記帳・帳簿

ひとり会社の記帳はどれくらいの頻度で?月1回の締めが必要な理由

社長ひとりの会社や、家族だけで運営している小さな法人でも、記帳(帳簿づけ)は欠かせません。「取引も少ないし、決算の前にまとめてやればいいのでは」と考える方もいますが、法人には個人事業主よりも毎月決まって動くお金と手続きが多くあります。

この記事では、ひとり会社の記帳はどれくらいの頻度でやればいいのか、なぜ月1回の締めが目安になるのかを、具体的な作業とあわせて解説します。

この記事の結論
  • 法人の記帳の頻度に法令上の決まりはないが、青色申告法人は一切の取引を複式簿記で整然と明りょうに記録する必要がある
  • ひとり会社でも少なくとも月1回の締めが目安。役員報酬の源泉所得税、社会保険料、消費税など毎月・定期的に動くお金が多い
  • 申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内。決算前にまとめて記帳すると間に合わない、間違いに気づけない
  • 社長の立替えや会社のお金の私的な利用は、月ごとに精算しないと役員借入金・役員貸付金として残り、融資の評価にも響く

法人の帳簿のルール:頻度ではなく「すべての取引を正しく」

青色申告の承認を受けている法人は、法人税法施行規則53条により、資産・負債・資本に影響するすべての取引を、複式簿記の原則に従って整然と、かつ、明りょうに記録し、その記録に基づいて決算を行う必要があります。同54条では、仕訳帳と総勘定元帳などの帳簿を備えることも求められています。

ここには「毎日」「毎月」といった頻度の定めはありません。しかし、すべての取引を漏れなく正しく記録するには、取引があった時期から時間がたたないうちに記帳するのが一番確実です。

帳簿と書類の保存期間は、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間、青色申告の事業年度に欠損金が生じた場合は10年間です(国税庁タックスアンサーNo.5930)。

ひとり会社で月1回の締めが必要な理由

個人事業主であれば、取引の少ない副業などは月1回でも十分なことが多いです(個人事業主の記帳の頻度)。法人の場合は、取引が少なくても次の理由から月1回の締めをおすすめしています。

毎月・定期的に動くもの記帳が遅れると困ること
役員報酬の支払いと源泉所得税源泉所得税は原則として支払った月の翌月10日が納付期限。給与の支給人員が常時10人未満で納期の特例の承認を受けると、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日(国税庁タックスアンサーNo.2505)。支払額と納付額の照合が年末に集中する
社会保険料毎月の保険料と役員報酬からの天引き額が合っているか確認できない
社長の立替経費精算されずに残り、決算で役員借入金として計上される
会社のお金の私的な利用役員貸付金や役員への給与(役員賞与)とされるおそれがある
消費税(課税事業者の場合)税額の見込みが分からず、納付の資金を準備できない
銀行からの試算表の提出依頼すぐに出せない。数字が古いと審査で不利になる

決算から申告まで2か月しかない

法人税の確定申告は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(法人税法74条)。この2か月の間に、決算整理(減価償却、未払金・前払金の整理、在庫の確認など)、決算書の作成、法人税・住民税・事業税・消費税の申告書の作成を済ませる必要があります。

ここで1年分の記帳から始めると、間違いを確認する時間がありません。期限の考え方と延長の特例は法人税の申告期限はいつ?でくわしく解説しています。

期中に利益が分からないと、打てる手が少なくなる

月ごとの利益が分かっていれば、期の途中で「今期はいくら税金がかかりそうか」「納税資金は足りるか」を見通せます。ひとり会社の役員報酬は、原則として期の途中で自由に変えることができません(ひとり会社の役員報酬の決め方)。だからこそ、期首からの数字を毎月見ておくことに意味があります。

社長と会社のお金は、月ごとに精算する

ひとり会社でとくに起きやすいのが、社長個人のお金と会社のお金が混ざることです。

  • 社長が個人のカードで会社の経費を払った(立替え)
  • 会社の口座から、社長個人の支払いをした
  • 現金が足りず、社長が個人の口座から会社に入金した

こうした動きを月ごとに精算しないまま決算を迎えると、会社が社長から借りているお金(役員借入金)や、社長に貸しているお金(役員貸付金)として決算書に残ります。とくに役員貸付金は、銀行から「会社のお金が社長個人に流れている」と見られやすく、融資の評価で不利になりがちです。くわしくは役員借入金・役員貸付金:ひとり会社の社長と会社のお金の貸し借りをご覧ください。

なお、法人には個人事業主のような「家事按分」の考え方はありません。会社の経費になるのは会社の事業のための支出で、私的な支出は社長が負担するのが原則です。

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月1回の締めでやること

ひとり会社の月次の締めは、慣れれば1〜2時間で終わります。次の順番で進めると効率的です。

  1. 口座・カードの明細を確認:会計ソフトに取り込まれた取引の勘定科目を確定する
  2. 領収書・請求書との照合:受け取った請求書や、社長の立替えのレシートを入力する
  3. 社長との精算:立替経費を会社から社長に支払う、私的な支出があれば社長から返してもらう
  4. 残高の照合:預金残高、カードの未払残高が帳簿と一致しているか確かめる
  5. 売掛金・未払金の確認:入金予定の売上、支払予定の経費を確認する
  6. 試算表を出力して見る:売上・利益・現預金が前月と比べてどう動いたかを確認する

この試算表は、銀行に業績を説明するときの資料にもなります。銀行が試算表のどこを見るかは試算表を銀行に提出するときのポイントで解説しています。

まとめ

  • 法人の記帳の頻度に法令の決まりはないが、すべての取引を複式簿記で正しく記録する必要がある
  • ひとり会社でも月1回の締めが目安。役員報酬・源泉所得税・社会保険料など毎月動くものが多い
  • 申告は事業年度終了の日の翌日から2か月以内。まとめて記帳すると時間が足りない
  • 社長の立替えや私的な支出は月ごとに精算し、役員借入金・役員貸付金をため込まない
  • 帳簿の保存は原則7年、欠損金が出た年度は10年

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よくある質問

社長ひとりの会社で取引も少ないのですが、記帳は決算前にまとめてやってもいいですか?
法令上の頻度の決まりはありませんが、おすすめしません。法人は事業年度終了の日の翌日から2か月以内に申告する必要があり、決算前にまとめると時間が足りなくなりがちです。また、社長が立て替えた経費や会社のお金の私的な利用が整理されないまま残り、役員借入金・役員貸付金として決算書に出てしまうこともあります。月1回の締めを目安にしてください。
法人の帳簿は何年保存すればいいですか?
原則として、確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。青色申告をした事業年度に欠損金(赤字)が生じた場合は10年間になります(国税庁タックスアンサーNo.5930)。会計ソフトのデータで保存する場合は、電子帳簿保存法の要件も確認しておきましょう。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
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