日〜令和8年9月30日80%
令和8年10月1日〜令和10年9月30日70%
令和10年10月1日〜令和12年9月30日50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日30%
令和13年10月1日以後0%

たとえば、税抜50万円(消費税5万円)の仕事を登録していないフリーランスに頼んだ場合、令和8年10月以降、取引先が控除できるのは5万円×70%=3万5,000円です。1万5,000円が取引先の負担になり、この差は年々大きくなります。また、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、一の相手からの仕入れが年1億円(税込)を超える部分は経過措置の対象外になりますが、小規模な取引では問題になることは少ないでしょう。

取引先から値下げを求められることもありますが、公正取引委員会などが公表している「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」では、取引条件の見直しにあたって独占禁止法などで問題となる行為の考え方が示されています。値付けと交渉については免税事業者の値付けと取引先との交渉をご覧ください。

登録する場合:自分の負担

登録すると、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者になり、消費税の申告・納付が必要です(タックスアンサーNo.6501)。負担は計算方法で大きく変わります。

個人事業主の3割特例(令和9年分・10年分)

2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間で終わり、個人事業主は令和8年分が最後です。その後、個人事業主に限り、令和9年分・令和10年分は、売上の消費税の7割を控除できる3割特例が設けられました(インボイスQ&A問114-2)。基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどが条件で、事前の届出は不要、申告書に付記して使います。法人は対象外です。詳しくはインボイスの2割特例はいつまで?をご覧ください。

計算例:個人のデザイナー(税抜売上600万円、消費税60万円)

計算方法納める消費税の目安
3割特例(令和9年分・10年分)60万円×30%=18万円
簡易課税(サービス業=第5種、みなし仕入率50%)60万円×(1−50%)=30万円
本則課税(仕入れ・経費の消費税が10万円の場合)60万円−10万円=50万円

(地方消費税を含めた概算です。実際の計算は、端数処理などで変わります。)

3割特例の期間が終わった令和11年分以降は、簡易課税か本則課税になります。簡易課税の選び方は簡易課税は選ぶべき?で解説しています。

登録・取りやめのルール

手続き期限・ルール出典
免税事業者の登録令和11年9月30日までの日を含む課税期間中は、登録申請書に提出日から15日以降の登録希望日を書けば、その日から登録・課税事業者インボイスQ&A問7
登録をやめる登録取消届出書を提出。翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに出せば翌課税期間から、過ぎると翌々課税期間からインボイスQ&A問13
免税に戻れない期間令和5年10月1日を含まない課税期間に上記の経過措置で登録した場合、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは免税事業者に戻れないインボイスQ&A問7・問13
公表登録すると、氏名・名称、登録番号などが国税庁の公表サイトに載るインボイスQ&A問19

個人事業主の場合、12月31日が日曜日などでも、15日前の期限は延長されません。取りやめについてはインボイス登録をやめて免税事業者に戻れる?も参考にしてください。

ケース別の目安

ケース考え方
美容室・飲食店・個人向けの教室お客さまの大半が消費者なら、登録しない選択が多い。法人の接待利用が多い店は検討
企業から仕事を受けるフリーランス取引先が本則課税なら登録を求められやすい。3割特例・簡易課税での負担を試算して判断
ネット販売・ハンドメイド作家販売先が消費者中心か、卸先(事業者)が多いかで分かれる
売上1,000万円超が見込まれる2年後にはいずれ課税事業者。先に登録しても負担の差は小さいことがある(フリーランスの売上が1,000万円を超えたら)
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まとめ

  • インボイス登録の判断は、売上の相手(消費者・簡易課税等の事業者・本則課税の事業者)の割合で考える
  • 登録しない場合、取引先が控除できるのは令和8年10月から70%。差額は年々大きくなる
  • 登録する場合、個人は令和9年分・10年分の3割特例、または簡易課税で負担を試算する
  • 登録・取りやめの15日ルールと、2年間免税に戻れない場合に注意する

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よくある質問

インボイス登録をしないと、取引を切られますか?
法律で取引が禁止されるわけではありません。取引先が本則課税の会社だと、登録していない相手からの仕入れは控除できる消費税が経過措置の割合(令和8年10月1日から70%)に限られるため、値下げや登録を求められることがあります。一般消費者や、簡易課税・免税事業者の取引先が中心なら、影響は小さいことが多いです。
登録したら、どれくらい消費税を納めることになりますか?
計算方法によって変わります。個人事業主で基準期間の課税売上高が1,000万円以下などの条件を満たせば、令和9年分・令和10年分は売上の消費税の3割を納める3割特例が使えます。そのほか、簡易課税ならみなし仕入率に応じた額、本則課税なら売上の消費税から仕入れの消費税を引いた額です。
一度登録したら、やめられますか?
登録取消届出書を出せばやめられます。原則として提出した日の属する課税期間の翌課税期間の初日に登録の効力がなくなりますが、翌課税期間の初日から起算して15日前の日を過ぎて出すと、翌々課税期間からになります。また、令和5年10月1日を含まない課税期間に経過措置で登録した免税事業者は、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは免税事業者に戻れません。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
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