自宅で仕事をしている個人事業主やフリーランスの方にとって、毎月の家賃は大きな支出です。「仕事にも使っているのだから、一部は経費にできるはず」と考えるのは自然なことで、実際に一部を経費にすることは認められています。
問題は「いくら(何割)」にするかです。インターネットでは「3割」「5割まで」などの数字も見かけますが、法令に決まった割合はありません。この記事では、賃貸の自宅の家賃を経費にするときのルールと、按分(あんぶん)の割合の決め方、否認された例、記録の残し方を解説します。
- 家賃のうち、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合に、その部分が経費になる(所得税法施行令96条)
- 決まった割合はない。仕事専用の部屋の床面積、使用時間など、説明できる基準で按分する
- 業務に必要な部分が50%以下でも、明らかに区分できればその部分は経費にできる(所得税基本通達45-2)
- 根拠を示せないまま50%を超える割合を主張し、50%を超える部分が認められなかった裁決がある
- 住宅用の家賃は消費税が非課税。消費税の仕入税額控除の対象にはならない
家賃を経費にできるルール
所得税法では、生活のための支出(家事費)は経費になりません。ただ、自宅の家賃のように、生活と仕事の両方に使う支出(家事関連費)については、所得税法施行令96条が次の場合に経費にできるとしています。
- 1号:主たる部分が業務の遂行上必要で、かつ、その必要な部分を明らかに区分できる場合の、その部分
- 2号:青色申告者について、取引の記録などに基づいて、業務の遂行上直接必要だったことが明らかにされる部分
さらに、国税庁の所得税基本通達では、次のように取り扱いを示しています。
- 45-1:「主たる部分」などの判定は、業務の内容、経費の内容、家族や使用人の構成、店舗併用の家屋などの資産の利用状況を総合して判断する
- 45-2:「主たる部分」が業務に必要かどうかは、業務に必要な部分が50%を超えるかどうかで判定する。ただし、50%以下であっても、必要な部分を明らかに区分できれば、その部分を経費にして差し支えない
つまり、「50%を超えないと経費にできない」わけではありません。大切なのは、仕事に使っている部分を、根拠をもって区分できるかどうかです。
按分の割合の決め方
基本は床面積
もっとも説明しやすいのは、仕事専用の部屋の床面積で按分する方法です。
たとえば、家賃12万円、専有面積60㎡の2LDKで、そのうち10㎡の洋室を仕事専用にしている場合は、12万円×10÷60=月2万円が経費の目安になります。
按分の基準の例
| 基準 | 向いている場合 | 注意点 |
|---|---|---|
| 床面積 | 仕事専用の部屋がある | 間取り図で面積を確認できるようにする。家族が使う時間があれば専用とは言いにくい |
| 床面積×使用時間 | リビングの一角など、生活と仕事で同じ場所を使う | 何時間仕事に使っているかの記録が必要。区分の説明が難しく、判断が分かれやすい |
| 使用日数 | 週に決まった日だけ自宅で仕事をする | 外の事務所やコワーキングと併用している場合など |
仕事専用の部屋がない場合でも、区分の根拠を示せれば経費にできる可能性はあります。ただ、生活の場と重なるほど説明が難しくなります。
根拠のない割合が否認された裁決例
国税不服審判所の平成31年3月28日裁決(裁決事例集No.114)では、自宅兼事務所の賃料と水道光熱費の按分が争われました。
- 請求人は、事務所として使った割合を、ある時期は67%、その後は86%と主張し、その割合で経費にすべきだとした
- 税務署の処分では、賃料と水道光熱費の50%が経費とされていた
- 請求人は審判所に対し、一部屋は事務所専用だったが、残りの部分は生活の部分と事務所の部分を区別していなかったと答えた
- 審判所は、その説明からは事務所の割合が50%を超えるかどうかが明らかにならず、ほかの証拠からも認められないとして、50%を超える部分は経費にできないと判断した
この事例からわかるのは、主張する割合を裏づける証拠がなければ認められないということです。同じ裁決では、自宅兼事務所の家財の損害保険料も、私的な家財が対象であるとして家事上の経費とされています。
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オンライン記帳・申告サポートを見る根拠として残しておくもの
按分の割合は、税務調査で質問されたときに説明できることが大切です。次のものを残しておきましょう。
- 賃貸借契約書と間取り図:全体の床面積と、仕事部屋の床面積が分かるもの
- 仕事部屋の写真:机、パソコン、書類棚など、仕事専用で使っていることが分かるもの
- 按分の計算メモ:「〇㎡÷〇㎡=〇%」と、いつからその割合にしたか
- 使用時間で按分する場合は、その記録:カレンダーや業務日報など
引っ越しや、家族構成・働き方の変化で使い方が変わったら、割合も見直します。
そのほかの注意点
帳簿のつけ方
家賃の支払いを全額いったん「地代家賃」で記帳し、年末に生活分を事業主貸に振り替える方法と、毎月事業分だけを経費にする方法があります(事業主貸・事業主借とは)。
消費税は非課税
契約で住宅用とされている家賃は消費税が非課税です(国税庁タックスアンサーNo.6226)。所得税で経費にする部分があっても、消費税の仕入税額控除はできません。
契約の内容も確認を
居住用の賃貸借契約では、事業での使用について定めがあることがあります。来客や看板の設置など、住まい以外の使い方をする場合は、契約の内容を確認しておきましょう。
まとめ
- 自宅の家賃は、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合に、その部分が経費になる
- 決まった割合はない。床面積や使用時間など説明できる基準で按分する
- 50%以下でも明らかに区分できれば経費にできる。逆に根拠のない高い割合は否認される
- 間取り図・写真・計算メモを残し、使い方が変わったら見直す
- 住宅用の家賃は消費税が非課税
電気代やネット代の按分は自宅の電気代・水道代・ネット代・スマホ代の按分の仕方、持ち家の場合は持ち家で仕事をしている場合をご覧ください。法人の場合はひとり会社は自宅を社宅に、個人と法人の比較は自宅の家賃の経費化:個人事業主と法人の比較で解説しています。
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