自宅・家賃・光熱費

ひとり会社は自宅を社宅にできる?家賃を経費にする仕組みと賃貸料相当額

個人事業主は、自宅の家賃のうち仕事に使っている部分を、按分して経費にします(賃貸の自宅で仕事:家賃はいくら経費にできる?)。では、社長ひとりの会社(ひとり会社)の場合はどうでしょうか。

法人には個人のような「家事按分」の考え方はありません。そのかわりに使われるのが、会社が借りた住宅を社長に貸す「役員社宅」の仕組みです。この記事では、ひとり会社が自宅を社宅にする仕組み、社長から受け取る家賃(賃貸料相当額)の計算方法、注意点を、国税庁のタックスアンサー(No.2600「役員に社宅などを貸したとき」)をもとに解説します。

この記事の結論
  • 会社が家主と賃貸借契約を結び、社長に社宅として貸す。社長から賃貸料相当額以上の家賃を受け取れば、社長は給与課税されない
  • 会社が払う家賃と社長から受け取る家賃の差額は、会社の経費になる
  • 小規模な住宅(耐用年数30年以下の建物は132㎡以下、30年超は99㎡以下)は、固定資産税の課税標準額をもとにした算式で賃貸料相当額を計算する
  • 社長が自分で契約したまま会社が家賃を払う、現金で住宅手当を出す、といった形は社宅とは認められず給与になる
  • 社会保険料の計算は、所得税とは別の基準(現物給与の価額)で行う

役員社宅の仕組み

役員社宅は、次の流れで成り立っています。

  1. 会社が家主と賃貸借契約を結ぶ(借主は会社)
  2. 会社が家主に家賃を払う
  3. 会社が社長に住宅を貸し、社長から家賃(賃貸料相当額以上)を受け取る(役員報酬から天引きでもよい)

会社が払う家賃と、社長から受け取る家賃の差額が、会社の負担(経費)になります。社長から受け取る家賃が、所得税法で定められた賃貸料相当額以上であれば、社長に給与として課税されることはありません。

国税庁によれば、社長が受け取る家賃が賃貸料相当額より低い場合は、その差額が給与として課税されます。無償で貸せば、賃貸料相当額の全額が給与です。

社宅と認められない形

国税庁は、次のような場合は社宅の貸与とは認められず、給与として課税されるとしています。

  • 現金で住宅手当を支給する
  • 入居者(社長)が直接家主と契約して、家賃を負担している

社長個人の名義で借りている自宅の家賃を会社が払うだけでは、社宅にはなりません。会社名義の契約に切り替える必要があり、そのためには家主の同意が必要です。

賃貸料相当額の計算方法

賃貸料相当額は、住宅の広さによって計算方法が変わります。

住宅の区分賃貸料相当額(月額)
小規模な住宅(法定耐用年数30年以下の建物は床面積132㎡以下、30年超の建物は99㎡以下)①建物の固定資産税の課税標準額×0.2%+②12円×建物の総床面積(㎡)÷3.3㎡+③敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
小規模でない住宅(会社が借りている場合)会社が家主に払う家賃の50%と、下の「自社所有の場合」の算式の額の、多いほう
小規模でない住宅(自社所有の場合)(建物の課税標準額×12%〔法定耐用年数30年超の建物は10%〕+敷地の課税標準額×6%)×1/12
豪華な社宅通常支払うべき使用料(時価)。床面積240㎡超のものは、取得価額・支払賃料・内外装などを総合して判定。240㎡以下でもプールなど個人の好みを強く反映した設備があれば該当

区分所有のマンションは、共用部分の床面積をあん分して床面積を判定します。

小規模な住宅の計算例

ひとり会社の社長の自宅は、多くの場合「小規模な住宅」に当てはまります。数字は説明のための仮のものですが、たとえば次の場合で計算してみます。

  • 建物の固定資産税の課税標準額:600万円
  • 建物の総床面積:50㎡
  • 敷地の固定資産税の課税標準額:400万円
600万円×0.2%(12,000円)+12円×50㎡÷3.3㎡(約182円)+400万円×0.22%(8,800円)= 約20,982円

