融資・資金調達

メインバンクの作り方と選び方|中小企業が融資を受け続けるための銀行の決め方、取引行の数、切り替えの判断

「メインバンクはどう作ればいいのですか?」「今の銀行をメインと呼んでよいのでしょうか?」。創業して数年たった会社や、初めて本格的な融資を考える会社から、よくいただく質問です。

メインバンクは、口座を開いただけではできません。 借入、入出金、情報開示の3つを積み重ねることで、銀行側からも「この会社の主力行は当行だ」と見られるようになります。この記事では、メインバンクの作り方と選び方、取引行の数、切り替えの判断を、融資を受け続ける視点で整理します。

この記事の結論
  • メインバンクに法律上の定義はない。実質は借入・入出金・情報の3つが最も集まっている金融機関
  • 選ぶときは金利よりも先に、自社の規模に合うか、営業エリアか、継続して融資を出してくれるかを見る
  • 作り方は「入出金を集める → 小さな借入を約束どおり返す → 決算以外の情報も開示する」の順
  • 取引行は、借入があるならメイン1行とサブ1〜2行の合計2〜3行が管理しやすい目安
  • 切り替えは一度に行わず、サブに実績を作ってから比重を移す

メインバンクとは何か:銀行から見た「主力行」の条件

メインバンクには、法律上の定義も、銀行が認定する制度もありません。帝国データバンクの全国調査でも、企業が「メインバンク」と認識している金融機関を集計しており、複数ある場合は企業が最上位と認識している先をメインとしています(帝国データバンク:全国「メインバンク」動向調査(2025年))。

ただ、企業側の認識と銀行側の認識が一致しているとは限りません。経営者が「長年の付き合いだからメイン」と思っていても、借入の大半が別の銀行にあり、売上の入金も別の口座なら、銀行は主力行とは見ていないでしょう。

銀行から見た主力行の条件を整理すると、次の3つです。

集まるもの具体的には銀行にとっての意味
借入取引金融機関の中で借入残高が最も多い最大の貸し手として、経営状況を見守る立場になる
入出金売上の入金、仕入・給与・税金の支払資金の流れから、業況の変化を早くつかめる
情報決算書、試算表、計画、経営者の考え稟議書を書くための材料がそろう

3つのうち、特に効くのは入出金と情報です。借入の金額は融資を受けるまで増やせませんが、入出金と情報は、今日からでも動かせます。

メインバンクの選び方:比べるのは金利より先に3つ

業態ごとの特徴を知る

帝国データバンクの2025年の調査では、全国で最も多くの企業がメインとしている三菱UFJ銀行でも、シェアは6.18%で、16年連続の縮小でした。業態別では地方銀行のシェアが39.76%で、7年ぶりに4割を下回っています。中小企業のメインバンクは、地域の金融機関まで広く分かれているのが実態です。

業態向いている会社確認したい点
メガバンク一定の規模があり、広域で事業をする会社小規模な会社では、保証協会付きや定型の商品が中心になることがある
地方銀行・第二地銀地域に根ざした中小企業、不動産の取得を続けたい会社営業エリア外の物件や会社は対象にならないことがある
信用金庫・信用組合地域の小規模事業者、創業間もない会社営業地区の制限がある。大型の融資には協調が必要なことも
日本政策金融公庫創業期、民間だけでは足りない部分預金や日常の決済の取引はできない。民間のメイン行と併用する

信用金庫と地方銀行の違いは信用金庫と地方銀行の違いで詳しく解説しています。

選ぶ基準は「続けて貸してくれるか」

1回の融資の金利が0.1%低いことより、次の融資、その次の融資に応じてもらえることのほうが、多くの中小企業にとっては重要です。比較するときは、次の3つを先に確認しましょう。

  1. 規模が合うか:自社の年商や借入額が、その支店の取引先の中心に近いか。大きすぎる銀行では後回しにされ、小さすぎる金融機関では将来の金額に応じきれないことがあります
  2. 営業エリアに入っているか:本店・主な事業所、不動産なら物件所在地が、融資の対象エリアか。支店が近いと、情報を届ける頻度も上げやすくなります
  3. 同業の融資に慣れているか:業種ごとに得意不得意があります。不動産賃貸業なら、不動産向けの融資に積極的かどうかで話の進み方がまったく違います

