組織再編税制

共同事業要件とは:5つの判定と、欠損金のみなし共同事業要件との違い

組織再編の適格要件には、資本関係による類型のほかに、共同事業要件という類型があります。資本関係がない、または50%以下の関係の会社同士でも、実質的に一緒に事業を行うための再編なら、課税を繰り延べる、という考え方です。

注意したいのは、名前のよく似た「みなし共同事業要件」が、欠損金の引継ぎ制限のところにも出てくることです。両者は中身が違い、セミナーや解説でも混同されがちです。この記事では、2つを分けて整理します。完全支配関係による判定は完全支配関係の適格要件をご覧ください。

この記事の結論
  • 適格要件の共同事業要件は、資本関係が50%以下の再編で使う。合併なら①事業関連性 ②規模5倍以内または特定役員の引継ぎ ③従業者80% ④事業継続 ⑤支配株主の株式継続保有(法人税法施行令4条の3第4項)
  • 欠損金のみなし共同事業要件は、支配関係5年に満たない場合に引継ぎ制限を外すためのもの。事業関連性+規模5倍+双方の規模の変動2倍以内、または事業関連性+特定役員の引継ぎ(同法施行令112条3項)
  • 同族グループの再編は、適格要件は完全支配関係で済むことが多い。共同事業の判定が問題になるのは、M&Aと、5年に満たない支配関係での欠損金
  • 「関連する事業」かどうかは、施行規則3条の基準(事業の実態、同種・関連の関係)で確認する

2つの「共同事業」の位置づけ

2つの「共同事業」要件の使いどころ
適格要件として
資本関係50%以下の合併など
↓ 共同事業要件(5つ)を満たす
適格合併簿価引継ぎ・株主課税なし
欠損金の制限を外すために
適格合併だが支配関係が5年未満
↓ みなし共同事業要件を満たす
欠損金を制限なく引継ぎ満たさなければ一部が切り捨て
左は「適格かどうか」、右は「適格合併で欠損金をどこまで引き継げるか」の判定。条文も中身も別

適格要件としての共同事業要件(合併の場合)

資本関係が50%以下、または資本関係のない会社同士の合併は、次の要件をすべて満たすと適格合併になります(法人税法2条12号の8ハ、同法施行令4条の3第4項)。もちろん、株式以外の資産を交付しないという対価要件も必要です。

#要件内容
①事業関連性被合併法人の主要な事業のいずれかと、合併法人の事業のいずれかが相互に関連する
②事業規模または特定役員関連する事業の売上金額・従業者数、または資本金などの規模の割合がおおむね5倍以内。または被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかが、合併後に合併法人の特定役員になる見込み
③従業者の引継ぎ被合併法人の従業者のおおむね80%以上が、合併後に合併法人(とその完全支配関係のある法人など)の業務に従事する見込み
④事業の継続被合併法人の、合併法人の事業と関連する事業が、合併後も引き続き行われる見込み
⑤株式の継続保有被合併法人に支配株主(50%超を持つ者)がいる場合、支配株主に交付された合併法人の株式の全部を継続して保有する見込み

特定役員とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役、常務取締役、またはこれらに準ずる者で経営に従事している人をいいます(同項2号)。⑤は、被合併法人に支配株主がいない場合(株主が分散している場合)には不要です。

事業関連性の判定

①の「相互に関連する」は、法人税法施行規則3条に判定の基準があります。合併の直前に、両社がそれぞれ事業の実態(固定施設を持つか借りている、従業者がいる、自分の名義と計算で商品販売などをしている)を持ち、そのうえで両社の事業が同種である、商品や経営資源が類似・関連している、合併後に双方の経営資源を活用して一体で行う見込みがある、などの関係があれば、関連性があるものとされます。

事務所も従業者もない休眠会社やペーパーカンパニーとの合併では、そもそも事業の実態の要件を満たしません。

欠損金の「みなし共同事業要件」

適格合併であっても、被合併法人と合併法人の間の支配関係(50%超)が、合併法人の合併事業年度の開始の日の5年前の日(または設立の日)から続いていない場合、被合併法人の欠損金の一部は引き継げません(法人税法57条3項)。この制限を外すのがみなし共同事業要件です(同法施行令112条3項)。

次のAまたはBを満たせば、制限はかかりません。

ルート要件
A(規模ルート)① 事業関連性 ② 事業規模の割合がおおむね5倍以内 ③ 被合併事業が、支配関係が生じた時から合併まで継続し、その間の規模の変動がおおむね2倍以内 ④ 合併事業も同様に継続し、規模の変動がおおむね2倍以内
B(特定役員ルート)① 事業関連性 ⑤ 被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかが、合併後に合併法人の特定役員になる見込み。ただし、その人は支配関係が生じる前からそれぞれの法人の役員などだった人に限る

