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中古住宅の価値を「手入れ」で評価する仕組みへ、国交省が検討|点検・修繕の履歴が保険やローンで有利に?不動産投資家と銀行の担保評価はどう変わるか

国土交通省が、住宅の定期点検や修繕といった「手入れ」の状況を中古住宅の市場で適切に評価する仕組みづくりを検討していると、日本経済新聞が2026年11月4日に報じました。手入れが行き届いた住宅は、火災保険やローンの契約で優遇を受けられるようにする案があるとされています。

日本では、木造住宅は築20年を過ぎると建物の価値がほとんどないものとして扱われることが多く、どれだけ丁寧に手入れをしても価格や担保評価に反映されにくいのが実情です。この記事では、報道と国交省の公表資料をもとに検討の中身を整理し、中古の住宅やアパートを持つ不動産投資家が今から考えておきたいことをまとめます。

この記事の結論
  • 国交省は2026年10月に「住宅の維持保全・流通に関する制度検討会」を立ち上げ、点検・修繕の状況が中古市場で評価される仕組みを議論している。とりまとめ案は2027年3月10日の第3回で示す予定
  • 報道では、火災保険料の割引、住宅瑕疵保険の検査の一部省略、残価設定型ローンやリバースモーゲージでの活用などが案に挙がっている
  • 今の中古住宅の評価や銀行の担保評価は、築年数と法定耐用年数で決まる面が強い。制度ができても、金融機関の評価がすぐ変わるとは限らない
  • 制度の行方にかかわらず、修繕の見積書・請求書・写真・点検記録を物件ごとに残しておくことは、税務・売却・融資のどれにも役に立つ

報道と国交省の資料で示された内容

項目内容
検討の場国交省の「住宅の維持保全・流通に関する制度検討会」。第1回は2026年10月8日
日程第2回は12月7日(関係団体のプレゼン、論点の提示)、第3回は2027年3月10日(とりまとめ案)
下部の会議維持保全評価・既存評価、住宅履歴情報、瑕疵担保履行制度・消費者保護の3つのワーキンググループ。履歴情報のWGは10月28日に初会合
検討事項住宅の品質・性能の維持保全の状況が市場で適切に評価される仕組み、それを継続的に評価する仕組み、情報を保存・活用する仕組み など
報道された案点検・修繕の履歴を残し、取引の際に買い手・不動産事業者・金融機関が確認。火災保険料の割引、住宅瑕疵保険の検査の一部省略、残価設定型ローンやリバースモーゲージでの活用を検討
背景新築価格の上昇。報道によると三大都市圏の新築分譲戸建ての平均購入価格は2025年度に5,099万円で、2016年度より約3割上昇

出典:日本経済新聞「中古住宅の価値は『手入れ』次第 国交省、流通促進へ評価制度を検討」(2026年11月4日)、国土交通省「第1回 住宅の維持保全・流通に関する制度検討会」の開催について(2026年10月2日)、国土交通省「住宅履歴情報の蓄積・活用に関する検討ワーキンググループ」(第1回)の開催について(2026年10月26日)。

検討会の規約では、長期優良住宅法などを改正した法律の施行から5年がたつのを見据え、住宅の適切な維持保全と流通の好循環を図るための方策を検討する、と目的が書かれています。委員には住宅ローン会社の経営者や不動産情報サイトの編集長も入っており、金融や取引の現場を意識した議論になるとみられます。

なぜ「手入れ」が価格に反映されにくいのか

中古住宅の価格が手入れの状況を反映しにくい理由は、大きく2つあります。

1つ目は、建物の価値を築年数で一律に下げていく見方が、市場にも金融機関にも根づいていることです。報道でも、国交省の推計として、住宅への投資額の累計が約1,596兆円なのに対し、住宅の資産額は約527兆円にとどまると紹介されています。建てたあとに価値が積み上がらず、減っていく一方になっているということです。

2つ目は、手入れの記録が残っていないことです。設計図や点検・修繕の記録が、引っ越しや相続の際に失われてしまうことは珍しくありません。記録がなければ、買い手も金融機関も「きちんと手入れされた家」かどうかを確かめようがなく、結局は築年数で判断することになります。今回の検討会が、評価の仕組みと並んで「情報を保存・活用する仕組み」を論点にしているのは、このためです。

これまでも、国交省は一定の基準を満たす中古住宅に標章をつける「安心R住宅」などの制度を設けてきましたが、広く普及しているとはいえません。今回の検討が、保険やローンといったお金の面での具体的な利点につながるかが、普及のかぎになりそうです。

税務・会計の「耐用年数」と、市場や銀行の評価は別物

ここからは、税理士・公認会計士として、また自らも複数の金融機関から融資を受けて不動産を取得してきた立場からの考えです。

不動産投資家にとって気になるのは、「手入れが評価される」ことが、税金や決算書、銀行の評価にどう関係するかでしょう。まず押さえておきたいのは、次の3つの「価値」は、それぞれ別のルールで決まるということです。

見方何で決まるか手入れの影響
税務(減価償却)法定耐用年数(木造の住宅用は22年)。中古は簡便法で残りの年数を見積もれる手入れの良し悪しでは変わらない。修繕費か資本的支出かの区分には影響する
会計(決算書の簿価)取得価額から減価償却を差し引いた額資本的支出として資産計上すれば簿価が増える
市場価格・銀行の担保評価立地・需要・利回りのほか、建物は築年数と耐用年数で評価されることが多い今は反映されにくい。今回の検討はここを変えようとするもの