この場合、社長から月額約2万1,000円以上を受け取っていれば、給与課税はされません。小規模な住宅の算式は会社が借りている住宅にもそのまま使えます。実際の家賃とは関係なく固定資産税の課税標準額で決まるため、物件によっては、会社が払う家賃よりかなり低い額になることがあります。

課税標準額は物件ごとに違うので、家主や管理会社に確認して計算してください。

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ひとり会社が社宅にするときの注意点

社宅規程と記録を整える

ひとり会社では、会社と社長が実質的に同じ人です。だからこそ、取引として形を整えておくことが大切です。

  • 社宅規程を作り、対象者・家賃の決め方・負担の範囲を決める
  • 賃料相当額の計算書を残す(課税標準額の根拠も)
  • 社長から受け取る家賃は、毎月、役員報酬からの天引きや振込で実際に受け取る

自宅の一部を事務所として使う場合

社宅の一部を会社の事務所として使っている場合の扱いは、使用の実態によって判断が分かれます。事務所部分の広さや使い方を記録し、税理士に相談したうえで処理するのが安全です。

なお、社長が所有する家を会社に貸す場合(会社が社長から借りる場合)は、社長個人に不動産所得が生じ、家賃の金額が適正かどうかも問題になります。この論点は同族会社との賃貸借と適正賃料で解説しています。

社会保険料は別の基準で計算する

健康保険・厚生年金の保険料は、住宅の貸与を現物給与として、厚生労働大臣が定める都道府県ごとの価額で報酬に含めて計算します。家賃を本人から受け取っていれば、その価額から受取額を差し引いた額が現物給与です。厚生労働省の案内によると、住宅の現物給与の価額は令和8年10月1日から、居住用の室の畳数による単価から、総床面積1㎡当たりの単価に変わっています。所得税の賃貸料相当額とは計算が違うので、両方を確認しておきましょう。

消費税は非課税

住宅の家賃は消費税が非課税です(国税庁タックスアンサーNo.6226)。会社が家主に払う家賃も、社長から受け取る家賃も非課税で、仕入税額控除の対象にはなりません。

個人事業主との違い

個人事業主は、家賃のうち仕事に使っている部分だけを按分して経費にします。ひとり会社の社宅は、住まい全体を会社が借りて、社長から賃貸料相当額を受け取る仕組みで、考え方がまったく違います。どちらが有利かは、家賃の額や役員報酬、社会保険料なども含めて比べる必要があります。比較は自宅の家賃の経費化:個人事業主と法人の比較にまとめています。

まとめ

  • ひとり会社は、会社が借りた住宅を社長に貸す役員社宅の仕組みで、家賃の一部を会社の負担にできる
  • 社長から賃貸料相当額以上を受け取れば、社長は給与課税されない
  • 小規模な住宅は、固定資産税の課税標準額をもとにした算式で計算する。借上げの住宅にも使える
  • 社長名義の契約のまま会社が払う、住宅手当で払う、は給与になる
  • 社会保険料は現物給与の価額で別に計算する(令和8年10月から1㎡当たりの単価)

役員報酬の決め方とあわせて検討したい方は、ひとり会社の役員報酬の決め方もご覧ください。

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よくある質問

社長個人が借りている自宅の家賃を、会社が代わりに払えば経費になりますか?
社長個人の名義で契約したまま、会社が家賃を負担すると、社宅の貸与とは認められず、会社が負担した家賃は社長への給与として所得税の課税対象になります。社宅として扱うには、会社が家主と賃貸借契約を結び、会社が借りた住宅を社長に貸す形にする必要があります。
賃貸料相当額の計算に使う固定資産税の課税標準額は、どうやって調べますか?
建物とその敷地の固定資産税の課税標準額を使います。賃貸物件の場合は、家主や管理会社に確認するのが一般的です。課税標準額が分からないまま家賃の受取額を決めると、受取額が賃貸料相当額に足りず、差額が給与として課税されるおそれがあります。
社宅にすると、社会保険料はどうなりますか?
社会保険(健康保険・厚生年金)では、住宅の貸与は「現物給与」として、厚生労働大臣が定める都道府県ごとの価額で報酬に含めて保険料を計算します。家賃を本人から受け取っている場合は、その価額から受取額を差し引いた額が現物給与になります。所得税の賃貸料相当額とは計算方法が違うので、別に確認が必要です。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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