適格要件の共同事業要件と比べると、③従業者80%や⑤株式の継続保有は求められない一方で、支配関係が生じてからの規模の変動(2倍以内)と、特定役員が支配関係の前からの人であることが加わります。欠損金を持つ会社を買ってすぐ合併し、その欠損金を使う、という使い方を防ぐための要件だからです。

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中小企業で問題になる場面

同族グループの再編

親族で100%を持つグループの合併は、適格要件は完全支配関係の類型で満たすのが普通です。そのうえで、欠損金を引き継ぐときに、支配関係が5年続いているかを確認します。たとえば、3年前に新たに株式を取得して子会社にした赤字会社を合併する場合は、5年に満たないので、みなし共同事業要件を検討することになります。

なお、法人を新しく設立した場合は、設立の日から支配関係が続いていれば原則として制限はかかりませんが、他の会社の事業を移すために新設した会社などには例外があります(同法施行令112条4項)。

M&Aで買った会社との合併

買収した会社を、買収後すぐに自社に合併する場合、買収の時点で支配関係が生じているので、5年に満たないのが普通です。買収した会社の欠損金を引き継ぐには、みなし共同事業要件のうち、規模ルートか特定役員ルートを検討します。

  • 規模ルートは、買収の時点から合併までの間に、被合併事業・合併事業の規模が2倍を超えて変わっていないことが必要です
  • 特定役員ルートは、買収前からそれぞれの会社の役員だった人が、合併後も特定役員として残る必要があります。買収後に送り込んだ役員は対象外です

M&Aで取得した会社の欠損金の扱いは、M&Aと繰越欠損金で詳しく扱っています。

形式的に満たしても否認されることがある

共同事業要件やみなし共同事業要件を、形のうえだけ満たすように役員を就任させたり、規模を調整したりする行為は、組織再編成に係る行為計算否認(法人税法132条の2)の対象になりえます。ヤフー事件では、合併の直前に親会社の社長を子会社の副社長に就任させて特定役員引継要件を満たそうとした行為が否認されました(最高裁平成28年2月29日判決)。詳しくは組織再編の行為計算否認をご覧ください。

判定のための資料

判定項目準備する資料
事業関連性両社の事業内容、取引関係、拠点・従業者の状況、合併後の事業計画
事業規模関連事業の売上金額、従業者数、資本金の推移(支配関係発生時と合併直前)
特定役員役員の就任時期、職制、経営への関与を示す資料(登記簿、議事録)
従業者合併直前の従業者名簿と、合併後の配置予定
株式の継続保有支配株主の今後の保有方針

銀行にとっても、共同事業要件の判定資料は、合併後の事業の一体性と収益の見通しを説明する材料になります。合併後の事業計画とあわせて準備しておくと、融資の説明にも使えます。

まとめ

  • 適格要件の共同事業要件は、資本関係50%以下の再編で使う5つの判定(合併の場合)
  • 欠損金のみなし共同事業要件は別物。規模の変動2倍以内か、支配関係前からの特定役員の引継ぎを見る
  • 同族グループでは、適格要件は完全支配関係で、欠損金は5年判定とみなし共同事業要件で確認する
  • 事業関連性は、施行規則3条の事業の実態と関連性の基準で確認する
  • 形だけ整えると行為計算否認の対象になりうる。役員の就任時期や規模の変動に注意する

よくある質問

共同事業要件の「規模がおおむね5倍を超えない」は、何で比べるのですか?
被合併事業と合併事業(関連する事業に限る)の売上金額、従業者の数、または両社の資本金の額、もしくはこれらに準ずる規模のいずれか一つで比べます(法人税法施行令4条の3第4項2号)。いずれかの指標で5倍以内であれば足りるとされています。規模の差が大きいときは、特定役員の引継ぎで判定する方法もあります。
適格合併の共同事業要件を満たせば、欠損金も制限なく引き継げますか?
そうとは限りません。欠損金の引継ぎ制限を外す「みなし共同事業要件」(法人税法施行令112条3項)は、適格要件の共同事業要件とは別のもので、従業者の引継ぎや株式の継続保有は求めない代わりに、支配関係が生じた時から合併までの事業規模の変動(おおむね2倍以内)などを見ます。資本関係のない会社同士なら欠損金の制限はそもそも問題になりにくいですが、支配関係がある場合は、両方の要件を別々に確認します。
親族で100%持っているグループの合併でも、共同事業要件を確認する必要はありますか?
適格要件としては、完全支配関係による類型で判定するので、共同事業要件は不要です。ただし、欠損金を引き継ぐ場合に、支配関係が5年続いていないときは、制限を外すために「みなし共同事業要件」を満たすかを確認します。親族グループでも、設立や株式の取得の時期によっては必要になります。

※本記事は2026年10月30日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
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