「賃貸なら家賃を按分できるけれど、持ち家の場合は何を経費にすればいいの?」。自宅を持っている個人事業主・フリーランスの方から、よくいただく質問です。
持ち家には家賃がありません。その代わりに、建物の減価償却費、住宅ローンの利息、固定資産税、火災保険料などを、仕事に使う割合で按分して経費にします。一方で、ローンの元本は経費にならない、住宅ローン控除や売却時の特例に影響するといった、賃貸にはない注意点があります。
- 持ち家で経費にできるのは、減価償却費・ローンの利息・固定資産税・火災保険料・管理費・修繕費などのうち、仕事に使う部分
- ローンの元本は経費にならない。返済予定表で利息の額を確認して按分する
- 住んでいた期間がある家は、耐用年数の1.5倍・旧定額法で住んでいた期間の減価を引いてから減価償却する
- 仕事に使う割合を大きくすると、住宅ローン控除や売却時の居住用の特例に影響することがある
持ち家で経費にできるもの・できないもの
自宅の費用のうち、生活と仕事の両方にかかわるものは「家事関連費」として、仕事に使った部分を明らかに区分できれば必要経費になります(所得税法施行令96条、所得税基本通達45-2)。持ち家の場合に按分の対象になるもの、ならないものを整理します。
| 費用 | 経費にできるか | 按分の基準 |
|---|---|---|
| 建物の減価償却費 | 仕事に使う部分 | 床面積の割合など |
| 住宅ローンの利息 | 仕事に使う部分に対応する利息 | 床面積の割合など |
| 住宅ローンの元本 | 経費にならない | - |
| 固定資産税・都市計画税 | 仕事に使う部分 | 床面積の割合など(土地分も同様に按分) |
| 火災保険料・地震保険料 | 仕事に使う部分(建物の保険) | 床面積の割合など |
| マンションの管理費・修繕積立金 | 仕事に使う部分(修繕積立金は扱いに注意) | 床面積の割合など |
| 修繕費 | 仕事部屋の修繕は全額、共用部分は按分 | 修繕した場所 |
| 土地 | 減価償却できない | - |
按分の基準は、仕事専用に使っている部屋の床面積の割合が基本です。リビングの一角で仕事をしているなど、専用の部屋がない場合は、使用時間なども組み合わせて考えますが、説明は難しくなります。
なお、マンションの修繕積立金は、管理組合に払った時点では返ってこないことが確定しているかなどで、支払時に経費にできるかの判断が分かれることがあります。
減価償却費の計算:住んでいた期間を先に引く
建物は、買った金額を一度に経費にするのではなく、耐用年数にわたって少しずつ経費(減価償却費)にします。土地は減価償却しません。
開業前から住んでいる家の場合
もともと住んでいた家を、途中から仕事にも使うようになったケースです。国税庁のタックスアンサー(No.2109「非業務用資産を業務用に転用した場合の減価償却」)では、次の流れで計算すると説明されています。
- 住んでいた期間の減価を引く:取得価額から、法定耐用年数の1.5倍の年数で旧定額法により計算した、住んでいた期間の減価の額を差し引く(期間の端数は6か月以上を1年、6か月未満は切り捨て)
- 残りを基礎に減価償却する:仕事に使い始めた日の未償却残高を基礎に、償却方法は取得した日で決まる方法(建物は定額法など)で計算する
- 仕事に使う割合をかける:計算した減価償却費のうち、仕事に使う部分だけを経費にする
たとえば、木造の住宅(法定耐用年数22年)に10年住んでから仕事に使い始めた場合、1.5倍の33年で住んでいた10年分の減価を計算して差し引きます。住んでいた期間は経費になりませんが、その分の価値はすでに減ったものとして扱われます。
建物の取得価額は、購入時の売買契約書で建物と土地の金額を確認します。契約書で区分されていない場合は、固定資産税評価額の割合などで按分する方法があります。
開業後に買った家の場合