税務上の耐用年数は、税金の計算のために一律に決められた年数です。建物が実際に何年使えるかとは関係がなく、今回の評価制度ができても、減価償却の計算が変わるわけではありません(中古建物の耐用年数の考え方は中古建物の耐用年数をめぐる事例で整理しています)。

一方、銀行の評価では、建物の残りの耐用年数が融資の期間や担保評価に直結することが多くあります(融資期間と耐用年数の関係、銀行の担保評価の計算方法)。築古の木造アパートで長い融資が組みにくいのは、このためです。もし「手入れの履歴」が金融機関の評価に取り入れられるようになれば、築年数は古くても状態の良い物件の融資条件や売却価格に影響する可能性があります。

ただし、報道の段階で示されているのは主に自宅向けの住宅ローンや保険の話で、事業用の不動産融資の評価方法がどう変わるかは分かりません。金融機関の担保評価は各行の基準によるため、制度ができても一斉に変わるとは考えにくいでしょう。期待しすぎず、動きを見ていくのが現実的です。

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不動産投資家が今からできること:手入れの記録を「資料」として残す

制度の中身が決まるのは早くても2027年春以降です。それでも、手入れの記録を残しておくことには、今の時点でもはっきりした利点があります。

残しておきたい資料税務での使い道売却・融資での使い道
修繕・工事の見積書、契約書、請求書修繕費か資本的支出かの判断と、税務調査での説明買い手や金融機関に、いつ何をしたかを示せる
工事前後の写真原状回復か、価値を高める工事かの説明状態の良さを具体的に示せる
定期点検・法定点検の記録点検費用の経費計上の根拠維持管理の確かさを示せる
設計図・確認済証・検査済証取得価額や建物の構造の確認融資の審査や買い手の確認でほぼ必ず求められる
長期修繕の計画将来の資金繰りの見通し金融機関への事業計画の説明に使える

とくに修繕費と資本的支出の区分は、税務調査でも問われやすいところです。工事の内容がわかる資料がなければ、どちらとも判断しにくく、結果として不利な扱いになることもあります(修繕費と資本的支出の判断事例)。

また、売却の場面では、「いつ外壁や屋根をやり直したか」「給排水管を交換したか」といった情報が、買い手の安心と価格交渉に直接かかわります。記録を物件ごとにフォルダで管理し、相続や売却の際にそのまま引き継げるようにしておくと、税務・売却・融資のどれにも役に立ちます。

決算書の上でも、手入れをきちんと続けている物件は、突発的な大きな修繕で利益が大きく落ちる年を避けやすくなります。銀行は利益の安定を重視するため、計画的な修繕と、その記録は、財務の見え方の面でも意味があります。

今後も注意して見ていきたいこと

  • 12月7日の第2回検討会:関係団体のプレゼンと論点の提示が予定されています。金融機関や保険会社がどこまで関わるかに注目しています
  • 評価の対象:自宅用の戸建て・マンションが中心になるのか、賃貸住宅も対象になるのか
  • 履歴情報の残し方:誰が、どこに、どの形式で記録を保存するのか。所有者が変わったときに引き継げる仕組みになるか
  • 金融機関の対応:住宅ローンだけでなく、事業用の不動産融資の担保評価にも取り入れられるか
  • 既存の制度との関係:安心R住宅や長期優良住宅の制度と、どう整理されるか

まとめ

  • 国交省は、住宅の点検・修繕の状況を中古市場で評価する仕組みを検討しており、2027年3月にとりまとめ案を示す予定
  • 報道では、火災保険料の割引やローンでの活用などが案に挙がっているが、具体的な内容はこれから
  • 税務上の減価償却は法定耐用年数で決まり、今回の制度で変わるものではない。変わる可能性があるのは、市場価格や金融機関の評価のほう
  • 制度の行方にかかわらず、修繕・点検の記録を物件ごとに残しておくことは、税務・売却・融資のすべてで役に立つ

物件の修繕の計画と記録の残し方、修繕費の扱い、金融機関への説明の仕方を一度整理したい方は、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

よくある質問

国交省の新しい評価制度は、もう始まっているのですか?
始まっていません。国土交通省は2026年10月8日に有識者の検討会を立ち上げ、2027年3月10日の第3回でとりまとめ案を示す予定です。報道では、点検・修繕の状況が良い住宅について火災保険料の割引やローンでの活用などが案として挙がっていますが、具体的な内容や時期はこれから決まります。
修繕の記録を残しておくと、税金が安くなりますか?
記録そのもので税金が変わるわけではありません。ただ、修繕費として経費にするか、資本的支出として資産に計上するかの判断や、税務調査での説明には、工事の内容・時期・金額がわかる見積書や請求書、写真が欠かせません。評価制度の行方にかかわらず、残しておく価値のある資料です。
銀行の担保評価も、手入れの状況で上がるようになりますか?
現時点では分かりません。報道や検討会の資料では、金融機関が住宅の維持の履歴を確認し、ローンなどで一定の優遇を設ける案が示されていますが、各金融機関の担保評価の方法が変わるかどうかは今後の議論次第です。今のところ、多くの金融機関は法定耐用年数や築年数を基準に建物を評価しています。

※本記事は2026年11月4日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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