融資・資金調達

新規融資の55.7%が経営者保証なし、一方で保証の解除は2割減|金融庁の実績と企業価値担保権から見る、経営者が今やっておくこと

金融庁は「経営者保証に関するガイドライン」等の活用実績(2025年度)を公表しています。民間金融機関の新規融資のうち、経営者保証に依存しない融資の割合は55.7%で、前年度の52.9%から上昇しました。一方で、既に結んでいる保証契約を解除した件数は約6.4万件と、前年度から約2割減っています。

2026年5月には企業価値担保権が施行され、金融庁は2026年9月公表の金融行政方針で、経営者保証に依存しない融資の促進を続けるとしています。この記事では、公表された数字を確認しながら、新しい借入と既存の保証で何が起きているのか、経営者が今やっておくことを整理します。

この記事の結論
  • 2025年度の民間金融機関の新規融資に占める、経営者保証に依存しない融資の割合は55.7%(前年度52.9%)。件数ベースの数字(金融庁)
  • 一方、保証契約を解除した件数は6万3,732件で、前年度の8万1,948件から約2割減少
  • 代表者の交代時に、新しい経営者と保証契約を結ばなかった例は約56%
  • 2026年5月施行の企業価値担保権は選択肢のひとつ。ただし使えるかは審査次第で、事業の計画と情報開示が前提
  • 新規の無保証化と、既存の保証の解除は別の話。決算のタイミングで、既存の保証の見直しも相談する

公表された内容

項目(民間金融機関529機関)2024年度2025年度
新規融資件数2,325,358件2,192,188件
新規に無保証で融資した件数1,223,552件1,213,263件
経営者保証の代替的な融資手法を活用した件数7,543件7,997件
経営者保証に依存しない融資の割合52.9%55.7%
上記と、適切に説明し記録した有保証融資の合計の割合99.5%99.9%
保証契約を解除した件数81,948件63,732件

上下期の公表値を合算して筆者が作成(割合は金融庁の公表値)。

代表者の交代時の対応は次のとおりです。

代表者の交代時の対応2024年度2025年度
旧経営者の保証を解除し、新経営者とは結ばなかった7,296件(16.6%)6,710件(16.7%)
旧経営者の保証を解除し、新経営者と結んだ18,043件(41.1%)16,304件(40.6%)
旧経営者の保証は残し、新経営者とは結ばなかった17,238件(39.3%)15,932件(39.7%)
旧経営者の保証を残し、新経営者とも結んだ1,288件(2.9%)1,224件(3.0%)

出典:金融庁「『経営者保証に関するガイドライン』等の活用実績について(2025年度の実績)」(2026年6月26日公表)。

政府系金融機関では、2025年度の経営者保証に依存しない融資の割合は、商工組合中央金庫が69.3%、日本政策金融公庫が54.3%と公表されています(中小企業庁の資料による)。個別の金融機関の割合は、金融庁のページで確認できます。2026年7月31日の公表分からは、信用金庫の個別の実績も加わりました。

制度面の動きとしては、事業性融資の推進等に関する法律が2026年5月25日に施行され、企業価値担保権が使えるようになりました。三井住友銀行は同年7月28日に、この権利を活用した融資商品の取扱い開始を発表しています。金融庁は「2026事務年度金融行政方針」で、金融機関の組織的・継続的な取組を後押しするとともに、経営者保証に依存しない融資の促進に向けてフォローアップを進めるとしています。

数字から読み取れること

新しい借入は無保証が増えている

新規融資に占める割合は上昇しています。ただし、新規融資の件数そのものが減っているなかで、無保証の件数はほぼ横ばいという形です。割合の上昇は、保証付きの件数が減った結果でもあります。また、件数ベースの数字ですので、大きな金額の融資でどうなのかは、この表からは分かりません。

既存の保証の解除は別の動き

保証契約の解除件数は約2割減りました。理由は公表資料では示されていません。新しい借入が無保証になっても、過去の借入の保証は、相談しなければ残ったままです。「世の中の流れで自然に外れる」とは考えないほうがよいでしょう。

代表者の交代は、大きな節目

2025年度の4区分の合計は40,170件で、新しい経営者と保証契約を結ばなかった例は22,642件、約56%です。これは公表値から筆者が計算した数字です。一方で、旧経営者の保証が残る例も4割を超えています。事業承継では、引退した経営者の保証をどうするかも論点になります(HD体制での個人保証の外し方)。