メインバンクの作り方:4つのステップ

新しくメインバンクを作る場合も、今の銀行を育てる場合も、順番は同じです。

ステップやることポイント
1. 口座を開く法人口座を開設し、事業内容を説明する事業の実態が分かる資料を用意する
2. 入出金を集める売上の入金、主な支払、税金の納付をまとめる預金の平均残高と資金の流れを見せる
3. 小さな借入を返す保証協会付きや少額の融資を約束どおり返す期日どおりの返済が、最大の実績になる
4. 情報を出し続ける決算書、試算表、計画を定期的に説明する担当者が替わっても記録が残る

借入の実績は小さく始めてよい

銀行にとって、取引のない会社にいきなり大きな金額を貸すのは難しいことです。最初は保証協会付きの融資や少額の運転資金でも、期日どおりに返した実績があると、次の相談の土台になります。保証協会付きからプロパー融資へ進む道筋は保証協会付き融資とプロパー融資の違いをご覧ください。

事務所の公開事例でも、融資の入口はさまざまです。年商5,000万円の美容室が信用金庫から運転資金1,500万円を調達した例や、創業2年目のトレーディングカード売買会社が都市銀行3,500万円と地方銀行2,000万円を調達した例があります。会社の段階によって、合う金融機関の組み合わせは変わります。

法人口座の開設そのものが壁になることも

近年は、法人口座の開設時に事業の実態を確認される場面が増えています。手順と準備する資料は法人口座の開設と審査で解説しています。

融資が通る決算書と事業計画を、一緒につくります

20行超の金融機関と折衝し、累計120億円超の融資承認を得てきたチームが、資料作成から金融機関への打診まで伴走します。

資金調達・融資支援を見る

取引行は何行がよいか:1行は危うく、多すぎても薄まる

1行だけのリスク

借入先が1行だけだと、その銀行の方針転換、支店の統廃合、合併などの影響を、そのまま受けます。金融機関の再編が続いていることは、地銀再編と融資の見通しでも解説しました。

金利の面でも、比較できる相手がいるかどうかは重要です。金融庁が2026年6月に公表した企業アンケートでは、直近1年間に取引金融機関から借入金利の改定について相談・申出があった企業は全体の52.1%でした。提示された金利と当初の金利の差は「+0.10%〜+0.25%」が47.9%で最も多く、債務者区分が悪いほど、また企業規模が小さいほど「+1.01%以上」の回答が増える傾向があります(金融庁:企業アンケート調査の結果(令和8年6月30日))。交渉の材料については融資の金利交渉をご覧ください。

増やしすぎのデメリット

逆に、取引行を増やしすぎると、どの銀行にとっても「数ある取引先の1社」になり、情報提供の手間も増えます。銀行の数だけ、決算説明の機会が必要になるからです。

借入がある会社の目安は次のとおりです。これは決まった基準ではなく、管理のしやすさからの目安です。

会社の段階取引行の目安考え方
創業期1行+公庫入出金を1つに集め、公庫と民間の実績を作る
借入が増えてきた段階メイン1行+サブ1行サブに少しずつ入出金と借入を持つ
年商・借入が大きい段階メイン1行+サブ2行程度融資シェアの偏りと各行への説明の負担を調整する

金融庁の調査に見る、情報開示で差がつくところ

先ほどの金融庁のアンケートは、メインバンクとの関係を考えるうえで参考になります。

メインバンクが課題や悩みを「聞いてくれる」と答えた企業は79.9%でした。ただし債務者区分別では、正常先上位が86.9%、破綻懸念先が63.0%です。売上高別でも、1億円未満は61.1%、100億円以上は90.3%でした。これらは回答の傾向であり、因果関係を示すものではありません。それでも、財務が強い会社ほど銀行との対話が成り立ちやすいという実感には合っています。

また、メインバンクに開示している情報は次のとおりです。

開示している情報全体の割合
決算書98.2%
試算表63.6%
事業の強み・弱み23.3%
資金繰り表23.1%
中長期の経営計画20.5%
年次の経営計画18.1%

決算書はほぼ全社が出していますが、それ以外は大きく下がります。逆に言えば、試算表、資金繰り表、年次計画を定期的に出すだけで、多くの会社より一歩前に出られます。 作り方は試算表を銀行に提出するときのポイント、資金繰り表の作り方を参考にしてください。

