融資と金融機関

地銀・信金の事業承継・HD化の融資事例|公式発表から読む銀行の姿勢

ホールディングス(HD)を使った事業承継では、HDが事業会社の株式を買い取る資金を、地方銀行や信用金庫から借りることがよくあります。とはいえ、「実際に地元の銀行がどんな融資をしているのか」は外から見えにくいものです。

この記事では、金融機関の公式のニュースリリースで確認できた事例を紹介したうえで、公表事例が少ない理由、銀行が持株会社への融資で見る点、相談の仕方を整理します。紹介する事例は、2026年10月時点で公式ページを確認できたものに限っています。

この記事の結論
  • 関西みらい銀行は2026年10月、後継者が設立した持株会社の未上場株式取得資金を対象に、総額100億円の事業承継専用融資ファンドを始めた
  • 条件は1件1億円以上、融資期間20年以内。返済は事業会社の利益を配当で受け取る仕組みを想定
  • 個別の取引先の融資は守秘義務があり、具体的な事例の公表は少ない
  • 銀行が見るのは、事業会社の収益力、配当による返済、株価の妥当性、後継者の経営力
  • 地元の銀行の取組みは、本部の事業承継の担当部署に直接確認するのが確実

公式発表で確認できた事例:関西みらい銀行の事業承継専用融資ファンド

りそなグループの関西みらい銀行は、2026年10月16日、事業承継専用融資ファンド「Succession+(愛称:サクプラ)」の取扱いを始めたと公表しました(出典:りそなホールディングス ニュースリリース「事業承継専用融資ファンド『Succession+(愛称:サクプラ)』の取扱開始について」2026年10月16日)。

リリースで示された概要は次のとおりです。

項目内容
金融機関関西みらい銀行(りそなグループ)
ファンド総額100億円
対象持株会社(事業会社の株式を取得する会社)
資金の使いみち事業承継にかかる未上場株式の取得資金
融資金額1億円以上
融資期間20年以内
取扱期間2026年10月16日から2027年12月30日まで

リリースでは、後継者が設立した持株会社による未上場株式の取得資金に対し、最長20年の融資期間を設定すると説明されています。図では、持株会社が銀行から借りて先代から株式を買い取り、事業会社の利益を配当として受け取って融資を返済する仕組みが示されています。

リリースで示された仕組みのイメージ
先代経営者株式を保有
関西みらい銀行
↓ 株式を譲渡 ↓ 株式取得資金を融資(最長20年)
持株会社後継者が設立
↑ 事業会社の利益を配当で受け取り、返済
事業会社
出典:関西みらい銀行(りそなホールディングス ニュースリリース、2026年10月16日)をもとに作成

この事例から読み取れること

  • 持株会社による株式取得が、地方銀行の正式な融資商品の対象として位置づけられている
  • 融資期間を最長20年と長くとることで、毎年の配当で返せる範囲に返済額を収める考え方
  • 1件1億円以上という規模から、ある程度の企業価値がある会社の親族内承継・役員承継が想定されていると考えられる

返済期間を長くするほど、事業会社の業績が長く続くかが問われます。返済計画の作り方はHDが株式を買い取る資金の融資で解説しています。

公表事例が少ない理由

地銀・信金の事業承継の融資は、件数としては多く行われていると考えられますが、個別の事例として公表されることはあまり多くありません。

  • 融資先の取引内容は守秘義務の対象で、会社名や金額を出すには取引先の同意が要る
  • 事業承継は家族の事情や株価が絡むため、取引先が公表を望まないことが多い
  • 公表されるのは、上のような商品・ファンドの創設や、自治体・公的機関と連携した取組みが中心

このため、「同じような会社が、どの銀行から、いくら借りたか」という情報は、公式の発表からはなかなか得られません。地元の銀行の姿勢を知るには、取引のある支店の担当者や、本部の事業承継・M&Aの担当部署に直接聞くのが確実です。

銀行が持株会社への融資で見る点

一般に、銀行が持株会社による株式取得の融資で確認するのは次の点です。

確認する点内容準備する資料
事業会社の収益力返済期間を通じて、配当の原資となる利益が続くか過去3期の決算書、事業計画
配当による返済配当を出しても事業会社の返済・投資が回るかグループの資金計画
株価の妥当性買取価格が過大でないか株価算定書
グループの財務HDの借入を加えた債務償還年数HD・事業会社の前後の試算
後継者経営を担える体制か、先代はどう関わるか承継計画、役員構成

著書のモデルでは、債務償還年数=(借入金-現預金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)で、10年以内を健全としています。HDの借入を加えたグループ全体でこの水準を説明できるかが、審査の大きな分かれ目になります。銀行の審査の一般的な見方は銀行の融資審査のポイントも参考にしてください。

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地銀と信金、どちらに相談するか

一般論としての違いは次のとおりです(信用金庫と地方銀行の違いでも解説しています)。

観点地方銀行信用金庫
融資の規模比較的大きな額も扱いやすい営業地域・会員向けが中心
株式取得・M&Aの融資専門部署を置く銀行が多い地域密着で、公庫・保証協会と組み合わせることも
相談のしやすさ本部の専門部署と連携支店との距離が近い

公的な制度と組み合わせる方法もあります。日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金(日本政策金融公庫の事業承継の融資制度とHD)や、信用保証協会の事業承継サポート保証(信用保証協会の事業承継特別保証と経営者保証)との協調も検討します。

事務所の支援事例

税理士法人クレフティでも、HD化を使った親族への事業承継で、地方銀行から1.6億円の資金調達を支援した事例があります。内容はクレフティの支援事例:HD化を用いた親族への事業承継で1.6億円を調達で紹介しています。

まとめ

  • 関西みらい銀行は2026年10月、持株会社の未上場株式取得資金を対象とする総額100億円の融資ファンドを始めた(1件1億円以上、最長20年)
  • 個別の融資事例は守秘義務があり、公表は少ない。地元の銀行の姿勢は直接確認する
  • 銀行は、事業会社の収益力、配当による返済、株価の妥当性、グループの債務償還年数を見る
  • 地銀・信金・公庫・保証協会を組み合わせて考える

よくある質問

地方銀行は、HDが株式を買い取る資金を融資してくれますか?
融資の対象になり得ます。たとえば関西みらい銀行は2026年10月16日、後継者が設立した持株会社による未上場株式の取得資金を対象に、総額100億円、1件1億円以上、融資期間20年以内の事業承継専用融資ファンドの取扱いを始めたと公表しています。ただし、審査では事業会社の収益力と配当による返済の見通しが問われます。
銀行の事業承継の融資事例は、どこで調べられますか?
各金融機関のニュースリリースや、事業承継支援の紹介ページで、商品や取組みが公表されることがあります。ただし、個別の取引先の融資は守秘義務があるため、具体的な会社名や金額まで公表されることは多くありません。地元の銀行の取組みは、支店の担当者や本部の事業承継の担当部署に直接聞くのが確実です。
地銀と信用金庫では、事業承継の融資に違いがありますか?
一般論として、信用金庫は営業地域が限られ、会員向けの融資が中心である一方、地域の中小企業との距離が近いという特徴があります。地方銀行は扱える融資の規模が比較的大きく、M&Aや株式取得の融資の経験を積んでいることが多いといえます。どちらが向くかは、借入額、地域、これまでの取引の実績によって変わります。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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