企業価値担保権は「事業を見て貸す」ための仕組み

企業価値担保権は、不動産などの個別の資産ではなく、無形の資産も含めた事業全体を担保にする制度です。銀行の立場では、事業の中身を継続して把握することが前提になります。経営者保証を外す話と共通するのは、会社の情報をきちんと開示し、事業の将来を数字で語れることです。

融資が通る決算書と事業計画を、一緒につくります

20行超の金融機関と折衝し、累計120億円超の融資承認を得てきたチームが、資料作成から金融機関への打診まで伴走します。

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経営者が今やっておくこと

ここからは、税理士・公認会計士として、また融資を受けて事業を続けてきた立場からの考えです。

経営者保証を外す鍵は、ガイドラインの3要件「法人と個人の分離」「財務基盤の強化」「適時適切な情報開示」です。要件の詳しい説明は経営者保証を外す方法に書きました。今回の数字を踏まえると、やることは次のように整理できます。

場面やること確認する数字・資料
新規の借入保証なしの可否と、保証を求める場合の理由を聞く金融機関からの説明の内容
既存の借入借入ごとの保証の有無を一覧にし、決算後に見直しを相談する借入の一覧、保証契約書
法人と個人の分離役員貸付金・仮払金を解消する貸借対照表の役員貸付金
財務基盤の強化純資産を積み上げ、返済力を示す純資産、債務償還年数
情報開示決算書を早く出し、試算表・資金繰り表を定期的に提出する月次の試算表
代表者の交代交代の前に、新旧の経営者の保証の扱いを相談する承継の計画、株式の移転の予定

金融機関は、保証を求める場合に、どの要件が足りないのか、どう改善すれば解除の可能性が高まるのかを説明することが求められています。この説明を「断られた」で終わらせず、改善の目標として受け取ることが大切です。財務の目標は銀行格付けを上げる方法と純資産1億円の壁が参考になります。著書のモデルでは、プロパー融資の目安を「正常先+純資産1億円」としています。保証を外せるかどうかも、この発想に近いと考えています。

役員貸付金が残っていると、それだけで分離の要件で説明が難しくなります(役員貸付金は銀行にどう見られる?)。金額が大きくなくても、決算の前に解消の計画を立てておきましょう。

今後も注意して見ていきたいこと

  • 2026年度上期の活用実績:55%台から割合がさらに上がるか、解除件数が戻るか
  • 企業価値担保権の活用:どの規模の企業で、どのように使われていくか
  • 金融庁のフォローアップ:金融機関の説明や取組への確認が、現場の運用をどう変えるか
  • 取引金融機関の実績:個別の割合と、取組方針の公表内容
  • 信用保証の制度:保証料の上乗せで経営者保証を外す制度の条件の変更

まとめ

  • 2025年度の新規融資に占める、経営者保証に依存しない融資の割合は55.7%に上昇
  • 保証契約の解除件数は約2割減少。既存の保証は相談しなければ残ったまま
  • 代表者の交代時に新しい経営者と保証契約を結ばなかった例は約56%で、交代前の相談が重要
  • 企業価値担保権は選択肢のひとつだが、審査と継続的な情報開示が前提
  • 法人と個人の分離、財務基盤、情報開示の3要件を整え、決算のタイミングで相談する

経営者保証の見直しや、事業承継にともなう保証の扱いを整理したい方は、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

よくある質問

新規融資の半分以上が無保証なら、自社も頼めば外してもらえますか?
必ず外れるわけではありません。55.7%は件数ベースの割合で、金額の大きさや会社の規模ごとの内訳は示されていません。保証を求めるかどうかは、法人と個人の分離、財務基盤、情報開示の状況を見て個別に判断されます。まずは取引銀行に、どこが足りないのか、どう改善すれば外れる可能性が高まるのかを聞いてみてください。
企業価値担保権を使えば、経営者保証はいらなくなりますか?
そうとは限りません。企業価値担保権は、事業全体を担保にして、事業の将来性に着目した融資を後押しする制度です。経営者保証や不動産担保に過度に依存しないことが目的の一つですが、利用できるかどうかや条件は金融機関の審査によります。事業の計画と継続的な情報開示が前提になるため、まずは取引銀行に取り扱いの有無を確認するのがよいでしょう。
社長が交代するときに、保証はどうなりますか?
金融機関の対応は一律ではありません。2025年度の実績では、代表者の交代時に新しい経営者と保証契約を結ばなかった例が約56%でした。後継者への保証の引き継ぎは事業承継の大きな壁になるため、交代の時期が決まる前から、取引銀行と保証の扱いを相談しておくことをおすすめします。

※本記事は2026年11月1日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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