一方で、メインバンクの説明に納得感がないと答えた企業の理由は、「担当者の交代が多い」34.0%、「自社の事業内容等への理解が浅い」31.1%が上位でした。担当者の異動は避けられません。だからこそ、説明を担当者の記憶に頼らず、書面で残すことが大切です。日々の付き合い方は銀行員との正しい付き合い方で解説しています。

メインバンクを切り替えるときの判断と手順

切り替えを考えてよい場面

次のような状態が続くなら、比重を移すことを検討してもよいでしょう。

  • 決算を説明しても反応がなく、事業の成長に必要な融資の相談が進まない
  • 支店の統廃合や方針の変更で、自社の規模や業種が融資の対象から外れてきた
  • 他の金融機関から、より長い期間や無担保など、資金繰りに効く条件の提案がある

一時的に担当者と合わないだけなら、支店長や上司も交えて説明の場を作るほうが先です。

いきなり全額を移さない

切り替えで避けたいのは、残高を一括で借り換えて、今の銀行との関係を切ってしまうことです。融資の環境が変わったときに、戻れる先がなくなります。

  1. サブの銀行に決算書と試算表を定期的に届ける
  2. 新しい資金需要を、サブの銀行に相談する
  3. 入出金の一部を移し、預金の取引を増やす
  4. サブの残高が増えた段階で、借り換えの条件を比較する

借り換えでは、担保の解除、繰上返済の手数料、保証料の戻り、経営者保証の条件を確認します。詳しくは借り換えのメリットと注意点をご覧ください。

銀行の姿勢は、結局は決算書で決まる

メインバンクとの関係は大切ですが、関係だけで融資が続くわけではありません。著者自身も2019年に、複数の銀行から「あなたには、貸せません」と言われました。原因は、減価償却が速い物件が多く、貸借対照表上の資産の価格(簿価)よりも負債の金額のほうが大きくなる債務超過の状態に陥っていたことです。銀行の姿勢を変えたのは、人間関係ではなく、改善していく決算書でした。銀行が見ている数字は銀行融資の審査ポイントで整理しています。

まとめ

  • メインバンクに法律上の定義はなく、実質は借入・入出金・情報が最も集まっている金融機関
  • 選ぶときは、規模、営業エリア、業種への慣れを金利より先に確認する
  • 作り方は、入出金を集め、小さな借入を返し、情報を出し続けること
  • 借入があるなら、メイン1行とサブ1〜2行の合計2〜3行が管理しやすい目安
  • 決算書以外の開示は多くの会社で進んでいない。試算表、資金繰り表、年次計画で差がつく
  • 切り替えは一度に行わず、サブに実績を作ってから比重を移す

どの金融機関をメインに据えるかは、会社の規模、業種、これからの資金需要で変わります。税理士法人クレフティでは、元地方銀行員の資金調達部長を含むチームが、20行超の金融機関との折衝の経験をもとに、銀行の組み合わせや説明の準備をご支援しています。初回のご相談は無料です。融資・資金調達のご支援からお問い合わせください。

よくある質問

メインバンクは、どの銀行が自社のメインだと決まるのですか?
法律で決まった定義はなく、銀行が認定する制度でもありません。一般には、借入の残高が最も多く、売上の入金や主な支払が集まり、決算や資金繰りの情報を最も詳しく共有している金融機関を指します。経営者が「ここがメイン」と思っていても、借入も入出金も少なければ、銀行側はそう見ていないことがあります。
中小企業の取引銀行は何行くらいがよいですか?
決まった正解はありませんが、借入がある会社なら、メイン1行とサブ1〜2行の合計2〜3行が管理しやすい目安です。1行だけだと、その銀行の方針が変わったときに資金調達が止まるおそれがあります。一方、増やしすぎると情報提供の手間が増え、どの銀行からもメインと見られにくくなります。
メインバンクを変えても、融資に悪い影響はありませんか?
変えること自体が問題になるわけではありませんが、いきなり全額を借り換えて関係を切ると、次にその銀行に相談しにくくなります。まずサブの銀行に入出金と情報開示を少しずつ移し、融資の実績を作ってから比重を変えるのが現実的です。担保の解除や繰上返済の手数料、経営者保証の条件も事前に確認してください。

※本記事は2026年11月1日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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