融資・資金調達

主要銀行の中小企業向け貸出姿勢は「積極」が続くも今後は0に|日銀10月アンケートで見る利鞘の拡大と、借り手が今やっておくこと

日本銀行が2026年10月22日に「主要銀行貸出動向アンケート調査(2026年10月)」を公表しました。貸出残高の約8割を占める国内銀行・信用金庫50先の融資担当者に、資金需要と貸出姿勢の変化を聞く調査です。

中小企業向けの貸出運営スタンスDIは3で、積極方向を保ちました。ただし今後3か月の見通しは0で、前回の3から下がっています。利鞘は拡大方向が続いています。この記事では、調査の数字を確認しながら、銀行の貸出姿勢をどう読み、借り手が今何をしておくとよいかを整理します。

この記事の結論
  • 中小企業向けの貸出運営スタンスDIは3(前回5)で積極方向。ただし50先のうち48先は「ほぼ不変」で、今後3か月の見通しは0(前回3)
  • 貸出条件では利鞘が拡大方向。中小企業向けの利鞘設定のDIは過去3か月が▲7、今後3か月も▲7(マイナスは厳格化の方向)
  • 中小企業向けの「信用リスク評価」と「担保設定」のDIが0から▲1に。動きは小さいが、前回にはなかった変化
  • 融資の門は閉じていないが、金利の上乗せと、規模による実感の差に注意。条件は「全体の数字」ではなく自社の決算書で決まる

調査で示された内容

項目2026年10月調査(カッコ内は前回7月調査)
調査対象国内銀行・信用金庫のうち50先。貸出残高全体の約8割。回答期間は9月9日〜10月13日
企業向けの資金需要DI(過去3か月)3(▲1)。今後3か月の見通しは6(4)
規模別の資金需要DI大企業5(2)、中堅企業1(▲2)、中小企業1(▲2)
建設・不動産の資金需要DI大企業14(1)、中堅企業8(▲10)、中小企業7(▲3)
貸出運営スタンスDI(過去3か月)大企業0(1)、中堅企業2(3)、中小企業3(5)
貸出運営スタンスDI(今後3か月)大企業1(3)、中堅企業0(3)、中小企業0(3)
中小企業向けの貸出条件(過去3か月)信用枠0(0)、利鞘設定▲7(▲6)、信用リスク評価▲1(0)、担保設定▲1(0)
格付別の利鞘設定DI(過去3か月)上位12(12)、中位10(10)、下位10(12)。今後3か月はいずれも12

出典:日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査(2026年10月)」、同(2026年7月)。

DIの読み方には注意が必要です。貸出運営スタンスDIは、プラスなら積極化する銀行が多いことを示します。貸出条件のDIはプラスが緩和でマイナスが厳格化、格付別の利鞘設定DIはプラスが利鞘の拡大です。いずれも「前の3か月と比べてどう変えたか」を聞く調査で、貸出の水準そのものではありません。

実際の貸出は伸びています。日銀の「貸出・預金動向(2026年9月)」では、銀行・信用金庫の貸出平均残高は前年比5.3%増でした。都市銀行等が7.7%増、地方銀行が4.5%増、第二地方銀行が1.9%増、信用金庫が2.0%増です。

数字から読み取れること

「積極」は続くが、勢いは落ち着く

中小企業向けのスタンスDIは3ですが、内訳を見ると「積極化」1先、「やや積極化」1先で、残りの48先は「ほぼ不変」です。今後3か月は50先すべてが「ほぼ不変」と答えました。融資を絞るという話ではなく、さらに積極化する銀行が見込まれていないという状態です。

金利の上乗せは広がる方向

銀行は格付けの上位・中位・下位のいずれでも利鞘を拡大方向で設定しており、拡大と答えた先はあっても縮小と答えた先はありません。基準金利の上昇に加えて、上乗せ分も広がりやすい局面と言えます。金利の動きそのものは、日銀が1.25%据え置きも「物価2%に到達」と判断で整理しました。

資金需要の理由は、中小企業では読みにくい

中小企業向けの資金需要が増えた要因では「手許資金の積み増し」の重要度が高い一方、「資金繰りの悪化」も挙げられています。回答は3先のみで、傾向と断定はできません。ただ、前向きな投資だけでなく、備えや資金繰りのための借入が混ざっている可能性は意識しておきたいところです。

規模によって実感は違う

借り手側の調査も見てみます。日本政策金融公庫の「全国中小企業動向調査」(2026年7-9月期)では、中小企業編の資金繰りDIは2.5で前期から1.7ポイント上昇し、長期借入難易DIは4.2、短期借入難易DIは10.0でした。一方、小企業編の資金繰りDIは▲21.8でマイナス幅が1.9ポイント拡大し、民間金融機関からの借入DIは▲17.0で横ばいです。2つは質問の比較対象が異なるため単純には比べられませんが、規模が小さいほど資金繰りと借入を厳しく感じている様子はうかがえます。