仕事に使う予定で家を買った場合は、住み始めた日(仕事に使い始めた日)から、建物の取得価額をもとに減価償却します。仕事に使う割合をかけて経費にするのは同じです。
ローンの利息:元本は経費にならない
住宅ローンの返済額は、元本と利息に分かれます。経費にできるのは、仕事に使う部分に対応する利息だけです。元本の返済は、借りたお金を返しているだけなので経費になりません。代わりに、建物の取得価額が減価償却で経費になります。
年間の利息の額は、金融機関から届く返済予定表や、年末の残高証明書で確認します。
- 年間の利息 × 仕事に使う割合 = 経費にできる利息
土地の購入資金に対応する利息も、仕事に使う部分であれば必要経費の対象になります。ただし、不動産所得が赤字の場合の土地の利子の扱いなど、所得の種類によって制限があるものもあります。
住宅ローン控除・売却時の特例への影響
持ち家の一部を仕事に使うときに見落とされやすいのが、住宅に関する特例への影響です。
住宅ローン控除
国税庁のタックスアンサー(No.1211-1)では、住宅ローン控除の要件の一つとして、床面積が50㎡以上で、その2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していることが挙げられています。店舗や事務所と併用している住宅は、その部分も含めた建物全体の床面積で判断します。
また、控除の対象になるのは居住用の部分に対応するローンです。仕事に使う割合を大きくするほど、住宅ローン控除の対象は小さくなります。経費にする利息と、住宅ローン控除の対象のローンが重ならないように計算します。
自宅を売るとき
自宅を売ったときの「居住用財産の3,000万円の特別控除」などの特例は、居住用の部分が対象です。仕事に使っていた部分は、特例の対象にならないことがあります。また、減価償却をした分だけ建物の取得費が下がり、売却益が大きくなります。
将来売る予定がある方は、仕事に使う割合を決める段階で、こうした影響も含めて考えておくとよいでしょう。
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オンライン記帳・申告サポートを見る根拠の残し方
持ち家の按分は、賃貸より計算が多くなります。次の資料をそろえておきます。
- 売買契約書・登記事項証明書:建物と土地の取得価額、床面積
- 間取り図:仕事部屋の位置と床面積
- 按分の計算メモ:「仕事部屋○㎡÷全体○㎡=○%」
- 減価償却の計算表:住んでいた期間の減価、毎年の償却費(会計ソフトの固定資産台帳を使うと楽です)
- ローンの返済予定表・残高証明書:年間の利息の額
- 固定資産税の納税通知書、火災保険の証券
固定資産の管理の仕方は固定資産台帳の作り方も参考になります。賃貸の場合の按分は賃貸の自宅で仕事:家賃はいくら経費にできる?(個人事業主)、電気代やネット代の按分は自宅の電気代・水道代・ネット代・スマホ代の按分の仕方で説明しています。
法人の場合は考え方が変わる
ひとり会社の場合、社長個人の持ち家を会社が直接経費にすることはできません。会社が社長から事務所部分を借りて家賃を払う、などの形になります。社長が受け取る家賃は社長個人の不動産所得になるため、個人と会社の両方で税金を考える必要があります。社宅を使う方法はひとり会社は自宅を社宅に:家賃を経費にする仕組みと賃料相当額、個人と法人の比較は自宅の家賃の経費化:個人事業主と法人の比較をご覧ください。
まとめ
- 持ち家で経費にできるのは、減価償却費・ローンの利息・固定資産税・火災保険料などの仕事に使う部分
- ローンの元本は経費にならない。返済予定表で利息を確認する
- 住んでいた期間がある家は、耐用年数の1.5倍・旧定額法で住んでいた期間の減価を引いてから償却する
- 仕事に使う割合は、住宅ローン控除(居住部分2分の1以上の要件)や売却時の特例への影響も考えて決める
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