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借り手が今やっておくこと

ここからは、税理士・公認会計士として、また融資を受けて事業を続けてきた立場からの考えです。

銀行全体の姿勢が積極的でも、融資は1社ごとの審査です。今回の調査で私が注目したのは、スタンスよりも利鞘と、小さな動きではありますが信用リスク評価です。銀行は「貸す」姿勢を保ちながら、誰にいくらの金利で貸すかを細かく見始めているのではないかと考えています。これは私の見立てですので、次回以降の調査で確かめていきます。

やること内容銀行に伝わること
金利の見積もりを分解する基準金利と上乗せ分に分けて確認し、前回の借入と比べる上乗せ分の交渉の土台になる
借入ごとの金利を一覧にする残高・金利・変動か固定か・見直し日を整理する金利上昇への備えがあること
直近の試算表を早く出す決算期の途中でも、月次の数字を出せる体制にする業績を自分で把握していること
資金繰り表を3か月先まで作る借入の必要額と時期を、余裕をもって示す急な申込みではないこと
資金使途を説明できるようにする設備投資か、運転資金か、手元資金の積み増しかを明確にする返済の原資が説明できること
取引金融機関を複数持つ規模や性格の違う金融機関とも取引を持つ条件を比較できる状態にあること

金利の交渉では、利益と返済力を数字で示せるかどうかが出発点になります(融資の金利交渉のしかた)。銀行が審査で見るポイントは銀行融資の審査で見られるポイント、資金繰り表の作り方は資金繰り表の作り方にまとめています。

不動産関連の資金需要DIが大きく持ち直している点も見ておきたい動きです。ただし、資金需要は銀行に持ち込まれる案件の増減を示すもので、審査が緩んだことを意味しません。建設・不動産の案件が増えれば、銀行が選ぶ側になる場面もありえます。

今後も注意して見ていきたいこと

  • 次回の貸出動向アンケート:中小企業向けのスタンスDIが0のまま推移するか、マイナスに入るか
  • 信用リスク評価・担保設定のDI:今回の▲1が続くか、一時的な動きか
  • 12月14日公表の短観:企業の資金繰りと金融機関の貸出態度
  • 12月の金融政策決定会合:追加利上げの有無と、基準金利の見直し
  • 信用金庫・第二地銀の貸出の伸び:地域の金融機関がどこまで貸出を伸ばせるか

まとめ

  • 中小企業向けの貸出運営スタンスDIは3で積極方向だが、大半は「ほぼ不変」で、今後3か月は0の見通し
  • 利鞘は拡大方向が続き、基準金利だけでなく上乗せ分にも注意が必要
  • 信用リスク評価と担保設定のDIに小さな変化が出た
  • 公庫の調査では、小企業ほど資金繰りと借入を厳しく感じている様子がうかがえる
  • 金利の分解、借入の一覧、試算表と資金繰り表の準備で、自社の数字を示せるようにしておく

金利の見積もりの確認や、銀行に出す資料の準備を一度見直したい方は、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

よくある質問

貸出運営スタンスDIが0になると、銀行は融資をしなくなるのですか?
いいえ。DIが0というのは、貸出姿勢を積極化する銀行と慎重化する銀行の割合が同じ、または大半が「ほぼ不変」という意味です。今回も中小企業向けの今後の見通しは、50先すべてが「ほぼ不変」と答えています。融資を止めるという意味ではなく、これ以上積極化する銀行は見込まれていない、と読むのが自然です。
利鞘の拡大は、借り手の金利にどう影響しますか?
利鞘は、銀行の資金調達コストに上乗せする分です。今回のアンケートでは、銀行は格付けの上位・中位・下位のいずれの先でも利鞘を拡大方向で設定しています。基準金利が上がる局面で上乗せ幅も広がる方向にあるため、金利の見積もりは基準金利だけでなく、上乗せ分も含めて確認しておくことをおすすめします。
銀行のアンケートでは積極的なのに、なぜ融資が厳しいと感じる会社があるのですか?
アンケートは主要な50の銀行・信用金庫の担当者の回答で、銀行全体の方針を示すものです。一方で融資は1社ごとの審査で決まります。日本政策金融公庫の調査でも、小企業は資金繰りDIや借入DIが大きなマイナスで、規模によって実感に差があります。全体の数字ではなく、自社の決算書と試算表がどう見られるかで判断してください。

※本記事は2026年11月1日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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